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食を通じたノーマライゼーションの社会実現に貢献する活動に注目

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第五弾
ゼットンが取り組む「サスティナビリティ」 後編

 
「サスティナビリティ」に積極的に取り組んでいるゼットンでは、その動向を次々と発表している。
6月に入り、日本製紙の紙製ストローを導入し、日本製紙とともに顧客よりアンケートをとって仕様の向上と導入店舗を増やしていく意向。また、再生可能エネルギー由来電力を使用するために、日本発の風力発電専門企業であり風力発電の普及に向けた事業も行っているエコ・パワー株式会社の電力への切り替えを6月末に完了(紙製ストローともに一部店舗)。そして、7月1日の取締役会で、同社取締役企画開発室長の山田大輔氏がサスティナビリティ推進責任者を兼務する人事が決議した。

 

知的障がい者の就労体験を継続して実施する

/就労体験ゼットン後編3

さらに7月7日、東京・赤坂にある「アロハテーブル赤坂」において知的障がいのある子どもたちによって運営するカフェ「Aloha Table sharing ALOHA Spirit!」を1日限定で開催した。これは昨年10月に行った第1回に続く第2回の開催。本リポートの前編で同社の「サスティナブル取り組みテーマ」を紹介したが、これは「3.人権・労働に配慮した社会実現への貢献」を具体化しているものである。

これまでも認定NPO法人Ocean’s Love(本部/神奈川県茅ケ崎市、理事長/鈴木薫)が開催している知的障がい児などに向けたサーフィンスクールにおいて、2012年より法人サポーターとしてサーフィン体験の手伝いや当日の昼食の準備や運営(ロコモコ、BBQなど)などを担当している。「Aloha Table sharing ALOHA Spirit!」はこれらの活動の一環となっている。

同法人ではプロサーファーやプロボディ―ボーダーたちによって全国各地で知的障がい児などのためのサーフィンスクールを地域の人々と共に行っており、これらを通じて社会とのコミュニケーション、自然との触れ合い、感情あふれる健やかな成人になってほしいという願いを込めて活動を推進している。

今回就労体験を行ったのは13歳から19歳までの6人で、キッチン担当2人、ドリンク担当1人、ホール担当3人に分かれて行った。来店者は就労体験者の家族やゼットンからの呼びかけに応じた23組54人で、12時から14時までの営業時間にはほのぼのとした空気が満ちていた。

就労体験ゼットン後編1

この日提供されたメニューは、フードメニューが「プレミアムロコモコ」と「モチコチキンプレート」の2品とソフトドリンク4種類(フードとドリンクのセットで1200円)。就労体験者の体験内容は、「サービス担当」がお客様のご案内、「キッチン担当」がフードメニューの調理補助、「ドリンク担当」はドリンクの提供である。この日の売上の半分はOcean’s Loveに寄付する。

 

先進的な取り組みと人間性豊かな社風をアピール

ゼットンCSO山田大輔後氏

ゼットンのCSO(Chief Sustainability Officer:最高サスティナビリティ戦略責任者)山田大輔氏はこう語る。
「障がいを持った子供たちに小さなころからいろいろな経験をしてもらう機会はたくさんありますが、そのような中でも職業体験はハードルが高いものと感じています。また、フードサービス業はさまざまなスキルが必要とされます。しかしながら、われわれができるだけ間口を広げてこのような機会を増やすことはとても重要だと認識していて、また雇用創造につなげていきたい」

就労体験ゼットン後編2

このようにフードサービスの企業にとって、食を通じたノーマライゼーション(障がいを持つ人と持たない人が平等に生活する社会を実現させる考え方)の社会実現に貢献する活動は、まさに持続可能な経営に向けた企業の在り方として大いに注目される。「Aloha Table sharing ALOHA Spirit!」の第3回開催は、今年の10月に予定されている。

余談となるが、7月21日(日)フジテレビ『ザ・ノンフィクション』という番組で「社長と竜造」と題した実写ストーリーが放映された。それはゼットンの鈴木伸典社長より、事業部長の松山竜造氏が葛西臨海公園のプロジェクト責任者に抜擢され、それ以降の松山氏が奮闘して同プロジェクトのスタートを成功させるという内容だが、この二人は高校の先輩・後輩の間柄で、社会人になってから偶然に巡り合い、鈴木社長が松山氏をスカウトしたのだという。このような社運をかけた事業に青春ストーリーが重ねられて、先進的な取り組みを行っているゼットンという会社に存在する人間性豊かな社風を感じた。

このテレビ番組は、ゼットンの「サスティナビリティ」に関する広報戦略の一環であろうが、これによってはじめて同社の存在を知った人は好感を高く抱いたことであろう。

 

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

 

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