人気店オーナーに聞く繁盛の秘訣 vol.1 南浦和「麺処 はら田」原田拓也さん
初心を忘れず挑戦をやめず、進化し続ける
ラーメン業界で“若き天才”と称される「麺処 ほん田」の本田裕樹氏に師事し、2019年5月1日に独立を果たした「麺処 はら田」の原田拓也さん。3周年を迎えた現在も行列の絶えない人気店として、ラーメンファンの心を掴んでいます。そこで今回は、繁盛店を切り盛りする原田さんに経営の秘訣をうかがいました。
―まずは原田さんのキャリアから教えていただけますでしょうか。
(原田さん)20歳のときにラーメン店に勤めていましたが、違う世界も見てみたいという思いから転職して建築業界で働くことにしました。けれど「やっぱりラーメンしかない」という思いが強くなって、26歳のときにラーメン業界に戻ってきました。そのときは、たった1歳年上というだけなのに結果を出していた「麺処 ほん田」の本田さんのもとで3年修業させてもらいました。
―有名店で修業されると原田さんご自身の味を表現するのが難しい気がしますが、その点はどうお考えですか?
(原田さん)東十条に「麺処 ほん田」があった頃の看板メニュー「醤油そば」が好きだったんですが、秋葉原に移転するのをきっかけに「醤油そば」は出さないことになって。僕は「醤油そば」の味を継承して、守っていきたいという思いでいたので、そこは気にならないですね。今も東十条の「醤油そば」を期待してくださっているお客さまもいると思うので、これからも大切にしていきたいです。もちろんそのままの味ではなく、自分流にアレンジをしてお出ししています。
―2019年5月のオープンだそうですが、当時を振り返って印象的なことはありますか?
(原田さん)最初は「暇だろうな」と思っていたんです。けれど、5月1日のオープンの日から50人くらいのお客さまが並んでくださって!たまたま両親が来ていたので急遽手伝ってもらって、初日をなんとかやり切りました。正直、驚きましたね。妻と2人でこじんまりとやっていくつもりだったので。本田さんの店で修業させてもらったおかげだと思いますし、夕方のニュース番組や新聞に取り上げてもらえたのも運が良かったです。
―それはすごい!ということは、集客で苦労されたことはないわけですね。
(原田さん)ありがたいことに。それでも、オープン当初からTwitterでの情報発信は続けています。「今日はチャーシューを仕込みました」「昆布水を改良しました」「◯◯が完売しました」など普段の店の状況や臨時休業のお知らせ、求人にも使っています。大変な仕事だし、なかなか来てくれないんですけどね(笑)
▲特製 醤油そば 1,250円
―フォロワーさんはどれくらいですか? お客さまの反応を感じられることもありますか?
(原田さん)フォロワーさんは4,900人くらい。Twitterで紹介するのとしないとでは売れ行きが違うんですよ。それに、「見たよ」と声をかけてくださる常連さんもいて励みになります。SNSは僕ら飲食店側からするとコストをかけずにPRができるので、絶対にやるべきだと思いますね。ポイントは毎日投稿すること。必ず誰かが見てくれているので。
―SNSは欠かせないツールなんですね。その他にも、繁盛店であり続けるために努力をされていると思います。心がけていることはありますか?
(原田さん)本田さんの教えを守って、誠実にラーメン作りをすることですかね。例えば、化学調味料を使わないとか全国の良い食材を使うとか……。この店をもっと有名にして、本田さんに恩返しをしたいし、独立を応援してくれた妻や両親にも感謝しています。飲食店は競争が激しいので、自分がおいしいと信じる味をブラさないことも大事かなと思います。そういう軸を持つために、自信と経験を積み重ねていくイメージですかね。
▲淡麗昆布水つけめん 1,000円
―具体的に取り組まれていることもありますか?
(原田さん)常連さんが飽きないように毎週木曜日は限定メニューをお出ししています。例えば、二郎系とか、伊勢海老やカニなど高級食材を使ったものとか新しいチャレンジもしています。その過程で定番メニューを改良するためのヒントが見つかることもあるし、例えば2号店を出すことがあれば、その店のメニューにできるかもしれない。「今のままで良い」となった瞬間に店は廃れてしまうので、日々新しいことに挑戦しなければならないと思っています。だからこそ、初心を忘れてはいけないし、僕はラーメンしかできないのでこの店がなくなったら無職になるという覚悟は持っています。
―現状に満足せず、そんな努力をされているんですね。ところで、お店のある「南浦和」は、原田さんにとってゆかりのある場所なんですか? 物件探しの際に重視されたポイントを教えてください。
(原田さん)今は閉店していますが「麺処 ほん田」の大宮店の店長を任されていたこともあり、さいたま市で探していました。本当は大宮が良かったんですが、最初に見たのがここで。一発で決めました(笑)自己資金でのスタートだったので、初期費用を抑えるために居抜きは必須条件でした。目の前の通りは人通りが少なそうで不安もありましたが……、「やりたい!」という気持ちが勝りました。3年経った今は、「もうちょっと広ければ」とか「こんなレイアウトにしたい」という思いも出てきましたが、最初からすべての理想を叶えた場所を見つけるのは難しいと思うので、それは移転とか2号店を出すときですかね。
―今は経理関係など裏方仕事もご自身でされているんですか?
(原田さん)そうですね。でも、お金の話は苦手だし面倒なことも多い。わからないことも多いので、本田さんや税理士さんに相談しながらやっています。食材の支払いは、かなり高額になるので震える思いです(笑)
―最後に、これからお店を出す人にメッセージをお願いします。
(原田さん)この仕事は厳しいし、同じことの繰り返し。けれど、夢があるし、現実的な生活の面でも僕自身は独立して良かったと思っています。もしラーメン店で独立を目指している方がいたら、うちで経験を積んでもらうのも良いなと思っています。
〈原田さんの1日の流れ〉
10:00 出勤。仕込み・開店準備
11:30〜14:30 昼の営業
14:30〜18:30 休憩、仕込み(17時頃スープの火を止め、翌日まで寝かせる)
18:30〜21:30 夜の営業
23:00 片付け・翌日の準備。退店
休日には情報収集や研究のため、「麺処 ほん田」をはじめ、気になるラーメン店を食べ歩き。
店舗概要
店名 麺処 はら田
住所 埼玉県さいたま市南区南浦和2-28-13
TEL なし
営業時間 11:30〜14:30、18:30〜21:30、日曜11:30〜16:00 ※売り切れ次第終了
定休日 火曜
オープン日 2019年5月1日
食べログ https://tabelog.com/saitama/A1101/A110102/11049834/
Twitter @niji_hara
取材を終えて
繁盛店インタビューシリーズの1回目となる今回の取材。『商売繁盛のヒント』をお届けする本企画に相応しい繁盛店のお手本のようなお店でした。「麺処 はら田」がここまでの繁盛店になった要因はズバリ「家族一丸」であろう。独立開業にはたくさんの困難があるが、それを乗り越えるにはやはり家族の理解や協力が必要だ。また、原田さんはお世話になった恩師との関係を大切にしている。お店が繁盛するには色々な条件が必要だ。しかし、何より大切なことは一番身近な応援者である家族や恩師との良好な関係なのかもしれない。(レスタ編集部:川瀬亮太)
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