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2025年の飲食店倒産は過去最多へ 食材や人件費高騰への対策に利用できる各種補助金を知ろう

食材、燃料、そして人件費の高騰。飲食店を悩ませる多くの事態が長引き、経営を圧迫しています。今年2025年の上半期の飲食店の倒産は458件発生、前の年より3年連続で増加しました。先行きも明るいものではなく、2025年の通年では最多になるとの予測もあります。そこで経営を維持するための各種助成や補助金を上手に使っていきたいものです。
じつは、助成事業や補助金制度を実施している団体は複数あります。飲食店の現状とあわせて助成や補助金についてご紹介していきます。
◆増え続ける飲食店の倒産件数
帝国データバンクが7月に公表した調査結果によれば、2025年上半期の飲食店の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は458件発生し、前年同期(435件)を上回り3年連続で増加しています。上半期として過去最多を更新し、2025年通年では初の900件台に達する可能性もあるとのことです。

飲食店の倒産件数の推移
(出所:帝国データバンク「飲食店」の倒産動向(2025年上半期)」)
コロナ禍で受けたダメージから回復途上にあるなかで、特に食材費や人件費など運営コストの増加が影響し、収益確保のメドが立たなくなったことで事業を諦めるケースが多くみられたとのことです。業態別では、下のようになっています。

飲食店の業態別倒産件数
(出所:帝国データバンク「飲食店」の倒産動向(2025年上半期)」)
件数で最も多いのは「酒場・ビヤホール(居酒屋)」で105件と、前の年より減少はしているものの高い水準が続いています。倒産件数が増加しているのは町中華のほかラーメン店や焼肉店、カレー店などの業態が中心となる「中華・東洋料理店」で12.8%、「日本料理店」では53.3%にのぼっています。
日本料理店では団体客の減少や節約志向の高まり、経費削減による企業の接待の減少があり、店としては若年層の取り込みを目的に価格を重視したメニューや見た目にこだわった料理の開発を進めているものの、一方で古くからの常連客が徐々に離れるといった難しい経営環境にありました。
◆コスト高騰が続くなかでの健全な経営状況とは?
ただいずれの業態でも共通した経営の圧迫要因となっているのが、原材料・燃料、人件費の高騰でしょう。金融庁の資料のなかに、経営改善のポイントのひとつとして「FL比率」というコストの計算方法があります。「FL比率」というのは「FLコスト(FOOD:材料費+LABOR:人件費)」を売上高で割ったものです。この比率が60%であることが、適正値のひとつの目安とされています。

飲食店のコスト構造の概念
(出所:日本生産性本部「『業種別支援の着眼点』2023令和5年3月 飲食業」)
また、飲食店の経営にあたっては原価率を3段階に分けたメニュー構成を提案しています。

飲食店の原価率の概念
(出所:日本生産性本部「『業種別支援の着眼点』2023令和5年3月 飲食業」)
厳しい環境が続く中、まずこうしたコスト構造を見直すこともおすすめします。
◆各種補助金について知っておこう
そして必ずおさえておきたいのが、各種補助金です。中小事業者に対する補助制度は複数の団体が実施していますので、それぞれご紹介していきます。
◇中小企業省力化投資補助事業(中小企業庁)
賃上げを目標とした補助金です。中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするもので、特に人材不足に悩む中小企業等に対して省力化のための投資を支援するもので、「カタログ注文型」と「一般型」があります。
カタログ注文型(最大1500万円)は、補助対象としてカタログに登録された製品(ロボット)などの中から導入するものを選び、導入する製品などの導入に対して補助金が出されるというものです。

(出所:中小企業省力化投資補助金 事務局)
賃上げ要件を達成した場合、補助額が引き上げられます。そして一般型(最大1億円)の内容は下のようになっています。

(出所:中小企業省力化投資補助金 事務局)
こちらは単独の製品というよりは、設備やシステム構築といった、少し複合要素のある省力化ツールの導入が対象となります。こちらも、大幅な賃上げを行う場合は、補助上限額が引き上げられます。詳細は事務局の専用サイトを参考にしてください。
◇小規模事業者持続化補助金(中小機構、各商工会議所および商工会)
「一般型」と「創業型」があります。一般型は「地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とし、持続的な経営に向けて自ら策定した経営計画に基づく販路開拓等の取組を支援する」のが目的としています。あくまで小規模事業者向けの補助制度で、その要件は下のようになっています。ただ、「小規模事業者」であることは要件で、その定義は下のようになっています。

小規模事業者持続化補助金の対象
(出所:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第17回公募 公募要領)
補助率と上限額などは下のようになっています。

(出所:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第17回公募 公募要領)
補助対象となるのは8つの経費です。
①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、⑤旅費、⑥新商品開発費、⑦借料、⑧委託・外注費
こちらは商工会議所地区か商工会地区かで問い合わせ先が異なります。
また、この補助金制度には「創業枠」があり、こちらは創業3年以内の事業者をメインに「地域の雇用や産業を支える小規模事業者の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とし、 持続的な経営に向けた経営計画に基づく販路開拓等の取組を支援」ためのものです。
最大200万円の補助を受けることができます。概要や問い合わせ先はこちら【小規模事業者持続化補助金 創業型】です。
◇IT導入補助金(中小企業庁)
こちらは中小企業・小規模事業者等を対象に、ITツールの導入にかかる金額を補助する制度です。さまざまな申請枠があります。

IT導入補助金の申請枠
(出所:IT導入補助金2025 事務局)
それぞれの補助額は、
通常枠:最大450万円
インボイス枠(インボイス対応類型):最大350万円
インボイス枠(電子取引類型):最大350万円
セキュリティ対策推進枠:最大150万円
複数者連携IT導入枠:最大3000万円
となっていますが、少額の補助申請もできます。
問い合わせ先はこちら【IT導入補助金2025 事務局】を参照してください。
◆補助金を有効に使うために
ここまでに紹介してきた補助金はそれぞれに目的があり、社会的な課題解決のためにあるものといえます。よって一時しのぎの経営資金を補助するものではなく、どのような合理化で今後生き残っていくかという視点が必要です。
もちろん事業計画の提出も求められます。
ただ、事業計画を立てたり見直したりすることは厳しい環境では欠かせないことですし、補助金の申請を機に経営の効率化やコスト構造などを確認してみましょう。なおいずれの補助金も予算期間を区切って募集していますので、現時点で募集が終了していても次の募集が始まることがあります。各サイトをこまめにチェックしてください。
清水 沙矢香(しみず・さやか)
2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアや経済誌に寄稿中。
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