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フードサービス・ジャーナリスト 千葉哲幸 連載第十六弾 アフター・コロナに活かす情報発信 前編

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この度の新型コロナウイルス禍の中で、飲食業の各社・各店ではテイクアウト・デリバリーに着手する事例が数多く見られた。さらにEC(通信販売)サイトを新たに立ち上げたところもあった。緊急事態宣言が解除された5月末からはイートインの通常営業に戻っているが、この間に行なったテイクアウト・デリバリー・ECは自社・自店にとって新しい販売チャネルとなり、それを継続することによって新しいマーケティングが顕在化したことであろう。
「天吉屋(てんきちや)」のテイクアウト商品の中で4月13日から販売された「天むす12個」1200円(税込)【「天吉屋(てんきちや)」のテイクアウト商品の中で4月13日から販売された「天むす12個」1200円(税込)】
 
その点、筆者はワンダーテーブルとエー・ピーカンパニーの動向に注目していた。この2社に共通していることは、コロナ禍の中でニュースリリース配信代行サービスの『PR TIMES』で矢継ぎ早に情報を発信していることだ。この2社の取組みはこれからの飲食業にとってどのような在り方を示しているのだろうか。
「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」にはファンが多く、テイクアウトの販売量が突出した【「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」にはファンが多く、テイクアウトの販売量が突出した】
 

来るべき緊急事態に備えて幹部メンバーが共有

そこでまず、ワンダーテーブルの『PR TIMES』で行った情報発信を紹介する。
同社は国内48店舗、海外76店舗を展開。緊急事態宣言が発出された4月7日の翌日、4月8日より国内全店舗のイートインを休業。8ブランド22店舗でテイクアウトとデリバリーを逐次行っていった。その内容はこうだ。

PR TIMES

  • 3月18日外食から元気を与えるインナーキャンペーン『Big Smile』実施、3月2日から
  • 3月18日「オービカ モッツァレラバー西新宿店」テイクアウト新メニュー「パニーノ」登場、4月1日から
  • 3月24日「オービカ モッツァレラバー」イタリア&日本、応援キャンペーン第1弾「お好きなビッツァ半額」、4月1日~4月30日
  • 3月25日「「YONAYONA BEER WORKS」全店(都内8店舗)でテイクアウト販売をスタート、3月25日から
  • 4月9日全国丼グランプリ6年連続金賞天丼専門店「天吉屋」でテイクアウト販売をスタート、4月9日から
  • 4月10日「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」でテイク販売をスタート、4月10日~
  • 4月13日「モーモーパラダイス新宿東口店」でテイクアウト販売をスタート。4月14日から
  • 4月14日「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」テイクアウト3日間で牛肉を200㎏使用
  • 4月15日「ユニオン スクエア トウキョウ」でデリバリー販売をスタート。4月15日から
  • 4月15日「テール・ド・トリュフ東京」で、テイクアウトとデリバリーの販売をスタート。4月15日から
  • 4月17日「バルバッコア」で、テイクアウト・デリバリー限定ファミリーセット販売。4月18日から
  • 4月17日「テイクアウト・デリバリーのまとめサイト」を開設
  • 4月22日「オービカ モッツァレラバー」酒販免許取得に伴い、限定ワインのテイクアウト販売スタート。4月21日から
  • 4月24日「よなよなビアワークス」酒販免許取得に伴い、ヤッホーブルーイング製クラフトビール全種のテイクアウト販売スタート。4月25日から
  • 4月27日「ワンダーテーブル」医療従事者応援企画:外食からエールを贈る『Big Smile for Medical Workers』実施。4月27日~9月30日
  • 4月28日「オービカ モッツァレラバー」イタリア&日本応援キャンペーン第2弾、テイクアウト商品20%オフ。5月1日から
  • 5月1日「オービカ モッツァレラバー」こどもの日企画 カロッツァ手作りセットをプレゼント。5月4日・5日
  • 5月25日「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」日本交通デリバリーサービス導入、6月1日から
  • 5月25日「オービカ モッツァレラバー」イタリア&日本 応援キャンペーン第3弾 お会計5000円以上でオーガニック オリーブオイルをプレゼント、6月1日~6月30日
  • 6月5日安心して食事ができる空間づくり、5つの感染拡大予防策
  • 6月6日日本で唯一の本場のシュラスコ料理専門店「バルバッコア虎ノ門ヒルズ店」オープン。6月11日
  • 6月8日「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」アメリカのローストビーフ、リブロース丸ごと1本(約7㎏)をテイクアウト販売実施中、7万円(税別)

 
4月18日より販売がスタートした「バルバッコア」のファミリーセット7000円(税込)【4月18日より販売がスタートした「バルバッコア」のファミリーセット7000円(税込)】
 
これらを行った背景について同社広報担当に伺った。
同社では、3月13日に代表の秋元巳智雄氏が社員に向けて「サバイバル宣言!」を発した。それは「新たな想像力で業務改革にチャレンジしていこう!」というものだった。この宣言が出る前に幹部メンバーにはそれを求める内容が共有化されていて、広報担当者としては、「テイクアウト・デリバリーのまとめサイト」(4月17日リリース)の構想を準備したという。それが4月8日に全店イートイン休止となりながら、わずか10日間でこのサイトが出来上がることができたのであろう。
 

ニュースリリースを各店舗のSNSがフォロー

さて、4月14日の「ロウリーズ2店舗で初日から3日間で牛肉200㎏を使用した」というニュースリリースはとてもインパクトがある。この発信の仕方は、プラスの要素を引き付けることになる。このようなニュースリリースの配信に合わせて、各店舗がSNSでお客を歓迎して奮戦している様子をアップしている。続けて広報担当者はこう語る。
 
「1年以上かけて、SNSとGoogleの各店ページを魅力的にする取り組みを行ってきました。グルメサイトに頼らずとも、発信できるお客さまがすでに各店についています。Facebook以外では、インスタグラム、一部店舗にはTwitterがあります。Googleもフル活用しています」
 
同社では、「緊急事態宣言」が解除されて通常営業に戻ってもテイクアウト・デリバリーを当面の間継続する意向だ。同社ではこれまで店舗数を減じながら収益を伸ばしてきた。それはスクラップアンドビルドでより生産性の高い業態にチェンジしていくという戦略である。
今回の取材の過程で代表の秋元氏からコメントをいただくことができた。
 
「テイクアウト・デリバリーの試みは『ノウハウをつくる』『ブランドの楽しみ方を増やす』という意味では大きい。少子高齢化が深まる未来に向けて、新しい飲食店のサービスになりつつあるからです」
「オービカ モッツァレラバー」はモッツァレラチーズの食材を切り口にイタリアンをアピールしている【「オービカ モッツァレラバー」はモッツァレラチーズの食材を切り口にイタリアンをアピールしている】
 
同社の情報戦略とダイナミックな商品開発には、チャレンジマインドの企業文化が感じられる。
 
(後編)に続きます。

 
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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