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寒い季節と何が違う? 春〜夏の食中毒「カンピロバクター」に注意を

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これから夏にかけて気温が上がり、食中毒に注意が必要な季節が始まる。特に梅雨に入ると湿度も高くなるため細菌も繁殖しやすくなる。その他にも春から夏にかけて注意すべき食中毒もあるため、冬場の食中との違いと備えの方法をここで確認しておきたい。
 

食中毒は5月から急増

令和2年の食中毒の発生件数は下のように推移している。
 

*食中毒発生件数の推移(出所:「食中毒が多い季節は?」農林水産省)
 
また、上のグラフで食中毒の原因物質を見ると、1月〜3月はウイルスが多いのに対し、5月以降は細菌による食中毒発生件数が多くなっていることがわかる。その中でも特に注意したいのが「カンピロバクター」である。
 

新鮮な肉ほど多いカンピロバクター

カンピロバクターは、牛や豚、鶏などの腸の中に存在する細菌で、飲食店では調理器具などを介して菌が肉に付着することがある。この肉を生や加熱不十分で食べた場合に食中毒を発症する。中でも鶏に多い。
 

*カンピロバクターの顕微鏡写真(出所:「食中毒菌の電子顕微鏡写真」内閣府)
 
食品安全委員会が鶏肉について調査した結果は以下のようになっている(2009年)*1。
 
・鶏肉を生食する人の場合、飲食店では5.36%が感染している
・鶏肉を生食しない人の場合、飲食店では0.07%が感染している
 
しっかりと火を通すことの重要性が分かる。なお、動物は病気にはなることがない細菌であるため、健康な牛や豚、鶏の腸にも付着している点には注意したい。また、カンピロバクターは新鮮な肉ほど多く存在している。カンピロバクターは肉だけでなく、不十分な殺菌による井戸水、湧水及び簡易水道水といった水からの感染事例が発生しているほか、ハエやダニからも検出されている*2。
 
*1 食品安全委員会 食品安全総合情報システム
*2 「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル」内閣府 p2
 

カンピロバクター食中毒の症状

カンピロバクターで起きる食中毒の症状は他の細菌と似ており、以下のようなものがある。
 
・下痢
・腹痛
・発熱
・吐き気、嘔吐
・頭痛
・悪寒、倦怠感
 
従業員にこのような症状が現れた場合は病院で受診するなどの対応を取りたい。カンピロバクター食中毒の多くは1週間ほどで治るが、潜伏期間がやや長く、1日〜7日あるという点に注意したい。
 

カンピロバクター食中毒の予防法

ここでカンピロバクターの予防法を確認したい。以下のようなものがある。
 
・十分に加熱する(中心部が75℃以上で1分以上)
・生肉を調理した後は、手指や調理器具を十分に洗う
・保存時や調理時に、肉と他の食材の接触を防ぐ(二次汚染の防止)
・調理器具や食器は熱湯で消毒し、よく乾燥させる。
 

早期発見のポイント

もちろん、目に見える細菌ではないので早期発見は簡単ではないが、先ほど挙げたような食中毒疑いがある症状が従業員に出たときは、まずは本人に鶏肉の調理をしたかどうかを確認することが重要になる。
 
また、カンピロバクターに感染すると数週間後に、手足や顔面神経が麻痺したり、呼吸困難になったりする「ギラン・バレー症候群」を発症する場合もあるので、手足のしびれがないかを確認する必要もある。
 

その他の細菌にも注意を

カンピロバクターに限らず、食中毒を起こす細菌は暑い季節を好み、30℃〜40℃で最も繁殖しやすくなる。
 
さらに、加熱しても死滅しない細菌も存在する。ウェルシュ菌やセレウス菌は100℃で加熱しても死滅せず、50℃以下になると増殖しやすくなるため、温め直す料理だからと言って室温で放置することは危険である。ウェルシュ菌は煮込み料理、セレウス菌はパスタなど米・小麦料理で特に注意が必要だ。
 
また、リステリア菌は冷蔵庫に入れても増殖するという特徴を持っており、特に加熱殺菌していないナチュラルチーズや生ハムなどで注意が必要である。
 
このように多様な細菌が存在しているため冷蔵庫や加熱だけでは万全とは言えない。まずは細菌を店内に持ち込まないための手指消毒の徹底、そして周囲に付着させないよう調理器具の扱いに配慮すること、店内の消毒を怠らないこと、という基本が重要になる。
 

 

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