個人事業主の開業届の書き方|必要書類、提出するメリットや注意点も解説
個人事業主として新たな事業を始めるには、税務署へ開業届の提出が必要です。しかし、税務署への提出方法がよくわからず悩んでいるという人もいるでしょう。この記事では、個人事業主を目指す人に向けて、開業届の書き方や必要な書類、提出するメリットやデメリット、注意点などを解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
◆個人事業主の開業届とは
開業届の正式名称は「個人事業の開業届出・廃業届出書」です。これは、個人が事業を始めたことを税務署に知らせるための書類です。開業届を提出することにより、法的に事業主と認められ、納税の意思を示せます。
◇個人事業主が開業届を提出しないとどうなる?
開業届を提出しなくても罰則はありません。ただし、提出をしないと、青色申告特別控除といったさまざまなメリットが得られなくなります。事業を継続させて、自分のモチベーションを保つためにも、開業届を提出しましょう。開業届の提出するメリットについては、後述します。
※参考:飲食店の開業で必要な届出・手続きとは 開業届や保健所・消防署・警察署への各届出も解説| RESTA[レスタ]
◆個人事業主の開業届の書き方
開業届は、最寄りの税務署で入手をするか、国税庁のWebサイトからダウンロードすることが可能です。以下で開業届の項目ごとの書き方を解説します。
※参考:個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)|国税庁
◇「税務署名・提出日」の書き方
「税務署名・提出日」欄には、所轄の税務署名と、提出または書類を投函する日付を記入します。開業届は、開業してから1か月以内に提出しなければなりません。
※参考:「税務署の所在地などを知りたい方」|国税庁
◇「納税地/上記以外の住所地・事業所等」の書き方
「納税地/上記以外の住所地・事業所等」欄は、以下のいずれかを記入します。
・住所地:実際に住んでいる住民票上の住所
・居住地:一時的に住んでいる住民票上ではない住所
・事業所:事業を行っている住所
一般的には、事務所や店舗を構えて事業を開始する人も、納税地は住所地になります。
◇「氏名・生年月日・個人番号」の書き方
「氏名・生年月日・個人番号」欄には、氏名と生年月日、個人番号はマイナンバー(通知)カードに記載されている番号を記入します。
◇「職業・屋号」の書き方
職業欄には、客観的にわかりやすい名称を記入します。業種によっては、個人事業税の税率が異なるため、事前に確認が必要です。屋号があれば記入をしますが、記入は任意であるため、空欄でも問題ありません。
◇「届出の区分」の書き方
「届出の区分」欄は、「開業」を選択します。そのほかは空欄で構いません。新規事業でも、引き継いで行うケースでは、住所と氏名の記入が必要です。
◇「所得の種類」の書き方
「所得の種類」欄には、「事業(農業)所得」を選択することが一般的です。不動産投資は「不動産所得」を、山林の場合は、「山林所得」を選択しましょう。
◇「開業・廃業等日」の書き方
開業日欄は、開業した日付を記入します。開業日は自分で決められますが、書類の提出日から1か月以内の日付が妥当です。
◇「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」の選択
「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」欄では、開業届とあわせて提出する書類の有無を選択します。提出書類には、青色申告承認申請書や課税事業者選択届出書となどの書類がありますが、これらの書類については後述します。
◇「事業の概要」の書き方
「事業の概要」欄には、仕事の内容を具体的に記入します。たとえば、飲食店であれば「寿司店の経営」「イタリアンレストランの経営」、デザイナーであれば「企業のホームページのデザイン」「服飾のデザインと店舗経営」などと、明確に記載することが重要です。
◇「給与等の支払いの状況」の書き方
「給与等の支払いの状況」欄は、提出時に従業員を雇っている場合に記入が求められます。専従者は家族従業員、使用人は家族以外の従業員のことです。また、それぞれについて、源泉徴収の有無を選択する必要があります。「給与の定め方」欄には、日給、月給などの区分を記入しましょう。
◇「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」の選択
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出する場合に、「有」を選択します。従業員数によっては、源泉徴収税の納税を年2回にする申請が可能です。詳細については、後述します。
◇「給与支払を開始する年月日」の書き方
「給与支払を開始する年月日」欄には、従業員への給与支払いがある場合のみ記入します。支払いを開始する日または、すでに支払いが開始している場合は、開始日の記入が必要です。
◆個人事業主の開業届の提出に必要なもの
マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなど、本人確認書類が必要です。開業届を郵送する場合は、「本人確認書類(写)添付台紙」に本人確認書類の写しを添付します。マイナンバーカードがない人は、本人のマイナンバーを確認できる書類と、マイナンバーの持ち主であることを確認できる書類を提出します。
◆個人事業主の開業届の提出期限
開業届の提出期限は、事業開始日から1か月以内です。提出期限が土日祝日の場合は、翌平日が期限となります。開業届は提出しなくても罰則はありませんが、任意での提出が定められています。提出しなかったことを後々後悔しないよう、早急に対応しましょう。
◆個人事業主の開業届の提出方法とは
個人事業主の開業届は、納税地を所轄する税務署に提出します。ここでは、3つの提出方法を解説します。
◇e-Tax(国税電子申告・納税システム)
e-Taxを利用してオンラインで提出ができます。提出する際は、マイナンバーカード、ICカードリーダーライタ、もしくはスマートフォンが必要です。
※参考:e-Taxの利用可能時間|国税庁
◇郵送
郵送の場合は、以下の書類を揃えます。
・開業届
・開業届の控え
・マイナンバー確認書類
・本人確認書類
・受領印を押した控えの返信用封筒
これらを簡易書留で郵送しましょう。後日、税務署の受領印が押された控えが返送されます。
◇税務署へ持参
税務署窓口に持参する場合の受付時間は、基本的に平日の8:30~17:00です。時間外の提出は、税務署に設けられている時間外収受箱に投函が可能です。
◆個人事業主が開業届を提出するメリット
個人事業主が開業届を提出することは任意ですが、提出するメリットがいくつかあります。以下では、主な3つのメリットを解説します。
◇青色申告特別控除が受けられる
確定申告には「青色申告」と「白色申告」があります。開業届と青色申告承認申請書を提出することで、青色申告の利用が可能です。青色申告特別控除は、条件により控除額が最大で65万円、55万円、10万円と定められています。
◇銀行口座を屋号で開設できる
開業届に記入した屋号で、銀行口座の開設が可能です。仕事とプライベートを区別できることも、メリットの1つといえるでしょう。口座名義を屋号にすると、取引先からの信頼度が上がります。
◇小規模企業共済に加入できる
小規模企業共済とは、退職や廃業の際に給付金を受け取れる制度です。加入するためには、確定申告書の控えが必要ですが、開業届でも可能です。加入することで、掛金の全額所得控除ができます。
◆個人事業主が開業届を提出するデメリット
メリットがある一方でデメリットもあります。個人事業主が開業届を提出する2つのデメリットを解説します。
◇配偶者の扶養から外れる可能性がある
開業届を提出することで、社会保険の扶養から外れる可能性があります。個人事業主になると一定の収入を得られるため、配偶者の扶養には入れません。ただし、加入している健康保険組合によって要件が異なります。開業届を提出する前に確認しておきましょう。
◇失業給付の対象外になる可能性がある
失業給付は、失業してから次の仕事に就くまでの生活を支えるために設けられている制度です。失業手当の受給中に開業届を提出すると、就職の意思がないとみなされ、失業給付の対象外になるケースがあります。
◆個人事業主が開業届を提出する場合の注意点
開業届を提出する場合、いくつかの注意点があります。提出する前に確認しておくと、安心です。個人事業主として開業した証明となる開業届の控えは、受領印を押してもらって保管しておきましょう。屋号での口座開設や就業の証明、銀行からの融資を受ける際などに必要となります。
◆開業届以外の書類添付が必要なケース
個人事業主が開業届を提出する際には、開業届以外にもさまざまな書類が必要なケースがあります。提出が必要な書類について、解説します。
◇青色申告をする
確定申告を青色申告で行う場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。事業開始年から青色申告を行うためには、事業開始後の2か月以内に提出しなければなりません。提出期限は、青色申告を行う年の3月15日までと決められています。
◇家族などへの給与を経費にする
通常は、配偶者や家族などに支払う給与は、経費として認められません。しかし「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出した場合は、給与を経費にできます。青色申告者と生計を一緒にするといった、いくつかの条件があるため、注意が必要です。
◇消費税の課税事業者になる
個人事業主は、開業時から2年間は免税事業者となります。課税事業者になるには、「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。消費税の還付金を受けられることがあるため、開業時の設備投資が高額の人は、提出を検討しましょう。
◇源泉所得税を半年ごとに納付する
源泉徴収税は、原則として毎月10日までに納付します。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、7月と翌年1月にまとめて納付可能です。ただし、給与の支給人数が常時10人未満でなければ、適用されません。
◆まとめ
個人事業主が開業届を提出することで、屋号を持てる、青色申告ができるなど、さまざまなメリットがあります。開業届の書き方を確認し、最寄りの税務署へ提出しましょう。提出の際には、開業届や各種書類の控えを忘れずに管理しておくことが重要です。
開業に向けたスケジュールや開業届以外の提出物などについては、以下の記事も参考になるでしょう。
※参考:
飲食店を開業するためにすべきこと 必要な資格・届出や資金調達の方法なども解説| RESTA[レスタ]
飲食店開業までのスケジュール いつ何を準備すべきかをわかりやすく解説| RESTA[レスタ]
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