飲食店の開業は自己資金ゼロでも可能?開業資金の内訳や調達方法について解説
飲食店を開業しようと思った場合、開業資金をどうするかは重要なポイントです。開業するには、どの程度の資金が必要になるのか、自己資金ゼロでも可能なのか、気になっている人も多いでしょう。この記事では、飲食店の開業資金について悩んでいる人に向けて、開業資金の内訳や調達方法、開業資金を抑える方法などを解説します。ぜひ役立ててください。
目次
◆飲食店の開業資金とは
日本政策金融公庫の新規開業実態調査によると、2020年度の開業費用は平均で989万円です。平均は1,000万円近くですが、分布としては開業資金500万円未満が43.7%と、もっとも多くなっています。次いで500~1,000万円未満が27.3%となっており、約70%が1,000万円未満で開業していることがわかります。開業する際にかかる費用のうち、大きな割合を占めるのは「物件取得費用」と「店舗投資費用」の2つです。以下では、開業資金の内訳について詳しく解説します。
◇物件取得費用
物件取得費用とはその名のとおり、店舗となる物件の賃貸契約をする際にかかる費用のことです。物件取得費用は一般的に、家賃の13か月分が目安だとされています。たとえば、家賃が18万円の物件を店舗として借りるとします。「18万円×13か月」となるため、物件取得費用は234万円必要になります。
・物件取得費用の内訳
物件取得費用の内訳は以下のとおりです。
・保証金(敷金)
・礼金
・前家賃
・仲介手数料
・造作譲渡費
保証金(敷金)や礼金は、一般的な賃貸住宅の場合でも発生する項目で、大家に支払います。一般的には保証金が家賃の10か月分、礼金が家賃の1か月分が相場です。前家賃とは家賃の前払いのようなもので、「1か月分+契約月の日割り分」がかかります。仲介手数料は物件を紹介した不動産会社に支払うもので、家賃の1か月分が相場です。造作譲渡費とは、前の店舗の内装や設備を引き継いで使う「居抜き」の際に発生する費用です。前の借主に支払いますが、金額は設備や条件によって異なります。
◇店舗投資費用
店舗投資費用とは、飲食店としてオープンできる状態にするための費用です。たとえば、内装や外装を飲食店としてふさわしいデザインにしたり、キッチンなどの設備や食器類などを揃えたりするために必要となります。
・店舗投資費用の内訳
店舗投資費用の内訳は以下のとおりです。
・内装費:店舗内の壁や床、照明、水回りなど
・外装費:店舗の外壁や看板の取り付け費など
・厨房機器:シンクやガス台、冷蔵庫やオーブン、調理台など
・食器や家具:飲食物を提供するための皿やコップ、テーブルや椅子、食器棚など
・備品費:フライパンや鍋、洗剤などの消耗品
これらの費用がいくらかかるかは、一概にはいえません。店舗の広さやインテリア、内装などへのこだわりで必要な費用が大きく変わってくるため、相場を示しにくい費用です。ある程度の費用が知りたい場合は、複数社から見積もりを取り比較してみるとよいでしょう。
◇運転資金
運転資金とは、経営が安定するまでに必要となる経営資金のようなものです。飲食店を経営するには、さまざまな費用が発生します。家賃などの固定費、スタッフを雇うための人件費や電気・ガスなどの光熱費、材料費などの変動費が主な費用です。目安としては、店舗の賃貸料の10か月程度が必要だといわれています。
◇生活費
飲食店を経営する場合、すぐに軌道に乗るとは限りません。そのため、飲食店経営による収入がない状況でも、生活に困らないように生活費をある程度用意しておく必要があります。たとえば、住居の家賃や食費、光熱費や子どもの教育費など、生活にかかるお金は準備しておくべきでしょう。最低でも、半年分くらいは用意しておく必要があります。
◆開業資金の調達方法
開業資金を調達する方法はいくつかあります。ここでは、開業資金調達方法を4つ解説します。参考にしてください。
◇日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、政府系の金融機関で、創業する人や中小企業・小規模事業者などに対して融資を行っています。さまざまな創業支援制度があるため、自分の条件に合った支援制度をみつけやすくなっています。
・新創業融資制度
新創業融資制度は、新規開業もしくは開業後2年以内であれば利用できる支援制度です。無担保かつ無保証で3,000万円まで融資を受けられるため、保証人を頼める人がいないという場合でも利用しやすいでしょう。また、申し込みから融資までのスピードが速く、急いで開業したい人にも向いています。ただし、融資金額の10%以上の自己資金が必要です。
・その他の融資制度
上記の支援以外にも、「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」などの融資制度があります。「新規開業資金」は、新規開業もしくは開業後7年以内であれば利用できる支援制度です。「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、開業後7年以内の女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニアを対象にした融資制度となっています。
◇信用保証協会
信用保証協会とは、中小企業などを支援するための公的機関です。信用保証協会と地方自治体が連携することで、金融機関から融資を受けられる制度となっています。信用保証協会が保証人になってくれるため、「信用保証協会付きの融資」や「制度融資」と呼ばれるケースもあります。ただし、審査には時間がかかるため注意しましょう。
◇血縁者に借りる
金融機関や支援制度などの利用が難しい場合は、血縁者に借りる方法もあります。たとえば、親兄弟や親せきなどに、資産に余裕がある人がいる場合に検討してみましょう。血縁者の場合、返済期日や利息などに融通が利くケースが多いため、余裕のある返済が可能です。金銭トラブルに発展しないように、借用書や金銭貸借契約書を必ず交わしましょう。
◇補助金・助成金
国や地方自治体では、さまざまな補助金・助成金制度を設けています。補助金・助成金制度は飲食店向けのものも多く、地域活性化などを目的として自治体によっては大きな金額を補助してくれるケースもあります。補助金や助成金は返済する必要がなく、利用しやすいでしょう。ただし、開業後に支払われるため、開業資金には向きません。
◆自己資金ゼロでも飲食店の開業は可能?
自己資金がないけれど、飲食店を開業したいと思っている人もいるでしょう。しかし、自己資金ゼロでの開業は、一般的には難しいとされています。前述したように、飲食店経営には開業に必要な費用だけでなく、経営が安定するまでの運転資金、生活費なども必要です。融資を受ける際にも、自己資金が条件となるため、自己資金なしでの開業は難しいでしょう。
◇融資の申請における自己資金とは
融資の申請条件となる自己資金とは何なのでしょうか。単純に、「手元にある自分のお金=自己資金」ではありません。自己資金は、出所が明確であること、他社への返済義務がないことが絶対条件です。そのため、人から借りたお金や、「タンス預金」のように出所がわからないお金は認められません。以下では、自己資金として認められる例を紹介します。
・自分自身の預貯金
自分自身の預貯金は、通帳の原本を見ればどのような経緯で貯蓄されたのかが把握できるため、自己資金として認められます。また、預貯金の場合、計画性がある、コツコツと貯めた資金として評価されるなど、審査時にプラスに働く可能性もあります。
・親や親族からの贈与金
返済義務のないお金であれば、親兄弟や親族からのお金でも自己資金として認められる可能性があります。このような場合は、借入ではなく贈与であると証明できるように贈与契約書を交わす、お金の流れが把握できるように口座から口座に直接振り込むことが重要です。
・資産の売却金
資産を売却したお金も、自己資金として認められます。たとえば、有価証券や車、土地や建物などの不動産などを売却して得たお金です。なお、売却金が確定していることが条件となるため、売却見積もりや家を売りに出しているという段階では認められません。
・退職金
退職金の場合、一度に大きな金額が振り込まれます。その場合、自己資金として認められない可能性もあるため、退職金の源泉徴収票を用意しておくとよいでしょう。支払い前の場合は、支払金額や支払期日を証明する書類を提出します。
◆開業費用をできるだけ抑える方法
前述したように、飲食店を開業するにはさまざまな費用が必要になります。物件の賃貸費用、内装や外装、厨房などの設備やインテリアなどの開業にかかる費用だけでなく、当面の運転資金や生活費なども必要です。そのため、できるだけ開業費用を抑えたいという人も多いでしょう。ここでは、開業費用を節約する方法を3つ解説します。
◇居抜き物件
居抜き物件とは、前に営業していた店舗の設備がそのまま残っている状態の物件です。前の店舗が飲食店だった場合には、ガス台やシンクなどの厨房機器、テーブルや椅子などをそのまま流用できるため、コストを抑えられます。また、間取りや内装などもそのままの状態で利用でき、内装費などの節約にもつながります。
◇中古の厨房機器を購入する
厨房機器は意外とコストのかかる部分です。中古の厨房機器であれば新品よりも安く購入できるため、コストを抑えたい場合には中古を探すとよいでしょう。飲食店向け販売サイトなどで、中古の厨房機器が探せるため、こまめにチェックしてみてください。
◇自分で内装を行う
自分で店舗の内装を行うこともコストを節約するよい方法です。内装業者に依頼した場合、材料費だけでなく作業費や人件費などの費用も支払わなければいけません。その点、自分自身で内装を行えば、人件費の節約につながります。また、自分のイメージどおりに仕上げられる、店舗への愛着がより湧きやすくなるなどのメリットもあります。
◆まとめ
飲食店の開業には、さまざまな費用がかかります。融資にも自己資金が必要となるため、自己資金ゼロでの開業は難しいでしょう。コストを抑えて開業するには、居抜き物件を探したり中古設備を利用したりするなど工夫することがポイントです。
レスタンダードは、運営会社が「居抜き物件掲載トップクラス居抜き市場(いちば)」を運営している店舗専門の不動産業者です。飲食店の出退店に関して熟知しており、開業ノウハウなどの情報も発信しているため、ぜひ参考にしてください。
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