グローバルの視点では「45%」がフードダイバーシティ
フードダイバーシティの今 後編
グローバル化の取材の過程で自分の食の禁忌に気付く
さて、筆者は2014年から飲食業のインバウンド対策の取材を継続しているうちにフードダイバーシティ(食の多様化)という概念に巡り合った。これは、インバウンドが急増することに伴い、さまざま食に禁忌を持った人々が訪れ、日本人もそれに気付き、フードダイバーシティへの対応がとても重要になるということだ。
筆者も自分がグルテン不耐症であることに気付いて、昨年の6月から小麦由来の食品を摂取しないグルテンフリー実践者となった。グルテンとは小麦タンパクのことで、麺類やパンなど小麦加工品をつくる上で弾性や柔軟性を決定したり、膨張を助けたりする上で重要な要素となっている。
一方で、グルテンは食物アレルギーの原因となるもので、小腸の内表面への損傷を引き起こし、慢性的な体調不良となるセアリック病の原因とされている。
筆者は大腸に持病があり、2~3年に1度3週間ほど入院するということが習いとなっていた。医師も入院するほどの病状になる原因が分からないという。
そんな中で、昨年6月に「玄米レストラン」の取材をすることになった。同店は「玄米食」をアピールことからコメ農家を支援していくことがミッションであり、「玄米ペースト」を開発し、玄米のパンやパスタを提供している。
そこで筆者は同店の支配人からテニスプレーヤー、ノバク・ジョコビッチ氏の自著『生まれ変わる食事』という本を薦められた。
ジョコビッチ氏は2010年全豪オープンの試合中に突然倒れ、その体調不良の原因を調べていったところ、その原因はグルテンであったと確信し、以来グルテンフリー実践者となり、強靭な肉体を取り戻すことができた。
この本に書かれているジョコビッチ氏の症状が筆者のそれと全く同じであったことから、自分はグルテン不耐症であると確信し、グルテングルテンフリー実践者となった(とは言え、筆者の仕事は食なので、外食で必要な時には小麦製品を少量であるが食している)。このおかげで体調は改善した。
食に禁忌を持つ人は全人口の半分を占めている
冒頭で述べたとおり、筆者は昨年9月にヨコハマグランドインターコンチネンタルのベジタリアンの試食会を訪ねた。横浜のフードサービス関連施設では、今年9月以降に開催されるラグビーワールカップに向けてフードダイバーシティに取り組むところが増えてきている。
これらの食味は見事なものであった。本来の料理を動物由来の食材や調味料を使わずに無化調で調理しているわけだが、本来の料理に近づいていると共に食後感が爽やかだった。特に大豆製のハムは本来のハムのような食感と風味があって感動した。「ベジタリアン」という料理が存在するということを実感した。料理人が英知を結集すれば素晴らしい料理が出来上がる。
そして、同ホテルの総料理長、齋藤悦男氏の「グルーバル社会においてフードダイバーシティは45%」という話に落とし込まれていくのである。
さて、今回の話をまとめよう。喫煙率とフードダイバーシティの二つの話題は飲食店の日常の営業からかけ離れているかもしれない。このような大きな潮流に沿うことは大手外食企業の仕事とみなしていいかもしれない。
しかしながら、「喫煙率は減少している」「フードダイバーシティは顕在化していく」という流れの中で、中小の飲食業は自らのスタンスをしっかりと定めておくべきだ。特にフードダイバーシティに取り組まないということは、お客様の半分を取りこぼしていることを意味しているのだから。
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
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