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最大1000万円の「外食産業成長支援補助金」 4月17日から応募可能に

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農林水産省は中小・中堅規模の飲食店を支援するための「外食産業成長支援補助金」を設置し、今月17日から公募を開始する。「外食産業の事業成長に向けた前向きな取り組み等を支援する」ことが目的で、売上について一定の条件を満たせば応募することができる。業態転換や商品の提供方法を変える取り組みにかかる費用に対する補助で、補助率は最大2分の1、金額は100万円〜1000万円の範囲である。
 

補助の対象

まず、補助の対象になるのは以下の条件を満たす中小・中堅規模の飲食店である。
 
売上については、
・2021年度から2022年度の売上伸長率が115%以下
・2021年度から2022年度の売上伸長率が115%を超えているものの、2019年度と比較して売上伸長率が100%を下回っている場合は対象
という条件がある。
 
では、対象となる経費についてみていこう。大きく分けて2つある。
 

商品・サービスの内容を変える

このような事例が対象になる。
 
・居酒屋から焼肉店に転換する
・テイクアウト・デリバリー用のメニューを開発する
・新しい食材とメニューで新たな顧客を獲得する
・飲料の計量自販機を設置し、お客様自身で受け取る仕組みをつくる
・お客様のスマホを活用した、多言語セルフオーダーシステムを導入する  など
 
上の事例を見ると、「経営の合理化」に関する費用を補助するという雰囲気がある。また、「多言語セルフサービス」が事例に挙げられているが、野村総研によると*1、2023年のインバウンド需要はコロナ前を上回ると予想されている。さらに、訪日外国人一人当たりの消費額はコロナ前より増加しているという。こうしたインバウンド需要回復を見込んだ設備の導入も、補助金のひとつの使い道になるだろう。
 
*1 「2023年のインバウンド需要は4.96兆円と早くもコロナ前を上回る予想」野村総研
 

商品・サービスの提供方法を変える

事例としては以下のようなものである。
 
・イートインからテイクアウトを拡大するため販売窓口を設置する
・キッチンカーを改装し、店舗外での販売を強化する
・店舗での人気商品をECサイトで全国に販売する
・半加工品の冷凍保存による、調理時間の短縮と業務効率化を図る   など
 
いずれも「販路の拡大」にあたるだろう。
 

具体的にはどのような経費が対象になる?補助率は?

そして、補助の対象となるのは以下の経費である。
 
・建築費
・機械装置、システム構築費
・技術導入費
・運搬費
・広告宣伝、販売促進費
・研修費
・その他の経費(=本事業を行うために必要と認められる、上記に含まれない経費)
・委託費(=本事業を遂行する上で、特殊な知識・技術等を必要とする場合に、事業の一部を、能力を有する第三者に委託する経費 など)
 
そして補助率は2分の1以内、補助金は上限1000万円以下、下限100万円以上となっている。また、応募内容を審査したうえで事業者を採択するため、すべての応募者が補助対象になるわけではない点に注意が必要だ。「外食産業の事業成長に向けた前向きな取り組み等を支援する」という基本路線を意識して応募したい。なお、応募時点で既に発注したり購入した設備は補助の対象とはならない。
 
応募期間は2023年4月17日〜5月31日17時まで。ネットでの申請となる。詳細は今後、日本能率協会コンサルティングのホームページで公表される。WEB上でのQ&Aセミナーも今後開催される予定で、いずれも下のリンク先をこまめにチェックしておきたい。
 
◆外食産業事業成長支援補助金 事務局:https://jmac-foods.com/adopted/1346/
 
また、問い合わせ先は以下。
◆株式会社日本能率協会コンサルティング R4補正 外食産業事業成長支援補助金 事務局
ナビダイヤル:0570-067766 (受付時間:平日 9:00~17:00)
mail: info@jmac-r4h-eat.jp
 

「ゼロゼロ融資」返済に利用できる補助金も

また飲食店にとって課題になりつつあるのが、コロナ禍で実施された「ゼロゼロ融資」の返済である。中小企業庁は民間ゼロゼロ融資の返済開始時期は2023年7月〜2024年4月に集中すると見込んでいるが、中には思ったよりも客の戻りが鈍く、この返済が重荷になる事業者もあることだろう。
 
帝国データバンクはゼロゼロ融資の返済について、「長引くコロナ禍で業績回復が遅れている中小・零細企業にとって、コロナ融資の返済負担が大きな重荷となっていくなか、収益力が戻らず返済原資の確保ができない企業の「あきらめ」による倒産増が懸念される」と分析している*2。
 
◆関連記事:「ゼロゼロ融資」返済が本格化 飲食店が使える新しい補助制度はあるか
 
そこで中小企業庁は借換時の信用保証料を大幅に引き下げる「コロナ借換保証」を今年に入って実施している。保証限度額は1億円まで。主な要件は下のようになっている。
 

(出所:「民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。」中小企業庁)
 
余裕を持った経営計画を立てるためには、この制度の利用も併せて考えたい。
 
*2 「コロナ融資後倒産」動向調査(2022年)」PR TIMES
 

雇用調整助成金は要件緩和

また、通常の雇用調整助成金は引き続き利用できる。今年4月1日以降の扱いでは、短時間休業の要件が緩和されており、一部の労働者を対象とした短時間休業も助成対象になる。詳しくは厚生労働省のリーフレットを参照してほしい。
 
◆令和5年4月1日以降の雇用調整助成金について:https://www.mhlw.go.jp/content/001082205.pdf
 
飲食店の営業についての規制はほぼなくなったものの、多額の債務が残っている事業者は少なくないことだろう。先行きに対して過度の期待を持たず、受けられる助成は可能な限り検討したい。
 

 

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