苦境においても売上を伸ばす飲食店の共通点~コロナ禍で飲食店が生き残るためにすべきこと~
新型コロナウイルスの影響に終わりが見えない。特に飲食店は時短営業や酒類提供などについて多くの制約が長期間続き、事業継続を断念する経営者も少なくない。また、従業員の労働時間やシフト調整に頭を抱える経営者も多いことだろう。
しかし、この苦境においても売上を伸ばし、新規に従業員を雇い入れる飲食店も多く存在している。なぜそのようなことが可能なのか。また、雇用調整助成金の利用にあたっては、大きな注意点があるという。
コロナ禍で飲食店が生き残るためにすべきことについて、社労士の浦辺里香氏に伺った。聞き手は、編集責任者の川瀬亮太氏(ルーテージ株式会社)。
従業員の時短やアルバイトのシフト変更は何が問題なのか
Q.コロナ禍で多くの飲食店が長期間に渡って売上を落としています。従業員に時短勤務をさせることやシフトのカットは致し方ないことなのでしょうか。
A.コロナ禍以降、飲食店では多くの労使トラブルが見受けられますが、考え方としては、休業させたりシフトをキャンセルしたりすること自体が悪いわけではありません。問題は給与や休業手当を支払わないことです。逆に、きちんと支払いができていれば「悪い」とは言えません。
また、従業員を辞めさせるような動きもありますが、解雇にあたる行為はよほどのことがないとできません。「整理解雇の4要件」というのが法で定められていますが、ハードルは高いものです。
Q.ただ経営側としては、人件費を支払う原資がなければ支払いようがないのが現実ですが、その場合はどうすれば良いのでしょうか。
A.解雇をするには「売上がない」というだけでなく、経営者がギリギリまで努力をしなければなりません。店内飲食だけで売上が出ないなら他の方法で原資を確保する、他の店で雇ってもらう道を模索する、そこまでの努力が必要です。
コロナ禍でも従業員を増やす飲食店はある
Q.浦辺さんの顧問先である飲食店は、どのような対応を取っていますか?
A.ありがたいことに、ユニークな経営努力で、むしろ従業員を新たに雇用したというところが多いんです。例えば都内のイタリアンレストラン、そこはパスタ専門店だったのですが、店舗が狭いので感染リスクしかないという理由でお店そのものを休業する判断をしました。しかし経営者には「お客様をこれ以上待たせたくない」という思いが強くて。
そこで数か月の休業ののち業態転換をして、アランチー二というライスコロッケのようなものをテイクアウトで売る、アランチー二専門店として再出発したんです。すると瞬く間に評判が広まって。「コロナ禍でこんなに?」と驚きの反面、経営判断が間違っていなかったことの自信になりましたし、従業員の増加にもつながりました。こういうことは可能なんです。
Q.僕自身も感じることがあるのですが、コロナ禍で飲食店経営者の本気の理念が試されるようになった気がします。
A.その通りです。このアランチー二専門店もそうですし、他の顧問先では、あるピザ屋さんが24時間営業の冷凍ピザ自販機を導入しています。20時以降の店舗営業ができなくて、お客さんからすればその店のピザを食べたいと思っても食べられない人が多くいましたから、自販機を設置してみたら売上は非常に大きなものになって。
自販機なら余計に人手は要らないのではないか?と思われるかもしれませんが、よくよく話を聞くと違うんだそうです。店舗で出すピザと冷凍用ピザは違うものなので、仕込みにこれまで以上に人手がかかるようになって、従業員を増やしているんです。
Q.どうやら、そういう業態転換での成功には「お客さんのために考えた」という共通点があるようですね。美味しいものを食べたいという声に応えるためという。それは自宅であっても構わないわけですよね。
A.そうですね。生き残るためのユニークな手段とも言えますが、それよりも「お客さんに美味しいものを提供し続けたい」「自分の好きな仕事をなんとしても続けたい」という一心から生まれたアイデアだという点は同じです。
雇用調整助成金の存在がアダになることも
Q.ところで雇用調整助成金ですが、僕たち飲食店経営者としてはやはり利用したいと考えます。上手な利用方法はありますか?
A.もちろん、上手に利用することは大切です。でも、ただ単に、助成金を使って従業員の給料を補い続ければ良いだろう、という考えでは経営としては今後ダメになると思います。
(後編)に続きます。 「雇用調整助成金は未来永劫続くものではない」
浦辺里香(うらべりか)
URABE社会保険労務士事務所代表(特定社会保険労務士)/ブラジリアン柔術紫帯/ライター
早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞社を経て社労士として開業。
■4コマ漫画的ブログ https://uraberica.com/
■Twitter https://twitter.com/uraberica
川瀬 亮太
RESTA編集責任者/ROOTage株式会社 代表取締役
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