外国人観光客の入国規制緩和 インバウンドはどこまで回復する?
外国人観光客の入国条件が徐々に緩和されている。
これまで観光目的の外国人の入国は添乗員つきの団体ツアーに限られていたが、9月7日からは、添乗員なしの観光ツアーも受け入れるほか、1日あたりの入国者上限も大幅に増やしている。この変更によって、飲食店のインバウンドはどこまで回復するのだろうか。
9月7日以降の入国条件
9月7日以降、政府の水際対策は以下のように変更された。
これまで | 9月7日以降 | |
1日あたり入国者上限 | 2万人 | 5万人 |
出国前検査 | 陰性証明書の提出 (72時間以内) |
ワクチン3回接種で免除 |
観光ツアー受け入れ | 添乗員つきのみ可 | 添乗員なしも可 |
1日あたりの受け入れ人数の大幅な増加だけでなく、入国者にとっては、ツアーの選択肢が広がった他、検査にかかる時間や費用の負担が大幅に減るという点が特徴だ。
一方で、個人旅行についてはまだ受け入れを再開していないほか(航空券・宿泊先を旅行会社が手配する必要がある)、すべての入国者にビザ取得を義務付けるという2点については緩和されなかった。ただ、この点についても政府は規制緩和を検討する方針で、その決定を待ちたいところだ。
なお、これまでの入国規制の緩和は、2022年3月に観光目的以外の新規入国が再開され、6月には観光客についても添乗員つきのツアーに限って入国を受け入れるようになったという経緯をたどっている。日本政府観光局によると、それに伴って、今年4月から7月までの訪日外国人の数は4か月連続で10万人を上回った(図1)。2021年に比べて大幅に増加しているのは事実だ。
◇図1 訪日外国人数の推移
(出所: 日本政府観光局「訪日外客数(2022 年 7 月推計値)」)
「日本の強み」旅行先としての魅力は変わらず
他にも明るい材料がないわけではない。それは、旅行先としての日本の魅力が変わったわけではないということだ。日本政策投資銀行と日本交通公社が2021年10月に行った調査によると、「次に海外旅行したい国や地域」として、特にアジア居住者の間で日本はダントツの首位を誇っている(図2)。
◇図2 アジア居住者が次に行きたい国
(出所: 日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」)
また、日本への旅行を希望している、あるいは日本旅行の経験がある外国人は、次に日本を訪れる時には予算を増やすという人が多い(図3)。
◇図3 日本旅行の予算
(出所: 日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」)
アジア居住者、欧米豪居住者ともに、6割前後の人が「予算は増える」と回答している。飲食店としては、こうした恩恵にあずかりたいところだが、ひとつ課題もある。それは、日本の最大の顧客とも言える中国の動向だ。「ゼロコロナ」にこだわる中国の場合は、海外旅行を控える動きが続く可能性が高い。
「第7波」見据えた日本人の行動は?
では、国内に住む日本人の動向にも目を向けてみたい。最近の夜の人出については、このような傾向があるようだ。
都内のバーの場合、店主は「週末だからと言って忙しいとは限らず、金曜日でも静かな日は多い。来店客の動向は全く読めない」と語る。また、タクシーの運転手によると、「夜の人出はそう多くない。政府に言われなくても自主的に外食を控える人が多いのではないか」ということだ。
テレワークの浸透で、わざわざ自宅から外食に出かけない、という人も多い。人々の生活習慣がコロナ前に戻ることは難しそうだ。
給付金なき今 インバウンドに期待しすぎず自己防衛を
8月31日、世界保健機関(WHO)は8月22日〜28日の1週間の新規感染者数は日本が6週連続で最多になったと発表している*1。コロナの影響が残り続けるなか、時短営業への協力金が途絶え、飲食店はいま最も厳しい状況にある。食料品の値上げにも終わりが見えそうにない中、「いつかは通り過ぎる波」とは考えられない。
そこで飲食事業者の業態転換支援事業を紹介したい。東京都中小企業振興公社は、売上が大きく落ち込んでいる都内の中小飲食事業者が新たに「テイクアウト」「宅配」「移動販売」を始める場合、経費の一部を助成する事業を行っている*2。第24回目にあたる令和4年からの申請は、10月末まで受け付けている。詳しくは下記リンクをご参照いただきたい。
〇東京都中小企業振興公社 お問合せ先:03-6260-7027 (平日9:00から16:30まで)
*1 東京新聞オンライン「日本、6週連続で世界最多 コロナ新規感染、死者は2番目」
*2 東京都中小企業振興公社「飲食店事業者の業態転換支援事業」
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