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「オートリザーブ」ついにトラブル続出 AIは飲食店の敵か?

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AIを利用した自動予約システム「オートリザーブ」が、ついにトラブルを続出させている。行きたいと思った店を見つけたら、ユーザーに代わってAIが店に電話をかけ予約してくれるというというサービスだが、ここには店舗の許可なく情報が掲載されている。よってオートリザーブの存在を知らない店舗からすれば、「頼んでもいない自動音声の電話がいきなり何度もかかってくる」という迷惑な存在だ。そして今、このシステムが迷惑を通り越して実際に店と来店客のあいだでトラブルを引き起こすようになってしまっている。
 

店の定休日に予約?

「オートリザーブという予約サイトは当店とは一切関係ありません。」
「オートリザーブ経由での来店予約を絶対にしないで下さい。」
 
X(旧Twitter)上には、多くの飲食店がオートリザーブを使わないよう客に向けた投稿をしている。
 
オートリザーブとは、ユーザーが店を条件検索すると飲食店が候補にあがり、その中から時間を指定するとユーザーに代わってAIが店舗に電話し、予約を取るというシステムだ。しかしサービスの開始以降、オートリザーブからの電話に困惑する飲食店が相次いでいた。オートリザーブは店舗情報をネット上から勝手に拾ってきて掲載している。飲食店からすれば登録した覚えはないのに、勝手に「予約できる店」として紹介されているわけだ。このシステムは飲食店を困惑させるだけでなく、ついにトラブルに発展しているようだ。
 
例えば、
・店側がオートリザーブからの電話を途中で切ったうえで着信拒否をしたのに、ネットで予約したとお客さんが来店した
・電話予約に対応していないのに勝手に予約をもぎ取り、その予約は店の留守番電話に一方的に入れっぱなしにされていた
・オートリザーブで予約したと、定休日にお客さんが来た
というものである。
 
さらには、自動音声の連絡すらこないまま予約完了させてしまい、しかし店側のリストの中には名前のないお客さんが「ネットで予約した」といって来店するというケースも紹介されている*1。ある飲食店は運営会社に掲載を削除するよう依頼したものの、1か月たっても返事はなかったという。
 
このようなことが続けば、もっと迷惑を被るのはお客さんである。記念日だった、など場合によっては怒り心頭に発する、となってもおかしくない。
 
店の信用を下げることにもなる。確かに、店に自動的に電話をかけてくれるというのは、外国人などからすれば便利なのかもしれない。しかし、このようなトラブルが発生していたのでは、逆に混乱するだけだ。
 
さらには「(オートリザーブは)業務妨害」。SNS上ではそのような声もある。実際、オートリザーブは出るまで電話をかけ続けてくる。オートリザーブを使ってみたユーザーの画面には「予約の可否について36回電話しましたが、つながりません」とメッセージが表示されたという例もあるくらいだ。店舗のWebサイトやSNSで「当店はオートリザーブとは関係ありません」と呼びかける、あるいはオートリザーブの電話番号を着信拒否するのが、店舗にとって現在できる最大の対応だろう。
 

病院の食堂も「予約ができる店」?

オートリザーブの不備は、運営側も認めている。運営会社「Hello」のマネージャーは、「ネット上から電話番号などがわかる店の情報を拾うため、病院の食堂や持ち帰り専門店も“予約ができる店”として掲載されているなど、まだまだ対応が追いついていない部分もある」と話している*2。
 
かなり杜撰な仕組みであることを運営側も理解しているのならば、今すぐなんとかしなければならないはずだろう。
 
*1、2 「AIが予約代行「オートリザーブ」に苦情相次ぐ…「電話予約のみの店でもネットから予約」画期的サービスと急がれる整備【福岡発】」FNNプライムオンライン
 

サイトが変更されコンタクトが取りにくくなっている

しかし、オートリザーブのサイトを見ると、意見や苦情の申し出がしにくくなっている。というのは、以前このサイトでオートリザーブについての記事を掲載した時と現在では、また事情が変わってしまっているのだ。店舗からのQ&Aを掲載していたページが、同じリンクを踏んでも現在はサインイン画面が表示されるのみである。アカウントを作らなければ何の説明もしない、ということだろうか。
 
なお、オートリザーブは昨年、飲食店予約台帳システムをリリースしたと発表している*3。
 
*3 「こんなサービスが欲しかった!多機能サービスが登場。「AutoReserve」が飲食店予約台帳システムを正式リリース」
 
これについての問い合わせ先としては、メールアドレス(info@hello.ai)が掲載されているので何かの糸口になるかもしれない。
 

AIが100%悪、ではない

また、店舗にかかってくる電話に自動応答するというサービスが別の企業からリリースされている。これもオートリザーブと似たようなものなのか?という疑問の声が上がっているが、そうではない。東京のシステム会社IVRy(アイブリー)が12月から提供をはじめたこのサービスは「店側の意図で」電話の自動応答をするというものである。勝手に誰かに電話をかけるものではない。
 
例えば埼玉県内の居酒屋では、仕込みなどの忙しい時間に営業の電話がよくかかってくることに困っていた。そこでこの時間の電話を自動対応にしたところ、「予約など必要な電話にのみ折り返しできる」という環境を手に入れた、というものである。これによって営業電話の本数自体も減ったという。録音も着信番号の履歴も残るので、予約客の名前などもその場では聞き取りにくかったとしても、録音を聞き直すことで確認ができるという。
 
人手不足が続く中、デジタルの力で経営が合理化できるならばありがたい、と考える飲食店経営者は多いことだろう。AIはその一助になる道具であるのは間違いない。きちんと見極めて導入したいものである。
 

 

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