繁盛店への道

開業時には要チェック!業態にかかわらず、共通するベストサービスとは

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接客コンサルタント井崎 正吾が語るこれからの飲食店サービス VOL.1 前編

 
コロナ禍で大きく、変化を強いられた飲食店。そんな中でも新規オープンするお店や、変わらず賑わいを見せているお店も多くみることができます。そこには、もちろん料理のすばらしさはもちろんですが、サービススタッフのコミュニケーションが大きくかかわっているように思うのです。そこで、以前もRESTAマガジンでインタビューに登場いただいた、接客コンサルタントの井崎正吾さんに今知るべき接客の極意をまとめていただきました。
 
(以下、井崎正吾氏)
 
今回のコロナ禍が飲食業界に与えた影響は、色々な意味でとても大きかったと言わざるを得ません。ネガティブな報道が多い中、中国や欧米で進んでいたデリバリー業態はもちろん、QRコードで読み取るメニュー、客自身の携帯電話から直接オーダーができる仕組みなど、「これから」のスタイルが、日本においても加速度的に開発され、身近になったことはポジティブな面でもあります。
 

コロナ禍における飲食店の2極化

日頃から商品のクオリティを磨き、接客や予約システムを活用した CRM(カスタマーリレーションシップマネージメント/顧客管理)にも意欲的に磨きをかけてファンを獲得してきた店は、緊急事態宣言下でも、常連客がお店をサポートするように支え、スタッフは勉強するには良い機会と、腕に磨きをかけることに余念がありませんでした。片や、客が来るのが当たり前、接客にも店内にも気を配らない店は、テイクアウト商品を用意してもさほど売れない、時短営業にしたら入客が2割程度などという店もあるのが事実です。
 
このような状況を目の当たりにすると、今も昔も、やはり QSC「Quality(クオリティ)」「Service(サービス)」「Cleanliness(クリーンリネス)」に真摯に向き合うことが大切なのだと、改めて気づかされる特別な機会になったともいえるでしょう。
 
一部の業態では馴染んできたタブレットを使用してのオーダーや、ロボットが料理の配膳を行う店の出現で、直接スタッフと利用客との接点が少なくなってきています。近い将来、厨房でもほぼ機械任せで調理された料理が、ロボットや機械仕掛けで配膳される業態も今にも増して登場するのではないでしょうか。回転すしなどはその最たるものだと思います。
 
若い世代においては、愛想がないスタッフや、オーダー間違いをするスタッフが居る「フルサービス」の業態よりも、カウンターでオーダーし、支払いを済ませ、渡されたページャーが鳴ったらできた商品を取りに行くフードコート業態のほうが「気が楽だ」という人も少なくないと聞きます。
 

接客はレストランの魅力の一つ

昨今の緊急事態宣言下、飲食店で飲酒を含む会食がしたくても、思うように出来ない場所が多い中、周囲の声を聴くと、海外や遠方の友人とパソコンや携帯電話の画面越しで「リモート飲み会」ができることはとても有意義、という人もいます。しかし、それでは満足できず、やはりおいしい料理と素敵な空間のある店で「人に会って乾杯したい」という欲求があるのも事実です。そもそも、「人に会いたい」という欲求は、大部分の人間に備わっているのでしょう。
 
これらの状況を鑑みるに、どんなにカジュアルでも高級業態でも、直接人が接客する業態は無くならず、それどころか、わざわざ人が接客してくれること自体の価値が高まり、一部の業態では単価も上がって、一般的にあまり高くなかった接客スタッフの収入も変化してくるのではないかと考えています。勿論それに見合った高い水準での知識や技術が求められることは言うまでもありません。そんな日本における飲食店、特にレストラン業態での接客は、昭和から続くファミリーレストランの影響も大きく、一般的に幅の広い年代で「良い接客」というざっくりとした概念が、共通のスタイルをもっていて、その浸透ぶりは国民気質もあって、すっかりスタンダードになったといえます。日本料理店においては、本膳料理ほどではないものの、会席や懐石料理においても、もてなす側、利用する側の作法があります。こちらは逆にまだまだ敷居が高く、あまり広く知られていないのが現状です。
 

どんな業態でも、骨幹は同じ「楽しんでもらうこと」

今回は、料亭や高級業態ではなく、より一般的な生活に寄り添う各種業態に関する接客や、店づくりのヒントについてお伝えしたいと思います。
 
以前、こちらのインタビューでもお伝えしましたが、基本的なお客様の「期待」と、店側から提供する「接客のスタイル」は「コンセプト」や「業態」によって異なります。分かり易く大袈裟に言うと、1人数万円するフランス料理の店で「へい、いらっしゃいっ!」とは出迎えませんし、ラーメン屋さんや居酒屋で燕尾服に白手袋をしたスタッフがラーメンを運ぶ店も一般的ではありません。その業態に応じた適当な接客スタイルがあるのです。
 
但し、どの業態でも、お客様の期待以上を提供する、喜んで頂く、楽しんでもらう、という接客の本質に違いはありません。勿論、ベースには十分な「商品知識」が備わっていることが絶対条件です。
 
その本質を間違えなければ、各種業態に合った接客のスタイルを提供していく中で「高級で緊張していたら凄く気さくに話してもらえて和んだ」、「カジュアルだから期待していなかったが商品知識も十分で感じがとても良い接客だった」、という好感触の体験をして頂けます。このような期待を「少し」上回る体験は、好感を持って頂けるケースが多いようです。この「少し」が、ポイントのようなのですが、これについては、また別の機会にお話ししましょう。
 
(後編へ続く)
 

井崎 正吾 経歴

1994年 パークハイアット東京「New York Grill&Bar」開業メンバーとして、サービスに従事する。その後、飲食企業の立ち上げ、営業本部長、代表取締役も歴任。
2008年には「Solid Foundation Japan」を立ち上げる。
2015年 カフェ・カンパニー株式会社 取締役クオリティ本部長に就任。
2018年より「Solid Foundation Japan」の活動を再始動。
日本ホスピタリティ推進協会教育機構認定「ホスピタリティ・コーディネーター」取得
国内外、異業種異業態の飲食店舗200店舗に携わる。
 

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