接客コンサルタント井崎正吾氏に聞く、繁盛店の接客の極意 第一回「ブランドコンセプトを理解した接客とは」
東京には約8万件以上のレストランがある。その中にもお客様に選ばれる店と選ばれない店の違いは大きい。
味のクオリティが大切なのはもちろんだが、ここ近年一層注目されているのが接客だ。人口減少に伴い、飲食業に従事するスタッフを探すのが大変だという話はあちらこちらから耳にする。しかし、接客の素晴らしいお店には質のよいスタッフが集まっているように思う。
今回、その接客についてのコンサルタントとして様々なレストランを教育している、「Solid Foundation Japan」の井崎正吾氏に話を伺った。3回の連載としてお伝えしていく。聞き手は、編集責任者の川瀬亮太氏(ルーテージ株式会社)
第一回「ブランドコンセプトを理解した接客とは」
―(川瀬氏)今回はよろしくお願いいたします。聞きたいことがたくさんありますが、まずは、井崎さんのお仕事内容をご紹介いただけますか?
(井崎氏)こちらこそ、よろしくお願いいたします。はい、私は現在、ホスピタリティとは何かということをサービススタッフに伝える活動に従事しています。
私自身、ホテルのレストラン勤務から始まって、国内外様々な業態の接客に努めてきました。その中で、接客スタッフにこそ、ファンがつき、お客さまのリピートに繋がるという現実をしっています。しかし、そのことを理解していないレストランがいかに多いかということもまた事実なのです。これは、カフェ、居酒屋などカジュアル業態においても同じことが言えます。
―なるほど、その通りだと思います。導入としてはまず何をされるのでしょうか。
(井崎氏)まずは、現場体験することを第一にしています。どんな現場であろうと自分自身がスタッフと同じ目線で業務遂行をするのです。
同時に、きちんとブランドコンセプトが固まっているのか?ということもチェックします。なぜならば、ブランドコンセプトが固まっていないお店は接客スタイルもバラバラですし、備品一つもルールが決まっていないということが発生するからです。
―日本のレストランというと「マニュアル」という印象が強いですね。いわゆるファミレス的な接客といいますか。
(井崎氏)そうですね。接客という点では、もちろんベースがあることは大切です。しかし、お客様ひとりひとり異なるのに、同じ接客をしても相手が気持ちよいわけがありません。常に相手に寄り添う会話とともに、お店らしさを演出できているかということも大切です。
今回、取材場所に選ばせていただいたこちらのお店は、NY発のお店なのでクラシカルな接客は必要ないと思います。NYのお店もフランクな接客なので。笑顔で「こんにちは」が似合うお店なのに、まじめな接客をするのはおかしいですよね。それが、ブランドコンセプトを理解するということなのです。その部分をきちんと理解したうえで、臨機応変な接客に繋がっていくと思うんです。
―たしかに、ブランドコンセプトとまったく合っていない接客スタッフもいますよね。
(井崎氏)はい、高級店なのに勘違いをしたタメ口の接客や、カフェなのにムスッとしたスタッフをみるとブランドコンセプトをまったく理解していないのだなと感じますね。
その根源の一つはマネージャーにあると思います。マネージャーという役職がつくと、現場から離れ、裏での事務作業に時間を割く人が多く見受けられますが、それはまさに職場放棄に思います。もちろん、事務作業も大切な仕事ではありますが、現場が「理想のお店」になっているかのチェックは怠ってはいけません。
私が、まずプレイングマネージャーとして動きを見せることで、「できない」という意識から「できる」という方向を導くということが最も重要な任務だと感じています。
―接客コンサルをするベストなタイミングというのはありますか?
(井崎氏)もちろん、オープンニングがベストですよね。色がついていないので。しかし、困っているお店はほとんどがオープン後ですけど(笑)実際に立て直しの労力は、通常営業の5倍はかかりますね。
サービス業の従業員は、シフト制で動くので全員が揃って研修をうけることも一苦労です。言葉と映像を使いながら、一つの方向へ導いていく必要があるのです。
―やはり、何事もはじめが肝心ということですね。興味深いです。
井崎 正吾 経歴
1994年 パークハイアット東京「New York Grill&Bar」開業メンバーとして、サービスに従事する。その後、飲食企業の立ち上げ、営業本部長、代表取締役も歴任。
2008年には「Solid Foundation Japan」を立ち上げる。
2015年 カフェ・カンパニー株式会社 取締役クオリティ本部長に就任。
2018年より「Solid Foundation Japan」の活動を再始動。
日本ホスピタリティ推進協会教育機構認定「ホスピタリティ・コーディネーター」取得
国内外、異業種異業態の飲食店舗200店舗に携わる。
飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
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