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従量電灯と低圧電力(動力)の違い、飲食店が知るべき電気の知識と居抜き物件の注意点

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飲食店を出店する際には電気、ガス、水道などのインフラが必要不可欠となります。出店する飲食店の業態や規模(店舗面積)にこれらのインフラが必要な容量を満たしているのかの確認をした上で物件の契約を進めていくことになります。その中でも特に電気については、低圧電力(動力)や従量電灯など聞いたことがない、あるいは聞いたことはあるけれども意味まではわからないといった言葉がでてきます。そこで、ここでは、飲食店出店の際に知っておくべき電気の知識について、理解を深めるために従量電灯、低圧電力(動力)、高圧電力のそれぞれの違い、電気に関する単位、電気契約の注意点、電気容量の変更、飲食店の居抜き物件における電気の注意点など網羅的に解説をしていきます。
 


 

◆電気に関する単位を理解する

まずは、本題に入る前に、電気の基礎知識である単位について説明をしていきます。これらを踏まえて後述する電気設備や電気契約などについて確認をしてください。
 

◇アンペア(A)

アンペア(A)とは、電流(電気の流れる量)のことをいい、1秒間に電気が流れる量を意味する数値です。このアンペア数が高いほど、多くの電気が流れる仕組みということになります。
 

◇ボルト(V)

ボルト(V)とは、電圧(電気を押し出す力)のことをいいます。ボルトの数値が大きいほど電圧が高く、多くの電気が使われているということになります。家庭用のボルトは、一般的に100ボルトであり、業務用などは200ボルト以上のボルトで作動します。
 

◇ワット(W)

ワット(W)とは、電気を使用して機器を動作させる際に電気が1秒間にする働きで、電力または消費電力といいます。光や力を出す消費エネルギー量の大きさを表します。ワットは、どれだけのボルト(V)で、どれだけのアンペア(A)を流せたかという仕事量を表します。この数値が高いほど電気を多く消費するということになります。
 

◇キロワット時(kWh)

キロワット時(kWh)とは、電気を使った量(電力量)のことをいい、電力に使用時間を掛けたものです。
 

◇アンペア(A)、ボルト(V)、ワット(W)の計算式

アンペア(A)、ボルト(V)、ワット(W)それぞれの算出方法は以下のとおりとなります。
・アンペア(A)=ワット(W)÷ボルト(V)
・ボルト(V)=ワット(W)÷アンペア(A)
・ワット(W)=アンペア(A)×ボルト(V)
 

◆電気に関してよく目にする機器および設備の役割

ここでは、電気に関してよく目にする機器および設備の役割などについて説明をしていきます。
 

◇ブレーカーの役割

ブレーカーの役割は、電気の流れを遮断する(ブレークする)ための装置です。ブレーカーという装置には、規定以上の電気が流れた際に電気を落とすという役割があります。この電気ブレーカーには、アンペアブレーカー、安全ブレーカー、漏電ブレーカーの3つの種類があります。それぞれの役割については以下のとおりとなります。
 

・アンペアブレーカー

アンペアブレーカーは、契約アンペア数を超えて電気量を使ってしまった際に電気の供給を遮断する役割をもつブレーカーです。ほかに電気ブレーカーやサービスブレーカーと呼ばれることがあります。アンペアブレーカーは、全体の電気を管理しているので遮断して(落ちて)しまうと停電となってしまいます。アンペアブレーカーがない場合は、スマートメーター(デジタルで計測できる電力メーター)に切り替わっていると考えられます。
 

・安全ブレーカー

全体を管理しているアンペアブレーカーに対して、安全ブレーカーは、回路ごとに電気を管理しているブレーカーになります。そのため複数のブレーカーが設置されています。安全ブレーカーは、子ブレーカーや分岐ブレーカーなどと呼ばれることがあります。アンペアブレーカー同様に電気が遮断されるのですが、落ちた回路のみが停電するという点でアンペアブレーカーと異なります。
 

・漏電ブレーカー

漏電ブレーカーは、建物内の配線や電気器具の漏電を素早く検知し、電気の流れを遮断するブレーカーで、火災などの電気事故を未然に防止する役割を担います。スイッチの周辺に「漏電ブレーカー」と記載されているものが多いので見分けやすいです。
 

◇分電盤とブレーカーの違い

各種ブレーカーを収めているのが分電盤です。配電盤から送られる電気をさらにコンセントや照明などに電気を分け与える役割を果たしています。分電盤はほぼすべての建物に設置されていて電気を分配する役割を担っています。
 

◇電気メーターの役割

電気メーターは、電力量計とも言われている電力を積算し計量する電気計器です。電力の売買取引上、重要な役割を担っています。透明の容器の中に、回転する円盤と電力量を表示する文字盤があります。
 

◆低圧電力と高圧電力の違い

電力の大きさの違いによって低圧電力と高圧電力に分けられます。電気設備に関する技術基準 (電圧の種類等)第二条によると、低圧電力および高圧電力のそれぞれの大きさは以下のとおりとなっています。
・低圧電力:直流は750ボルト以下で交流は600ボルト以下
・高圧電力:直流は750ボルト超~7000ボルト以下で交流は600ボルト超~7000ボルト以下
※直流は、乾電池などの電気で、交流は、コンセントなどの電気のことを言います。
 
低圧電力は、さらに動力機器を使用するかどうかによって、動力と従量電灯の2種類に分けられています。
 

◆従量電灯と低圧電力(動力)の違い

従量電灯は、一般的に従量電灯プランと呼ばれる電気プランのことを指します。一般的に従量電灯の供給電圧は100ボルトとなっていて、一般家庭用の電化製品を使用するのに適した電圧です。単相交流(2つの穴のコンセント)と呼ばれる方法にて電気が送られます。一方で、低圧電力(動力)は、一般的に低圧電力プランと呼ばれる電気プランのことを指します。低圧電力(動力)の供給電圧は200ボルトとなっており、天井埋込カセット形エアコン、業務用縦型冷蔵冷凍庫、スチームコンベクションオーブンなどの電気の使用量が大きい機器を使用するのに適した電圧です。こちらは三相交流(3つの穴もしくは4つの穴のコンセント)で効率的に電気が送られるのが特徴です。
 

◆高圧電力とは?

低圧電力か高圧電力かの違いを理解するためには電気の送られ方を理解する必要があります。電気は発電所で作り出されて、その後、27万5千ボルトから50万ボルトという超高電圧で送り出されます。そして、電線に流れる電圧は6000ボルトくらいになるのですが、その間、いくつもの変電所を経て降圧されます。高圧受電する場合、この6000ボルトという高圧で供給される電気を100ボルトや200ボルトに変圧して使える電気に加工しなければなりません。そこで必要なのがキュービクルという自前の受電設備になります。建物の屋上や敷地内に設置されている「変電設備」、「高圧受電盤」または「高電圧変電設備」と書かれた機器がキュービクルになります。このキュービクルは、設置費用だけでなく定期的な点検なども必要となるためランニングコストがかかります。(キュービクル保安点検は、電気主任技術者の資格を有している技術者が行い、技術者以外の者は触ることはできません)一方で、低圧受電の場合、キュービクルは必要なく、電柱の上の「柱上変圧器」(バケツのような形の機材で柱上トランスとも呼ばれています)で100ボルトまたは200ボルトに変圧されて建物に届くようになっています。
 

◆飲食店出店の際の電気契約の注意点

飲食店を出店するにあたって業態や規模(店舗面積)によって使用する電力量は異なりますので注意が必要です。店舗面積が広くなればなるほど電力量は大きくなる傾向があります。自身の飲食店で使用する電力量がみえてきたら、それぞれの電力会社が提供しているプランの中から最適なものを選択しましょう。
 

◇契約容量(契約アンペア)を確認

まず、現状の契約容量(契約アンペア)の確認をする必要があります。確認する方法としては、ブレーカーに明記されているアンペア数を確認することのほか、多くの電力会社においてブレーカーに設置されているアンペアブレーカーの色からアンペア数を把握できるようになっています。
・赤色・・・10A
・桃色・・・15A
・黄色・・・20A
・緑色・・・30A
・灰色・・・40A
・茶色・・・50A
・紫色・・・60A
ブレーカーからアンペア数を確認することができない場合は、毎月送付される「電気ご使用量のお知らせ(検針票)」に、契約アンペアが記載されていますのでそちらで確認をしてください。
 
あくまで参考程度ではあるのですが、各アンペア数とそれに対応可能な飲食店の業態の目安は以下のとおりとなります。
 

アンペア数 対応可能な飲食店の業態
30A(家庭用) 一般の家庭
40A(家庭用) バー、カフェ、喫茶店、寿司店などの軽飲食の業態
50A(飲食店向け) イタリアン、フレンチ、ビストロ、和食店などの業態
60A(飲食店向け) ラーメン店、中華料理店などの重飲食の業態

 
契約の大きさは10Aから60Aまでは従量電灯Bプランといい、60Aを超えるものは従量電灯Cプラン(6kVA以上から50kVA未満)となります。各アンペアによって料金は異なり、アンペアが大きくなればなるほど料金は高くなっていきます。
※kVA(キロボルトアンペア)は10Aに相当するため、従量電灯Cの10kVA契約の場合は、100Aに相当します。
 

◇飲食店と電力の自由化

電力が自由化されるまで日本国内における電気の供給は、各地域の大手電力会社が独占している状況でした。しかし、2000年から電気料金の引き下げなどを目的として、新しい事業者であっても電力小売業界に参入することができる電力の自由化が段階的に進められてきました。その後、2016年に入り電気小売りへの参入が解禁となって全面自由化となりました。この自由化により飲食店においても契約する電力会社を自由に選ぶことができるようになりました。飲食店は電気使用量が多いため、最適なプランを選択することでコスト削減できる可能性があります。
 

◆契約容量(契約アンペア)の変更について

アンペア(A)については前述したとおり、電気の流れる量になります。電力会社と契約しているアンペア数が大きければ大きいほど、使用できる電気の流れる量が増えることになります。反対に、アンペア数が小さすぎて一度に使用する電気の流れる量が契約アンペア数を超えてしまった場合、ブレーカーが落ちてしまいます。こうなってしまっては飲食店を営業することができません。そこで、必要な電気容量が確認できたら、それに合わせて契約容量(契約アンペア)の変更工事を依頼します。屋外配線やブレーカー周りについては、電力会社の管轄となるので電力会社に依頼することとなります。分電盤まわりをアンペア数に合わせて交換をするだけなので工事時間は1時間程度で済みます。工事費用については、分電盤のみの交換であれば基本的には無料ですが、設備によっては費用が発生することもあるので、事前に電力会社に確認をするようにしましょう。
 

◆飲食店の電気代を削減する具体例

電気代がかさむと飲食店を経営する上で負担となってしまいます。ここでは、電気代の負担を軽減する取り組みを紹介します。自身の飲食店にあった方法を選択して電気代削減に取り組んでください。
 

◇契約プランの変更

電気代を節約する手段として電気会社との契約プランを変更することも検討すべきです。また、近年では、電力の自由化によって各社様々なプランが用意され選択肢が増えています。自身の飲食店にあったプランを選択することによって電気代が削減できる可能性があります。
 

◇LED照明への変更

店舗で使われている照明を白熱電球からLED照明へと変更することも電気代削減に繋がります。導入時の初期費用は高いのですが、LED電球へ切り替えると約5ヶ月でコストが逆転すると言われています。さらに、白熱電球より長期間交換しなくてもよいので手間も削減することができます。
 

◇省電力タイプの機器への変更

いつ購入したかわからない厨房機器(特に居抜き物件においては多いかと思われます)などは、予算と相談しながら最新の機器に買い替えることも検討してよいかもしれません。業務用厨房機器メーカーの公表数値として、2005年発売の製品と2021年発売の製品と比較すると省エネ率が55%アップしている業務用冷凍冷蔵庫もあります。
 

◇定期的なエアコンフィルターの清掃、居抜き物件は要注意

エアコンは電気代のかかる機器の1つです。特にエアコンのフィルターがほこりなどにより目詰まりを起こしている場合、冷暖房の効きが悪くなってしまいます。この状態になるとより室内を冷やそう(温めよう)と機能して更に多くの電力を消費してしまいます。これを回避するためにも定期的にフィルターの清掃を行うようにしましょう。その他、特に注意すべきは居抜き物件です。居抜き物件の場合は、フィルター清掃をして引き渡されることが保証されているわけではありません。前テナントがまったく清掃をしていなかったことも考えられるため、動作確認をすることは当然のこと、開店前にフィルター清掃を行うようにしてください。これらは、空気清浄機についても当てはまります。同様にフィルター清掃を行いましょう。
 

◇無駄な電気を消す

明らかに使用していない電気は消すようにしましょう。トイレの照明に人感センサーのタイプを導入することも電気代削減に有効かと思われます。
 

◆飲食店の居抜き物件で出店する際の電気の注意点

昨今、飲食店出店の際に主流となっている居抜き物件についての注意点をここではまとめました。事前に確認をし、参考にしてください。
 

◇居抜き物件が必要な電気容量を満たしているか

居抜き物件であれば、これまで問題なく営業していたため、電気容量についても問題ないだろうと思いがちです。出店する飲食店の業態や規模(店舗面積)によっては、使用する電気の容量が足りない可能性もあります。物件を契約する前までに必ず必要な容量を満たしているのか、契約容量の変更が可能かどうかなどについて調査をするようにしてください。
 

◇居抜き物件に動力の引き込みがあるか

動力のない物件であった場合、動力の引き込み工事を行う必要があります。カフェや喫茶店、バーなどの軽飲食の居抜き物件などは動力を使用しないこともあります。居酒屋やイタリアンなどの一般的な飲食店の場合、天井埋込カセット形エアコン、業務用縦型冷蔵冷凍庫、スチームコンベクションオーブン、食器洗浄機を使用することが多いかと思います。この場合、動力が必要となります。まずは、事前に動力の必要な機器を使用するかどうかの確認をして、使用するのであれば居抜き物件の内見の際に物件に動力が引かれていることや居抜き物件の業態がどのような営業をしていたのかなどを確認する必要があります。そして、動力を引き込むとなった場合、電力会社が電柱から建物への引込口、引込口から電気メーター、電気メーターから分電盤までの3か所に引かれている幹線と言われている電気の管を物件に引き直す電気設備工事を行うため、内装工事期間が想定よりも長くなってしまいます。動力がない飲食店の居抜き物件には注意をしましょう。
 

◇老朽化した居抜き物件のリスク

居抜き物件は、いわゆる中古品です。各設備について耐用年数を超えているものもあります。
電気配線が経年劣化していることも考えられます。この場合、漏電や断線による火災発生のリスクが高くなっているといってよいかと思います。事前に電気設備等の調査・確認をしてリスクがある場合には修繕をするようにしましょう。
 

◆おわりに

ここまで電気に関する基本的な知識から飲食店を居抜き物件で出店する際の電気の注意点まで幅広く説明をしてきましたがいかがでしたでしょうか。自身の出店する飲食店の業態や規模(店舗面積)に適したプランを選択するためにも事前にどのくらいの電力を使用するのか把握することが大事なポイントとなります。店舗運営での電力のコストカットに繋がりますし、容量不足でこんなはずではなかったという失敗の回避にも繋がります。是非、参考にしてみてください。

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