飲食店の事業計画書の書き方 テンプレートの入手方法や作成のポイントなども解説
事業計画書とは会社設立や開業の際、資金を確保するために作成する文書です。事業内容や収支計画といった内容をまとめ、金融機関に提出します。この記事では、飲食店の開業を計画している人に向けて、事業計画書の書き方やポイントについて解説します。事業計画書の作成方法を知り、飲食店を開業する際の参考にしてください。
目次
◆事業計画書とは
事業計画書とは開業、あるいは新規事業を始める際に作成する文書です。創業動機・事業コンセプト・必要資金の内訳などを記載し、開業に必要な融資を受けるため金融機関に提出します。なお事業計画書には決まった書式はありません。
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◆なぜ飲食店の開業に事業計画書が必要なのか
飲食店の開業には「開業資金」と「運転資金」をメインに、店舗の規模に応じて1,000万円以上の費用がかかる場合があります。個人でこれらの資金を調達するのは難しく、金融機関からの融資は必須といえるでしょう。事業計画書は必要な資金を具体的に把握し、開業の実現性を高めるために必要です。作成することで、将来性や収益性をイメージしやすくなるメリットがあります。
◆飲食店の開業融資はどこで受ける?
開業資金を調達するなら、日本政策金融公庫の新創業融資制度の活用がおすすめです。民間の金融機関でも融資を行っていますが、経営経験がなければ不利になります。注意すべき点として、融資を受ける際には自己資金が必要です。新創業融資制度では「創業資金総額の10分の1以上」が条件とされています。
◇新創業融資制度とは?
新創業融資制度とは、政府が出資する公的金融機関の日本政策金融公庫が提供するサービスです。創業者向けに融資を行っており、融資限度額は3,000万円(うち運転資金は1,500万円)、原則無担保・無保証人で利用できます。ただし、新創業融資制度で融資を受ける際には、創業資金総額に対して10分の1以上の自己資金と、事業計画書が必要です。
◆飲食店の事業計画書はいつから作成するべき?
事業計画書の作成は、開業のおよそ3か月前にスタートするのがベストです。事業計画書を提出し、審査期間を経て融資が開始するまでには1か月程度かかるため、開業までの流れや手続きを明確にしておきましょう。
◆事業計画書のテンプレートを入手する方法
事業計画書のテンプレートは、日本政策金融公庫のホームページからダウンロードできます。また、オフィスソフトのテンプレートや作成ツール、クラウド上で利用できるサービスもあるので検索してみましょう。
以下は事業計画書のテンプレートの一例です。事業計画書を作成する際の参考にしてください。
・各種書式ダウンロード|国民生活事業|日本政策金融公庫
・事業計画書 – 無料テンプレート公開中 – 楽しもう Office
・創業融資に必要な事業計画書を無料で作成 | freee創業融資
◆飲食店開業時の事業計画書の書き方
飲食店開業時に作成する事業計画書の書き方は、日本政策金融公庫のホームページにサンプルが掲載されています。ここでは、日本政策金融公庫の創業計画書をもとに、各項目の書き方について詳しく解説しましょう。
◇1.創業の動機
「創業の動機」は、創業に至る経緯や目的を記入する欄です。審査では経営者として、事業を継続できるかどうかをチェックされます。単なる思い付きではなく、計画的な準備に基づく創業であることをアピールし、その事業への熱意を伝えましょう。飲食店での勤務経験や、活かせそうな過去の職歴があれば記入しておくとプラスになります。
◇2.経営者の略歴など
「略歴」の欄はおもに職歴を時系列で記入します。創業の動機欄で過去の経験について記入している場合は、矛盾がないか注意しましょう。「過去の事業経験」では、事業に失敗した場合も含めて正直にチェックを入れます。その他、調理師免許やソムリエ資格などは「取得資格」欄に、特許権や商標権などは「知的財産権」欄に記入してください。
◇3.取扱商品・サービス
・取扱商品・サービス
「取扱商品・サービスの内容」には、提供するメニューや平均価格を簡潔に記入します。複数のメニューがある場合でも主力商品を3つ程度とし、価格は必ず記入してください。独自性をアピールできるとなおよいでしょう。売上シェアは、記載メニューが全体の売上に占める割合です。営業開始前であれば見込みでかまいません。
・セールスポイント
「セールスポイント」には、メニューの特色やお店のアピールポイントを記入します。融資担当者にとっては重要な判断要素になるので、しっかりとアピールしましょう。創業の動機や経営者の略歴、お店のコンセプトと一貫性のあるストーリーであることがポイントです。また、強みが料理や飲み物とは限りません。スキルやノウハウ、仕入れルートなどさまざまな視点から魅力を意識してみましょう。
◇4.取引先・取引関係など
「取引先・取引関係等」は、商売の流れを簡潔に説明するための項目です。「販売先」「仕入先」「外注先」「人件費の支払」の4項目に分かれており、それぞれの割合や取引条件についての内容になります。
・販売先
飲食店の場合、販売先はお客さまです。「一般顧客」あるいは「一般個人」と記入し、カッコ内には居住地・年齢・性別・職業といった顧客層を書きましょう。営業開始前であれば、ターゲットとする顧客層になります。顧客の属性はできるだけ明確にするのがポイントです。
・仕入先・外注先
「仕入先」には販売商品、あるいは飲み物や料理の食材を仕入れる取引先を記入します。「外注先」は加工や作業を依頼する外注業者です。締め日・支払期日については「支払の条件」欄に記入してください。
・人件費の支払
従業員がいる場合は「人件費の支払」欄に、給与の締め日・支給日を記入します。ボーナスが決まっているのであれば、「ボーナスの支払月」欄に支払月も記入しましょう。
◇5.従業員
従業員は融資を受ける店に従事する人数を記入します。記載する人数は、実際に勤務する人でなければなりません。基本的には正社員、または長期雇用の従業員を記入します。パートやアルバイトの雇用を考えているのであれば、予定数を記入しましょう。
◇6.借入の状況
「借入の状況」欄には住宅ローン、マイカーローンなど個人的な借入を記入します。うその申告をしても信用情報の照会ですべて把握されます。正直に記入しましょう。ただし、事業資金は除くため、ビジネスローンや店に関する借入は記入しません。
◇7.必要な資金と調達方法
「必要な資金と調達方法」は資金計画の欄であり、事業計画書の重要な項目です。左側には資金用途の内訳と必要な金額、右側には資金の調達方法および具体的な金額を記入します。必要な資金と調達方法の合計は同額でなければなりません。自己資金は多めであるほうがベストですが、水増しは避けましょう。
◇8.事業の見通し(月平均)
「創業当初」と「軌道に乗った後」で事業の収支を記入します。客観的な根拠に基づく内容や数字を記載するのがポイントです。「席数×客単価×回転数×営業日数」といった算式を使って、わかりやすく売上高を算定しましょう。個人的経験や推測による記載は、融資担当者によい印象を与えないためおすすめしません。
◇9.自由記述欄
「自由記述欄」は積極的に活用しましょう。過去の業績や見込み客数、準備期間等を記入してもいいですし、意気込みでもかまいません。熱意を持ってアピールすることが重要です。書き方に迷ったら、創業計画書全体の「まとめ」となる内容を書くとよいでしょう。
◆事業計画書を作成する際のポイント
事業計画書の書き方をひと通り把握できたら、作成時のポイントも押さえておきましょう。3つのポイントを紹介します。
◇事業計画書内の数値は根拠のあるものを使う
事業計画書における資金計画や予測貸借対照表等は、融資に際して細かく見られる項目です。イメージだけでは実現性が低いと判断されかねません。記入する際には統計データや検証に基づいて、根拠のある数字を用いるのが望ましいといえます。競合調査や市場調査、統計データ等を積極的に活用しましょう。
◇経営上の課題や問題点がないか確認しておく
経営上の課題や問題点について把握することも大切です。融資担当者に問題点や経営課題を指摘された際に、回答できるようにしておくと慌てずに対応できるでしょう。また、あらかじめ把握することで開業前に改善策・対応策を検討でき、リスク回避につながる可能性も考えられます。
◇わかりやすく、要点を簡潔に伝える
事業計画書は要点をまとめ、わかりやすく作成しましょう。専門用語はできるだけ使用せず、簡潔に伝える文章を心掛けます。具体的な内容、かつ整合性が取れているかも重要です。伝わりにくい部分がないか、作成後には第三者に読んでもらいチェックを行いましょう。
◆まとめ
飲食店の開業には金融機関からの融資が必要であり、融資を受けるにあたって事業計画書の提出が求められます。事業に対するビジョンをしっかりと持ったうえで、具体的でわかりやすい事業計画書が必要です。
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