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飲食店への無断予約キャンセルは違法?飲食店側は損害賠償請求も可能

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飲食店の予約でドタキャンや無断キャンセルが行われると、大きな損害が発生します。予約ツールで気軽に予約できるようになり、ドタキャンや無断キャンセルは従来よりも増加している状況です。この記事では、予約キャンセルの実態とともに、損害賠償の可否や対策などについて解説します。飲食店のドタキャンや無断キャンセルを防止するために、ぜひ参考にしてください。
 


 

◆飲食店の予約キャンセルについて

飲食店の予約キャンセルとは、どのようなものなのでしょうか。まずは概要について解説します。
 

◇飲食店の予約のキャンセルとは

飲食店の予約キャンセルには、さまざまなパターンがあります。事前に連絡が入る「事前キャンセル」、予約の直前にキャンセルされる「ドタキャン」、連絡がなく予約の日時になってもユーザーが現れない「無断キャンセル(ノーショー)」などです。事前キャンセルなら穴埋めも可能ですが、ドタキャンや無断キャンセルが発生すると、飲食店にとって大きな痛手になります。なお、予約の種類は、席とともに料理やコースを予約する「コース予約」と、席のみ予約する「席のみ予約」があります。
 

◇無断キャンセルの状況

2018年に経済産業省が発表したレポートによると、無断キャンセルによる年間の損害額は約2,000億円です。無断キャンセルにより大きな損害が発生していると分かります。無断キャンセルが発生した場合、飲食店はさまざまな損害を被ります。具体的な例をあげると、以下のとおりです。
 
・食材の仕入れにかかった費用
・食材の仕込みにかかった光熱費や人件費
・予約に対応するために出勤した従業員の人件費
・食材を廃棄する費用
・発生する見込みのあった売上
・他の顧客の来店機会の損失
 
予約が入ると飲食店は事前に準備をしますが、無断キャンセルが発生するとそれらのすべてが無駄になります。
 
※参照:無断キャンセルが引き起こす負のスパイラル | 経済産業省 METI Journal ONLINE
 

◆飲食店の予約キャンセルはなぜ発生するのか

飲食店の予約キャンセルが発生する理由としては、予約ツールの普及があげられます。従来は電話予約や来店予約が主流でしたが、予約ツールにより簡単に予約がとれるようになりました。ユーザーが安易に予約した結果、キャンセルに至るケースが増えています。以下では、なぜ予約がキャンセルに至るのか解説します。
 

◇ユーザーが予約を忘れた

簡単に予約できる分、ユーザーが予約したにもかかわらず忘れてしまうケースも増えています。予約したことを覚えていないため、キャンセルの連絡もできず無断キャンセルになるパターンです。ユーザーに悪気がないとしても、結果として無断キャンセルが発生すれば、大きな損害をもたらします。
 

◇とりあえずの予約

人気のある飲食店は予約がとりにくいため、早めに予約する人も多いでしょう。そのため、本当に来店できるか分からないにもかかわらず、とりあえず予約を入れるユーザーも少なくありません。予約日に行けないと分かった場合、その時点でキャンセルします。

また、予約ツールでは簡単に予約ができるため、とりあえず複数の飲食店に予約を入れて後からどこに行くか決めるユーザーも存在します。さらに、複数の幹事がおり、それぞれ別の飲食店をとりあえず予約するケースもあるでしょう。
 

◇ユーザーの勘違い

ユーザーの勘違いにより、キャンセルになってしまうケースもあります。たとえば、仮予約をしたつもりで本予約をしてしまうユーザーもいます。また、予約をキャンセルしたと思い込み、実際にはキャンセルできていないケースもあるでしょう。いずれにせよ、予約についてユーザーが勘違いしていると、無断キャンセルが発生する恐れがあります。
 

◆飲食店の予約キャンセルによる損害

予約のキャンセルは飲食店にとって損害になるため、できるだけ避けたいことです。具体的にどのような損害が発生するのか解説します。
 

◇空席が生じる

飲食店に予約が入ると、人数分の席をキープしておく必要があります。しかし、キャンセルになれば、キープしておいた席が空席になるでしょう。席をキープするために他の顧客の来店を断っていた場合、来店の機会を失ったことになります。キャンセルで空席ができると、予約により発生するはずだった売上も得られなくなります。
 

◇食材が無駄になる

予約のためにあらかじめ食材を用意していた場合、ドタキャンや無断キャンセルが発生すると食材が無駄になります。食材を用意するためにかかった費用が無駄になるだけでなく、SDGsの観点からも望ましくない状況に陥ります。また、コースの予約がキャンセルされれば、仕込みに費やした時間や労力も無駄になるでしょう。人件費が無駄になると、飲食店が被るダメージはさらに大きくなります。
 

◇モチベーション低下

予約キャンセルが発生した場合、従業員が努力して取り組んだ準備がすべて無駄になります。何度もキャンセルが発生している状況では、従業員の仕事に対するモチベーションが著しく低下する恐れがあります。料理や接客の質が下がる原因にもなるため、特に注意が必要です。
 

◇イメージダウン

せっかく確保した席が空席になった場合、入店を断られた顧客から良い印象はもたれないでしょう。確保した席が空席になる状況が続くと、キャンセルが多い店だというイメージがつく恐れがあります。SNSや口コミサイトなどでネガティブな書き込みが増えるリスクもあります。悪いイメージの回復は簡単ではないため、早めの対策が必要です。
 

◆無断キャンセルは債務不履行

無断キャンセルは債務不履行にあたります。債務不履行は民法第415条で定められており、債務者が契約を履行しなかった場合に債権者が損害賠償を請求できるとされています。飲食店の予約における債権者は飲食店、債務者はユーザーです。実際には損害賠償が行われないケースも多いですが、悪質な無断キャンセルについては損害賠償の請求が妥当である可能性があります。
 
また、複数の飲食店に団体予約をして無断キャンセルしたユーザーが逮捕された事例もあります。無断キャンセルは刑事事件に発展する可能性もある行為です。損害賠償に応じないユーザーがいる場合は、警察への相談も検討しましょう。
 

◆飲食店の無断キャンセルを防ぐ方法

飲食店の無断キャンセルを防ぐには、どうすればよいのでしょうか。お店側の対策について解説します。
 

◇キャンセルポリシーの確立

飲食店の無断キャンセルを防ぐためには、キャンセルポリシーを確立しましょう。キャンセルポリシーとは、予約のキャンセルに関するルールをとりまとめたものです。キャンセルポリシーがある飲食店に予約を入れたユーザーは、キャンセルポリシーに基づいてキャンセルする必要があります。
 
キャンセルポリシーの設定において重要なポイントは、キャンセルできる期間を定めたうえで、期間後のキャンセルに対する処置を明確に示すことです。曖昧な表現を避け、具体的な処置が分かるようにしましょう。
 

◇キャンセルポリシーをユーザーへ周知

キャンセルポリシーを定めたら、ユーザーに伝える必要があります。ユーザーがキャンセルポリシーの内容を理解したうえで予約できるようにしましょう。電話で予約を受け付ける際は、キャンセルポリシーの概要を説明して同意を得なければなりません。また、予約ツールを導入している場合は、ユーザーがキャンセルポリシーを読まないと予約できない仕組みにすることがおすすめです。キャンセルポリシーでは、キャンセルされても損害が発生しない時期までをキャンセル可能な期間として定めましょう。
 

◇キャンセルが発生しないように工夫する

そもそもキャンセルを発生させずに済むような工夫を取り入れることも大切です。たとえば、料金の一部を前払いする制度を導入すれば、無断キャンセルするユーザーは少なくなります。予約の時点で連絡先を含む幹事の個人情報を得て、問題が発生したときは着実に連絡がつくようにする方法もあります。また、予約をキャンセルできる期間が過ぎる前にリマインドしてもよいでしょう。心理的に無断キャンセルしにくい状況を作れば、大きな損害を被るリスクを小さく抑えられます。
 
関連記事:新型コロナウィルス明けのために今飲食店がしておいた方がいい3つの対策
 

◆キャンセル料回収サービスの利用も検討

キャンセルによる損害を減らすには、キャンセル料回収サービスの利用もおすすめです。キャンセル料回収サービスには弁護士が関わっている場合が多く、無断キャンセルについて相談もできます。
 
また、グルメサイトからの予約が無断キャンセルされるケースが多いため、グルメサイトも無断キャンセルの損害の一部を補償している場合があります。さまざまな対策を活用し、キャンセルによる損害を減らしましょう。
 

◆まとめ

飲食店では、予約のキャンセルが大きな問題になっています。特に、ドタキャンや無断キャンセルが発生すると損害が大きくなるため、対策が必要です。キャンセルポリシーの策定やキャンセル料回収サービスの活用などにより、損害を最小限に抑えましょう。
 
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