もうすぐノロウイルスの季節 飲食店で食中毒や営業停止を避けるために必要な基礎知識
ノロウイルスによる食中毒が増える時期が近づいています。ノロウイルスによる食中毒は、統計的には11月~3月と言われますが、ことしは4月から8月にかけての段階で、ノロウイルスによる集団食中毒が発生し、営業停止処分も続いています。ノロウイルスにはどのような特徴があり、飲食店としてはどう防止するべきか、ノロウイルスについて知っておくべき基礎知識をわかりやすくまとめてご紹介していきます。
◆ノロウイルス食中毒の特徴
ノロウイルスによる食中毒を起こさないためにも、まずノロウイルスの特徴を見ていきましょう。ノロウイルスは、食中毒のなかでも年間患者数全体の4割以上を占めています。大規模な食中毒につながりやすいのも特徴です。
ノロウイルス食中毒の割合
(出所:「冬は特にご注意!ノロウイルスによる食中毒」厚生労働省)
そして発生時期の傾向です。
ノロウイルスによる食中毒の発生時期
(出所:「ノロウイルスに要注意!感染経路と予防方法は?」政府広報オンライン)
基本的には11月から3月にかけて急増しています。もうすぐ本格的なシーズンが始まります。しかし、冬に限らずノロウイルス食中毒が多発しています。
◆4月以降、ノロウイルス食中毒での営業停止処分が続出
今年4月以降、飲食店をきっかけにしたノロウイルス集団食中毒が全国で発生し、営業停止処分が相次ぎました。4月8日には仙台市の飲食店で食事をした55人が下痢や腹痛を訴え、うち11人からノロウイルスが検出されました。店は営業停止処分を受けました*1。4月29日には宮城県大崎市の飲食店で食事をした男女8人と調理担当者からノロウイルスが検出され営業停止処分を受けています*2。
他にも、ノロウイルスによる集団食中毒で営業停止処分を受けた事例は多くあります。
5月17日には静岡県浜松市の飲食店でパスタやピザを食べた男女12人、5月20日には札幌の飲食店、7月末には愛媛県松山の飲食店、8月16日には大分県由布市の旅館の飲食店での事案が公表されました。次いで8月27日には金沢市のホテルの飲食店と、その他にもノロウイルス食中毒にともなう営業禁止・停止処分を受けた飲食店が相次いでいます*3*4*5*6*7。
ここで挙げたのは一例にすぎず、北海道から九州まで、全国でノロウイルス食中毒が発生しています。そして、営業禁止・停止処分を受けると、場合によっては店舗名も公表されてしまいます。
◆ノロウイルスの感染経路と食中毒の症状
次に、ノロウイルスの感染経路と食中毒の症状をみていきましょう。
◇ノロウイルスの感染経路
ノロウイルス食中毒の原因といえば、牡蠣をはじめとした二枚貝のイメージが大きいかと思います。しかし日本食品衛生協会によれば、加熱不十分な二枚貝が原因であるのは全体の2割で、他は調理する人の手指から食品にウイルスが付着したという理由が約8割です*8。吐瀉物や下痢便がチリやホコリとなったものを吸い込んで感染する場合もあります。また過去には、浄水器を通した井戸水を飲用にしていた飲食店でノロウイルス食中毒も発生しています*9。ノロウイルスに汚染されていた井戸水が原因になった食中毒事例は他にも報告されています。
◇ノロウイルス食中毒の症状
ノロウイルスには平均1~2日の潜伏期間があり、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱といった食中毒の症状を引き起こします。
ノロウイルス食中毒の感染経路と症状
(出所:「冬は特にご注意!ノロウイルスによる食中毒」厚生労働省)
通常3日以内で回復しますが、発症後2~3週間は、排泄物中にウイルスを放出し続けるため、本人の症状が回復しても注意が必要です。また、感染しても無症状で済む人もいます。無症状のまま排泄物などでウイルスを放出することもあります。
◆飲食店でできるノロウイルス食中毒の予防
では最後に、ノロウイルス食中毒の予防方法をご紹介します。
・生食用以外の二枚貝は、しっかりと加熱する(中心部を85~90℃で90秒間以上)。
・吐瀉物やトイレ清掃の時は使い捨ての手袋、マスクをつけ、掃除後の手袋やマスクはビニール袋に入れ、密封して捨てる。トイレでは誰がどんな理由で嘔吐していてもおかしくありませんから、より注意が必要です。
・下痢や嘔吐など、体調不良の場合は調理をしない、させない。
・床などが吐瀉物などで汚れた場合、ウイルスを拡散しないように汚れを落とし、熱湯などで消毒する。
・二枚貝などに触れた手はしっかり石鹸で洗う、調理器具は熱湯などで消毒する。
◇ノロウイルス食中毒を防ぐための消毒方法
なお、ノロウイルスに対しては次亜塩素酸ナトリウムや塩素系の漂白剤での消毒が効果的です。酸素系のものではない点と、熱湯で薄めると効果が下がる点に注意してください。
ノロウイルスの消毒方法
(出所:「ノロウイルスの消毒方法」内閣府食品安全委員会)
ただ、調理器具だけでなく、多くの人が触るドアノブなどにも注意が必要です。もちろん、こまめな手洗いが基本中の基本であることに変わりはありません。ウイルスは目に見えるものではありません。日頃からできる限りの対策を徹底するのが唯一の予防方法です。
*1 「仙台・青葉区の飲食店で食事の55人が食中毒症状 11人からノロウイルス検出」khb ニュース
*2 「ノロウイルス 8人に食中毒の症状 飲食店を3日間の営業停止に<宮城・大崎市>」日テレNEWS
*3 「飲食店でパスタやピザを食べた12人がノロウイルスによる食中毒と診断される 浜松市中央区」静岡朝日テレビ/Yahoo!ニュース
*4 「札幌中央区の飲食店で32人が症状 ノロウイルスによる食中毒」NHKニュース
*5 「松山市の飲食店で食中毒 3日間の営業停止処分」NHKニュース
*6 「大分 由布 旅館の飲食店でノロウイルスによる食中毒 458人に」NHKニュース
*7 「金沢のホテル内飲食店で72人食中毒 患者からノロウイルス検出 衛生環境に問題か」産経新聞
*8 「ノロウイルス食中毒」日本食品衛生協会
*9 「飲用水からノロウイルスGI.6が検出された食中毒事例―福岡県」国立感染症研究所
- ニュース・特集最新記事はこちらから
「ニュース・特集」の関連記事
関連タグ
-
「まん延防止等重点措置」18都道府県でさらに延長、飲食店で高まる疑問の声
-
「まん延防止等重点措置」18都道府県でさらに延長、飲食店で高まる疑問の声
-
「グルメサイト」離れが加速 来店客はいま、どこで飲食店探しをしている?
-
「グルメサイト」離れが加速 来店客はいま、どこで飲食店探しをしている?