「減価償却費」とは?飲食店のメリットや計算方法についてご紹介!
「減価償却費」という言葉を聞いたことがありますか。この言葉は新聞やテレビ報道などでも使われることがあり、会計用語のなかでも一般的な認知度は高いと言えます。しかし、具体的にはどのような意味の言葉か、何をどんな仕組みでどうするのかが分かっていない人も多いのではないでしょうか。
減価償却費とは「電化製品や車などのような長期間に渡って使用する製品を購入した場合、その経費を分割して計上する会計処理」のことを言います。減価償却費の計算方法や、具体的にどんな製品が減価償却費の対象になるのかなどについて、詳しく解説していきます。
減価償却とは何か
減価償却とは経年劣化を伴う高価な資産を取得したとき、その資産が長期にわたって使用するものである場合は、取得時にかかった費用を資産の耐用年数に応じて少しずつ計上していく仕組みのことを言います。この仕組みによって事業用に高価な資産を購入したとしても、それにかかった費用を一括で経費として計上することはできません。詳しく見ていきましょう。
経年劣化を伴う資産が対象
減価償却の対象となるのは、「経年劣化を伴う高額の資産」です。
例えば、飲食店における厨房機器や調理器具がこれに該当します。仮に、厨房機器を150万円で購入したとしましょう。そうすると今後買い換える必要が出てくるまで、店舗ではその機器を使い続けます。ここでもし、厨房機器を購入した年にその費用を全額計上するとどうでしょうか。この資産はその年だけに使うものではなく、今後も業務のために使い続けることを考えて買ったものです。そう考えると「今後も使う厨房機器の費用をなぜ購入した年だけに計上するのか」という問題が出てきます。機器を買った年に経費を全額計上してしまうと、翌年以降は機器使用のための支出がないということになります。
減価償却とはこのような経理上における問題を生じさせないための考え方であり、長期間使用することを前提として資産を購入した場合は、それを使う年数に応じて購入時の費用を少しずつ計上していくという仕組みになっているのです。
会計上では「有形固定資産」「無形固定資産」として扱われる
減価償却の対象となる資産は形のあるものであれば「有形固定資産」、形がなければ「無形固定資産」として扱われます。前者に該当するのは飲食店だと先に述べた調理器具や厨房機器のほか、冷蔵庫や冷暖房設備、野立て看板、建物の内装工事に使われている素材などです。後者は例えば店で使用するパソコンのソフトウェアが挙げられます。
減価償却の対象となる資産の例と耐用年数
減価償却の対象となる資産には品目ごとに「法定耐用年数」が定められています。これは資産ごとに「このくらいの期間であれば使えるだろう」と見込んで設定された基準です。耐用年数は客観的に見て判断しづらいため、減価償却をする際はこの基準に従って費用を計上していきます。
減価償却の対象となる資産については、国税庁のホームページに品目ごとの具体的な耐用年数が載っています。
ここでは飲食店に関係する資産の耐用年数について、一部例を挙げておきましょう。
- 応接セット 接客業用のもの……5年
- 冷房用・暖房用機器……6年
- 電気・ガス機器……6年
- 食器・厨房用品 陶磁器製・ガラス製のもの……2年
- 食器・厨房用品 その他のもの……5年
減価償却の対象とならない資産
購入金額が高いものだったとしても、すべてが減価償却の対象となるわけではありません。
「年数の経過によって劣化する」と考えられるもの以外は減価償却せず、お店の資産として計上するか売却するかのどちらかで処理します。以下はその一例です。
- 土地の借地権(土地を借りて飲食業を営んでいる場合)
- 絵画やつぼいった古物品(店内に飾るものとして)
- 電話加入権
耐用年数を間違えた場合は
もしも、資産の耐用年数を間違えて計上してしまった場合は、個人と法人とで対応が異なります。個人の場合は過去の償却費を訂正します。仮に資産が中古品だった場合は請求ができないため、次回から耐用年数を間違えないようにして計上します。法人の場合だと過去の償却費の訂正はせず、次年度から正しい耐用年数で計上します。
減価償却のメリット
ここまで減価償却の概要について見てきましたが、複雑な仕組みであるため完全に理解するには時間がかかることもあるでしょう。しかし、この制度は飲食店を経営していくうえで必ず利用する制度であり、知っておくに越したことはありません。また、減価償却を行うことは店側にいくつかのメリットを生み出します。
それは「節税効果」と「資産評価への活用」、「キャッシュフローではプラスになる」という利点です。それぞれ詳しく解説します。
節税効果がある
減価償却を行うと節税につながります。これは減価償却費が経費として計上可能ということと関係しています。
減価償却費を計上すると利益額が抑えられるため、同時に税額も抑制できます。それによって節税になるというわけです。注意点は、法人の場合だと資産を処分する際に利益を抑えられることに対し、個人ではそれができないということです。個人事業の場合は毎年きちんと減価償却費を計上するようにしましょう。
資産評価に使える
減価償却は保有資産の評価にも使えます。例えば、購入時には新品だった厨房器具は一年たつと新品ではなくなり、ところどころ汚れや傷みがあるはずです。その時点で厨房機器は、購入時と同じ資産価値を有しているわけではありません。このような場合の、現時点における資産の具体的な価値は、減価償却した分の費用をもとの金額から引けば出てきます。
キャッシュフローではプラスに働く
減価償却費は「実際の現金支払いを伴わない費用」です。そのため損益計算書のうえでは費用が計上されますが、キャッシュフロー計算書では実際のキャッシュが支出されていないので、プラスに働くのです。例えば、先に述べた厨房機器で40万の売り上げがあった場合、減価償却分として計上した費用が20万だったとしましょう。そうすると40万から20万を引いて利益は20万円となります。しかし、実際はその減価償却分の金額を支払っていないため、この場合は40万に20万を足した額が手元に残る額となるのです。
減価償却の計算方法
では、減価償却の具体的な計算方法について見ていきましょう。減価償却の計算は経営状態に応じて計算方法を選択し、計算を進めていきます。
定率法
定率法は償却費が年とともに減少する方法です。収益が低下しがちな後年の負担額を抑えられる一方で、事業当初の償却額が大きくなっています。法人の場合はこちらのやり方で計算します。
定額法
資産の購入金額に定額法の償却率を掛けるやり方です。例えば資産を100万円で買って耐用年数が5年の場合は、100万に0.2を掛けて毎年20万円の額を計上します。個人経営の場合はこちらの方法を使います。また無形固定資産はこのやり方でのみ計上可能です。
法人の場合の価償却の計算方法
法人の場合は、国税庁の「減価償却資産の償却率表」を参照して資産ごとの償却率を把握しましょう。「未償却残高×償却率」と「取得価格×定率法の保証率」で計算します。
前者と後者を比較して前者が多い場合はそちらを計上し、後者が多いのであれば「改定取得価格×改定償却率」で算出された金額を計上します。
個人事業主の場合の減価償却の計算方法
個人の場合も同じく国税庁の「減価償却資産の償却率表」を参照し、償却率を資産の購入金額に掛けて金額を算出します。また、取得価格が10万円から20万円以下の資産は、耐用年数に関係なく「3年間」で均等に減価償却するやり方である「一括償却資産」として処理することも可能です。
まとめ
減価償却制度は「資産の経年劣化」を考えて行う会計処理のため、実際のお金の流れが目に見えず、難しいと感じることが多い制度だと言えます。しかし、経年劣化を伴う設備を持った事業者にとっては、このやり方を正しく知っていれば経営にうまく生かすことができます。きちんと要点を押さえながら、少しずつ学んでいくようにしましょう。
飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
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