焼肉、ラーメンに逆風 飲食店倒産は過去最多が確実、補助金利用も検討を
飲食店の倒産がいまだ増え続けている。2023年1~8月では前の年の同じ時期に比べ8割以上増加した。これで、年間の飲食店倒産件数は過去最多となることが確実だ。特に注目されるのが焼肉店、ラーメン店の動向である。これらの倒産要因や、現時点で使える補助金などについて紹介したい。
2023年1~8月の飲食店倒産
東京商工リサーチによると、2023年1~8月の飲食店倒産(負債1000万円以上)は569件で、前の年の同じ時期に比べて82.3%増加、件数にして312件増えた。
(出所:東京商工リサーチ)
コロナ禍でブームを起こし、新規参入が相次いだ「宅配飲食」は前の年の同じ時期の約3倍に急増、「持ち帰り飲食」も約2.5倍に増えている。他には「専門料理店」(64→130件)と「食堂・レストラン」(70→140件)、「喫茶店」(28→42件)でも倒産件数が増加、この5業種はすでに去年の年間倒産件数を超えた。
なお、8月に東京商工リサーチが実施したアンケート調査によれば、売上がコロナ以前の水準に戻らない飲食業者は72.4%に達している。
コロナ禍「勝ち組」の焼肉店に大きな変化
飲食店の中でも、倒産の様子が注目されている業種のひとつが焼肉店である。帝国データバンクによれば、焼肉店の倒産は、ことし8月までに16件発生し、去年の同じ時期に比べて約3倍になっている。
(出所:帝国データバンク)
焼肉店はコロナ禍にあっても、「一人焼き肉」など新たな形態のヒット、テーブルごとに無煙ロースターが備えられた店内設備で「換気がいい=三密回避」のイメージが定着していた。ホットペッパーグルメの調査では、2020年8月に検索フリーワードで「焼肉」が約6年ぶりに1位を獲得するなど、コロナ禍の「勝ち組」とされていた。
それだけに異業種の参入などが相次ぎ、競争が激しくなっていた。そして安価な米国や豪州産などの輸入牛肉価格が高騰。人件費、燃料の上昇もあいまって、価格競争に耐え切れなくなり淘汰される中小焼肉店が増えているという*1。
ラーメン店の倒産は前年の3.5倍に
もうひとつ注目されているのがラーメン店の倒産件数の増加だ。
(出所:東京商工リサーチ)
東京商工リサーチによれば、2023年1~8月のラーメン店の倒産は、すでに去年の年間倒産数を上回っている。小規模・個人などが中心になっている。ラーメン店は元々競争の激しい業種ではあるが、物価高、人件費の高騰で収益悪化が続き、コロナ関連の補助金が終わった段階で閉店するところも多いと見られている*2。
引き続き利用できる補助金
雇用維持や事業再構築を目的とした、いまも使える各種補助をいくつか紹介する。
1)雇用調整助成金
従来からある雇用調整助成金は引き続き申請が可能。ただし、コロナ特例を利用したことのある事業者の場合、1年間経っていなければならないなどの条件があるため、問い合わせてみるのが良い。問い合わせ先は下記コールセンター。
雇用調整助成金、産業雇用安定助成金コールセンター
0120-603-999 (受付時間 9:00~21:00 土日・祝日含む)
2)事業再構築補助金
新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編といった取り組みに対して支援金を補助するというもの。第11回の公募が始まっており、申請は10月6日の18時まで。詳細はこちらから。
もしくは
ナビダイヤル:0570-012-088
IP電話専用:03-4216-4080
(受付時間 9:00〜18:00 土・日・祝日は除く)
3)飲食事業者向け経営基盤強化支援(東京都)
東京都中小企業新興公社の事業で、コンサルタントなどの専門家派遣実施コースと厨房機器等改修コースがある。詳細はこちらから。
4)外食産業事業成長支援助成金
農林水産省の制度。2021年度から22年度の売上の伸びが115%以下であり、かつ今後の売上や収益拡大につながる計画(業態転換や販路拡大など)を持っている中小・中堅規模の飲食店を対象としている。第2次の公募は7月末で終了しているが、継続の可能性があるのでチェックしておきたい。問い合わせ先は以下。
株式会社日本能率協会コンサルティングR4補正 外食産業事業成長支援補助金事務局
電話(ナビダイヤル):0570-067766 (受付時間:平日 09時00分~17時00分)
Email:info@jmac-r4h-eat.jp
今後の見通しは?
さて今後の動向としては、インバウンド需要は戻りつつあるものの、中国の景気の動向には注意したい。中国では恒大集団や碧桂園といった不動産大手の経営悪化など経済の悪化が鮮明化している。こうした動きを見据えながら、業態転換や補助金利用の検討を進めていきたい。
*1 「全国企業倒産集計 2023年8月報」p13
*2 「ラーメン店“倒産”相次ぐ 過去最多の可能性…原因は」FNNオンライン
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