「串カツ田中」が目指す三世代で楽しめるFR型串カツ酒場
都心の繁盛業態がロードサイドへ 前編
「串カツ田中」「焼肉ライク」と何かと話題の店がロードサイドに出店した。「串カツ田中」は3月28日群馬・前橋、「焼肉ライク」はその翌日の3月29日千葉・松戸である。
「串カツ田中」は昨年6月1日よりほぼ全店で禁煙化したことによって、ファミリーや若者が増えるようになり、これらにシフトした運営をすることによって既存店の客数が増えている。「焼肉ライク」は昨年8月29日、東京・新橋にオープンした1号店が16坪月商1600万円という驚異的な売上を維持している。
この二つの業態がロードサイド立地に出店した意味とはどのようなものかを考えた。
「禁煙化」によって見えてきた「ロードサイドモデル」
「串カツ田中」がこの度オープンした店は、正しくは「ロードサイドモデル」の1号店である。そう呼ぶのは、ロードサイドには既に千葉・流山、大阪・岸和田、泉北に存在しており、それとは異なる新しいコンセプトであることを示しているからだ。
この背景について株式会社串カツ田中ホールディングス代表取締役社長の貫啓二氏はこのように語る。
「過去、住宅街立地の店で店内にたばこの煙が充満していることからファミリーのお客様からのクレームをいただき、禁煙化についてどこかで決断しなければならないと考えていました。そして、禁煙化によってファミリーにとても喜ばれるようになりました。ロードサイドの岸和田、泉北の店では禁煙化に伴って客数が20%増えました。そこでさらに一歩進んで『三世代で楽しむことができるFR型串カツ居酒屋』をコンセプトとしたロードサイドモデルを考えました」
全店禁煙化に伴って、客層の構成比が以前(2017年6月~11月平均)会社員・男性グループが31.1%、ファミリー13.4%だったものが、会社員・男性グループ24.1%、ファミリー20.8%となった。それぞれ7%減り、7%増えたことになる。
このロードサイドモデルの1号店「串カツ田中 前橋三俣店」は、JR前橋駅から約3㎞離れており、幹線道路の東部環状線に面し間近で県道3号線と交差するなど、交通量の多い場所にある。元とんかつ店であった物件を居抜きで活用し、83坪120席という既存店にない大型店舗となった。
1号店をここにしたのは、群馬県は自動車保有台数が人口100人あたり69.58台と全国一位(自動車検査情報登録情報協会2017年)であることと代行車を利用する文化があることから判断したという。
「居心地の追求」「食事メニューの充実」「利便性の追求」
さて、「三世代で楽しめるFR型串カツ酒場」のコンセプトとはこのようなものだ。
まず、「居心地の追求」。さまざまなお客様層のニーズとその利用シーンやニーズに応えられる構造や内装を整えた。客席では、カウンター席、ボックス席、お座敷の他に、ファミリーが貸し切りで使用することができるクッションフロアのファミリールームを設けた。
次に、「食事メニューの充実」。ほぼ全店で禁煙化によってファミリー層が増加するようになり、これまでの居酒屋としての利用に加えて食事の利用シーンが増えてきた。そこでメインとなる串カツの他に釜飯などのご飯ものを充実させた。また、ワンドリンク制とお通し代を廃止した(新たにメニュー化した「キャベツ」は1人50円で食べ放題となっている)。
そして、「利便性の追求」。「串カツ田中」としては初めて順番受付システムの「EPARK」を導入、ウエーティングをしなくても席の準備ができたらアラートで教えてくれる。また「O:der」も導入し、テイクアウトの事前予約、受取時間指定で待たずに熱々の串カツを受け取ることができるようにしている。
貫氏はこう語る。
「当初展開していた住宅立地で、思いがけなくお子様連れのお客様が多かった。このような傾向を捉えて『お子様はいずれ大人になっていく。また、幼い時に体験したB級グルメは記憶に残る』ということを考えるようになりました。そこで、串カツ田中のメインターゲットは仕事帰りの人ですが、一番大切にするお客様をお子様にしようと決めて今日に至っています。そこでロードサイドモデルでは、これまでのお子様サービスを継続し、さらに充実させていきます」
このお子様サービスとは、「ソフトクリーム無料」(小学生以下)、「手作りたこ焼き」(6人以上の来店でたこ焼き20個を無料サービス)、「子どもジャンケンドリンク」(未成年限定、1人ソフトドリンク1杯が、ジャンケンで従業員に勝った場合が無料、あいこで半額、負けで定額)。お子様サービス(小学生以下)の他に、「お子様プレート」390円、「お子様うどん」290円など、「お子様メニュー」が加えられた。
通常業態は客単価2300円前後、アルコール比率は4割となっているが、ロードサイドモデルではアルコール比率が1割ほど下がると想定している。一方、フードメニューを増やしていて、ロードサイドで営業している岸和田、泉北の実績から客単価は2000円になるものと想定している。
今後のロードサイド出店では前橋三俣店を標準として捉えるのではなく、ここでメニューやオペレーションなどのトライアンドエラーをしながら、近隣に出店してロードサイドの業態をかためていく意向だ。
(後編)に続きます。
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
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