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くら寿司が切り拓いた店内ロボット化の効果にみる外食の近未来

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第二十八弾
「スシロー」「くら寿司」 後編

 
「スシロー」「くら寿司」ともに進んでいるのは店内のロボット化である。「ロボット」の響きにはエンターテインメントを連想しがちだが、これらは結果的に揺るぎない顧客満足をもたらしている。
 
以下に歴史のあるくら寿司のロボット化の取組みを時系列で紹介する。
 

くら寿司が切り拓いた店内ロボット化の効果

水回収システム(1996年)
テーブルの皿回収ロボットにすし皿を投入すると、水流により皿が洗い場まで運ばれる。テーブル上でのお皿の積み上げをなくし、片付け作業の負担を軽減できる。
 

 
時間制限管理システム(1997年)
商品がレーンの上で空気に触れている時間を管理して規定時間を超えた時に廃棄する。
 
製造管理システム(1998年)
すしカバーに取り付けたQRコードなどによってレーン上にある商品が空気に触れている時間と個数などを管理。また、顧客の滞在時間によって変化する消費皿数(食べる量)を予測。係数化した「顧客係数」を厨房に表示し、レーンに流す皿数を最適化、廃棄ロスを軽減している。
 

 
タッチで注文(2002年)
各テーブルにタッチパネルを置いて、これをタッチしてオーダーする。
 
スマホで注文(2019年)
メニュー注文用タッチパネル(タッチで注文)を業界に先駆けて導入。さらに、2019年には、席にあるQRコードを読み込むことで、顧客が自分のスマホから注文可能とした。
 

 
抗菌寿司カバー(2011年)
従業員も顧客も、カバーに直接触れずに商品を出し入れできる、くら寿司独自開発のカバー。鮮度だけでなく、空気中に漂うウイルスや飛沫からすしを守る。これが前述の時間制限管理システム、製造管理システムによって商品のバラエティを保ち顧客満足度を高める。
 
自動受付・案内(2017年)
スマホアプリから「時間指定」で予約ができ、自動的に客席まで誘導するシステム。顧客の待ち時間の低減や、対従業員との非接触を実現。また、最新の店では、特集センサーが設置されていて、画面に触れることなく操作可能。
 

 
セルフチェック(2019年)
すしが流れるレーンの上部に小型カメラが設置されていて、どのテーブルで何枚の皿を取ったか、AI画像を分析して検知。自動でカウントするため、従業員を介することなく会計が確認できる。
 

 
セルフレジ(2020年)
「自動案内」や「セルフチェック」などのシステムを組み合わせ、入店から退店まで従業員を介することなくサービスの提供が可能となる。「非接触型サービス」が実現。自動受付と同様の特殊センサーを導入することで、タッチレス化も推進。
 
このように回転すしチェーンのロボット化は、これまで人間が行ってきたサービスを安定化させ、より正確なものにしてきた。ここで働く従業員は煩雑なことから解放されて、結果顧客満足を高めている。
 

ストレスフリーな外食が求められている

さて、FOOD & LIFE COMPANIESの2021年9月期上半期決算は以下のようになっている。
 
・売上収益: 実績1,190億42百万円/前年比+10.1%
・営業利益: 実績 131億14百万円/前年比+59.2%
・税引前利益:実績 124億14百万円/前年比+57.5%
・当期利益: 実績 77億60百万円/前年比+52.7%
 
次に、くら寿司の2021年10月期上半期決算は以下のようになっている。
 
・売上高:  実績745億85百万円/前年比+14%
・営業利益: 実績  3億04百万円/前年△4億9100万円
・経常利益: 実績 11億85百万円/前年△8600万円
・当期純利益:実績  6億69百万円/前年△9億5900万円
 
FOOD & LIFE COMPANIESは実に好調である。くら寿司も前年度の赤字計上から脱出した。
 
さらに、FOOD & LIFE COMPANIESでは前期に開発したTo Go型店舗を「JR我孫子駅店」「JR神戸駅店」「JR六甲道店」3店舗出店。いずれも改札口から徒歩1分以内の場所にあり、近隣のスシロー店舗でつくられた寿司を販売している。今期は積極的に出店していくという。このタイプは駅ナカ・駅前ビルなどのスシロー既存店ではカバーしきれなかった立地に出店していくという。この7月には、東京駅八重洲口にTo Go型店舗の機能を持った回転すしのスシローをオープンする予定。
 
外食産業各社の月次報告を見ていると、現在優勢にある業態はファストフード、大型焼肉店、回転すしチェーンである。一方劣勢にあるのがテーブルサービスの業態である。テーブルサービスとは、文字通りテーブルに座っている顧客に従業員が対応する業態のことである。これらが優勢にある業態と異なるポイントを挙げると、従業員が1人の顧客に接する回数が多いということだ。
 
極論じみた話になるが、大衆価格でファミリーが楽しむ「ファミリー外食」で顧客から求めてられていることは「便利」で「ストレスフリー」ということではないか。人間にとって煩雑な作業はすべてロボットに置き換える。そして郊外だけでなく、繁華街の中にテーマパークのような食卓空間……スシロー、くら寿司の動向を見ていくと、近未来の外食の常識が見えてくるようだ。
 

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
 

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