開業ノウハウ

居抜き物件での内装工事のポイントは?工事方法や注意点を解説

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飲食店開業を目指す際に、必ず考えなければならないのが内装工事です。良い居抜き物件が見つかったとしても、多少なりとも手を加えなければならない箇所が出てくる可能性があります。初めて飲食店開業を行う場合には、飲食店特有の内装工事について、最低限の知識を備えておく必要があります。ここでは飲食店の居抜き工事における、内装工事の基本的な知識や流れ、おおよその費用感や業者の選定について確認しながら、各ポイントを解説していきます。
 

飲食店舗の内装工事とは?

内装工事といえば何となくそれなりのイメージが湧きますが、店舗の場合は一般的な住宅やオフィスとはまた異なる知識が必要です。飲食店舗の内装工事について、基本的な知識をつかんでおきましょう。
 

物件によって異なる内装工事の内容

飲食店舗の内装工事には、大きく分けて「居抜き」と「スケルトン」物件の2つの種類があります。スケルトンは床材や壁紙、天井など、造作物や家具、機器が一切ない物件です。躯体だけ、つまり飾りのないハコの状態であるため、配管や水回りの設計においても、デザインの自由度が高いと言えます。その反面、ゼロから構築するので工事費は高額になるでしょう。
 
一方の居抜き物件は、以前の店の設備や什器・備品、家具、調度品などが残されたままの状態で賃借するため、施工箇所が少なく、スケルトンに比べ一般的に安価に仕上げることができます。
 
スケルトンと居抜きの違いについてはこちらをご覧ください。
▶飲食店開業にかかる費用とは? vol.2 スケルトンと居抜き物件比較
 

居抜き物件のメリットとは

居抜き物件は新規開店を考える事業者の間で人気がありますが、それはスケルトン物件にない多くのメリットがあるためです。先にもあったように、居抜き物件の場合には、前賃借人との交渉次第では、内装や造作物、家具や物品を引き継いだ上で(造作譲渡を受け)賃借するため、工事費用を抑えることができ、出店コストを割安にすることも可能です。
 
スケルトンは大がかりな工事が必須となるため、開店までにある程度の時間が必要です。場合によっては数カ月から半年にも工事が及ぶことも考えられます。これに対して状態の良い居抜き物件が見つけられれば、最低限の手を加えるだけで済ませられるため、開店までをスピーディーな工程で進められます。
 

居抜き物件の内装工事

ほぼ店舗の体裁が整っている居抜き物件であっても、まったく手を加えずに開店できるケースはごく稀です。特に飲食店の場合には、比較的きれいな物件でもやはり気になる箇所があるものです。居抜き物件の場合の内装工事としては、一般的に以下のような箇所の施工が考えられます。
 
▷看板(ファサード)
▷壁・天井
▷塗装
▷水回り
当然ながら、看板の差し替えが必要となります。出来るだけ以前の店舗のイメージを引きずらないよう、カラーや素材を変えることが望ましいと言えます。
 
壁や天井は飲食店の清潔感を感じさせる大切なポイントです。目立つシミなどがなくても、清掃だけでは落とせない汚れが染みついています。クロスや天井材の張替えなどによって、印象を格段にアップさせられます。同様に各所の塗装は、比較的お金をかけずに、改装効果を上げることが出来る工事内容です。この他、棚や仕切りなどのレイアウト変更によって、以前の店舗と大きく印象を変える事も可能です。
 
スケルトンと居抜きの内装工事の違いについて、詳細を知りたい方はぜひこちらのページをご覧ください。
▶飲食店開業にかかる費用とは? vol.2 スケルトンと居抜き物件比較
 

居抜き物件の内装工事の種類

居抜き物件の内装工事の種類について、もう少し詳しく見ていきましょう。
 
壁紙・クロスの張替え
店舗規模にもよりますが、客席部分のクロスの張替えとなると壁面は相当な広さになります。イメージとは違ってもすぐに変更はできません。失敗のないように材質やカラーを選ぶことが重要です。飲食店の場合は、汚れやほこりが付着しづらく手入れがしやすいことも大切です。
 
店舗の雰囲気に合った実用性の高い材質を選択するのは当然ですが、油の多い業態の場合には壁紙だけで対応するのには限界があります。塗装などで防汚する方法もあるため、業者にしっかりと要望を伝え、最適な工事を行えるように検討していきましょう。
 
床の張替え
飲食店の床を考える際には、業態を配慮しなければなりません。火に強い、水に強い、凹凸がないなど、どのような店を開くのかによって押さえるべきポイントが変わってきます。材質によっては見た目がおしゃれでも、滑りやすいといった難点をもつものもあります。カーペット系はゴージャスですが、汚れが落ちにくく臭いがこもるといった点に留意しなければなりません。客層によっては、何よりも安全面を重視することが求められます。同じ材質の中でも、転倒の危険性がないかといった観点からも比較検討してみて下さい。
 
トイレ・洗面台の取替
居抜き物件ではトイレや洗面台などが設置されているケースが多いです。しかし、ことさら清潔さが気になる場所なだけに、新品に取替える事によって大幅な印象アップを図る事もできます。飲食店のトイレは、なるべく手の触れる箇所を少なくしたいところです。年々進化が大きなトイレ設備だけに、新型ほどさまざまな機能が付加されています。抗菌や防汚といった部分だけでも、旧型よりずっと進んでいます。日常的な手入れの面から考えても、取替工事を行う価値は十分にあると言えるでしょう。
 
照明設備の取替
お客様から見たとき、壁や天井と同じく目に入りやすいのが照明設備です。居抜きで引き継いだまま使用する手段もありますが、自分の作りたいお店のコンセプトに合わせて光源の追加や照明の調整を行う事で、以前のお店のイメージを払拭することも可能でしょう。
 
設備容量
見逃しがちですが、設備容量によっては追加工事が必要な場合もあります。以前のお店から大きく業態を変える場合、電気やガスなど容量を確認する必要があるでしょう。安定した店舗運営のためにしっかりと手を打っておかなければなりません。実際の営業時を想定して、使用する厨房設備や調理器具の性能と消費電力や使用ガス容量などを確認しておくことが重要です。
 
内装工事の種類についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をチェックしてみることをおすすめします。
▶飲食店の内装工事にはどんな種類がある?手順と気をつけるべきポイント
 

居抜き店舗の内装工事の費用や単価は?

「可能な限り理想的な店舗にしたい!」と考えたときに、気になるのが工事にかかる費用です。内装工事はその店舗の状態や規模によってそれぞれ異なりますが、居抜き物件の内装工事の費用や単価を見ておきましょう。
 

坪数から捉える概算内装工事費用

ひと口に飲食店舗の内装工事といっても、業種や業態規模によってかなりの開きが見られます。例えば、とある居酒屋では800万円、ラーメン店では150万円といった例があります。看板だけ交換して営業開始するラーメン店と、看板だけでなく照明交換やカウンターを作ったり、トイレを新装したり、店舗の一部のレイアウト変更を行った居酒屋では当然、費用の開きがあるわけです。つまり、一般的に飲食店居抜き物件の内装工事は1坪あたり15万円~30万円が平均的と言われていますが、工事内容次第なので一概に坪単価を出すことはできないと思ってください。
 
また、気をつけるべきは厨房の位置を変えるような大規模な設備変更がある場合、給排水工事や防水工事などが追加され、スケルトン並みに高額化しますので「居抜きだから」と安易に考えていると、予算オーバーしてしまうでしょう。
 

それでもスケルトン物件よりもかなり安価?

居抜き物件のメリットでも触れましたが、スケルトン物件と比較すると内装工事費はかなり抑えられるといえます。スケルトン物件の場合、厨房機器を除いても、内装工事の坪単価は50~100万円程度で、10坪程度の小規模な店舗であっても、800~1000万円程度は見ておく必要があります。小さなお店ほど坪単価は高くなるでしょう。
 
ただし、居抜き物件の場合でも、家具など細部にこだわり過ぎるとあっという間に高額化してしまいます。内装工事の費用をできるだけ抑えていくポイントとしては、予算を明確に提示し、コストカットを業者にあらかじめ依頼しておくことです。居抜き物件では全ての理想は叶いません。妥協点を設け折衝することが大切です。
 
内装工事の費用についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をチェックすることをおすすめします。
▶飲食店の内装工事はいくらかかる?坪単価は?費用を安く抑える選択とは
 

飲食店舗の内装工事の全体的な流れ

飲食店舗の内装工事は、どのような流れで行われるのでしょうか。居抜き物件の場合は工事内容も工期も多岐にわたる為、ここではひとまず一般的なスケルトン物件における飲食店内装工事の例を見ていきましょう。
 
1.スケジュール策定
開店時期に合わせてスケジュールを策定していきます。一般的にはオープンの3~4カ月以上前に、インテリアデザイナーや内装工事会社に依頼する必要があります。全体に余裕をもたせてスケジュールを組んでいきましょう。
 
2.コンセプト決め
店舗のコンセプトを客観的に理解されるよう具体化しておきます。ここを明確にすることにより、依頼側の意図に沿った店舗づくりをしてくれる業者を選びやすくなります。
 
3.見積依頼
いきなりひとつの業者に絞るのは簡単ではなく、相場がわからなくなるリスクもあります。これと思う業者を2~3社に絞り、相見積もりを依頼するのが賢明です。
 
4.デザイン会社・施工会社選定
依頼する業者を選定します。デザインから施工まですべてを扱う会社、デザイン・施工のみ請け負う会社などがあります。デザイン会社に先に依頼し、施工会社を紹介してもらうという方法もあります。
 
5.依頼契約
依頼する会社と契約を交わします。
 
6.工期
実際の内装工事が開始されます。小中規模の飲食店でしたら一般的な工期は1カ月程度です。週に一回程度は現場に足を運び、工事の様子を見ることが大切です。仕上がり後には修正が効きません。納得ができない箇所があれば、責任者に確認するようにしていきます。
 
7.引き渡し
工事の終了後に竣工検査が行われ、引き渡しとなります。
 

内装工事業者の探し方とポイント

店舗の内装工事が成功するかどうかは、良い内装工事業者を選択するという点にかかっています。どのようにして依頼先を決めていけば良いのでしょうか。
 

内装工事業者の種類

依頼先を選ぶためには、内装工事に関わる業者について理解しておく必要があります。内装工事を手がける業者には、以下のような種類があります。
▷デザイン設計会社:インテリアデザイン事務所および設計事務所
▷施工会社:施工専門の内装工事会社、設計と施工をする内装工事会社
先にも出てきましたが、依頼者が選ぶのはデザイン設計をする会社と施工会社です。ひとつの会社がこの2つの工程を行っている場合もあります。
 

内装工事業者の探し方とポイント

過去に内装工事を依頼した経験がない場合には、一から工事業者を探していかなければなりません。どのように探していけば良いのか悩むところです。
 
まずは、周辺に内装工事を行った人がいないか尋ねてみるという方法があります。紹介者がいれば話もスムーズに進められ、何よりも実績や信頼についての安心感が得られます。
 
一方で、業者と相性が合わないと感じても断りづらかったり、ほかの業者に見積もりを依頼しづらくなったりするデメリットもあります。もっとも手軽なのは比較サイトを通じた複数社の相見積もりですが、よく調べずに実施すると絞り切れずに数多くの業者から契約の要望が殺到してしまいます。また、実績が乏しい業者が混在する可能性もあり、今ひとつ依頼先への信用に確信がもてないと感じることもありますので、飲食店の施工実績の提示をしてもらいましょう。ここで注意すべきは、住宅やオフィスの施工ではなく飲食店の実績があるかの確認です。住宅やオフィスの施工実績が豊富でも飲食店の経験がない場合は避けるべきでしょう。これは設計においても同様です。
 
飲食店は住宅やオフィスとは異なり、給排水や排気など特殊な工事が数多くあります。飲食店舗を扱った経験が豊富な事業者に任せることが、とても重要です。また、たとえ簡易な内装工事であっても、万が一に備え、「請負業者賠償責任保険」に加入済みの施工業者を選択するようにします。工事中に建物の配管や機材を破損し、業者に賠償責任が生じるということもあります。保険に加入していれば、多額の補償金問題で工期に支障をきたすといった事態を避けられます。最後に、瑕疵担保の責任の範囲や保証期間、アフターフォローの条項を十分にチェックし、契約に臨むようにしてください。
 
このように店舗の内装工事について、その基本と流れを知っておけば、開業スケジュールを立てやすくなります。その他開業ノウハウについて詳しく知りたい方は、こちらも併せて読んでみることをおすすめします。
 
川瀬 亮太 飲食店経営/プロデュース ROOTage(株)代表取締役
 

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