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「ゼロゼロ融資」返済が本格化 飲食店が使える新しい補助制度はあるか

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食料品・人件費の値上がりだけでなく、飲食店は今年、もうひとつの正念場を迎える。コロナ禍で実施された実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」が終わり、これからは返済が本格化する。ゼロゼロ融資は事業主の倒産を防止する有効な対策だったが、一方で事業主の負債を膨らませてしまっている。今後、事業主にはどんな壁が待っているのか、経営を支える補助制度はあるかについて紹介する。
 

コロナ融資後に相次ぐ倒産

帝国データバンクによると、ゼロゼロ融資を受けた企業の倒産件数は急増している。
 

(出所: 「『コロナ融資後倒産』動向調査(2022年)」帝国データバンク)
 
特に、ゼロゼロ融資を受けた企業の倒産件数は、前の年の2倍以上にのぼっている。
 

(出所: 「『コロナ融資後倒産』動向調査(2022年)」帝国データバンク)
 
背景にあるのは、ゼロゼロ融資の返済が本格化したことだ。帝国データバンクによると、ゼロゼロ融資の返済を2022年12月末までに開始したという企業が多い。
 

(出所: 「『コロナ融資後倒産』動向調査(2022年)」帝国データバンク)
 
しかし、借入の割には収益が上がらず、資金がないまま返済時期を迎えてしまい「あきらめ」による倒産が発生しているという。そして、これから返済を迎えるという事業主も多いことだろう。
 

食料品価格、人件費はどうなる?

また、ゼロゼロ融資の返済と同時に気になるのが、食料品や人件費がどこまで値上がりを続けるかだ。東京商工リサーチによると食料品の値上げは2月がピークだったものの、4月にも、もう一度増加する見通しだ。
 

(出所: 「飲食料品の値上げ、1万5,000品目超に 「たまご不足」理由が6社 主要食品メーカー200社の『価格改定・値上げ』調査」東京商工リサーチ)
 
4月分については49社・4,736品の価格改定を予定している。こうした食品メーカーは今後増加し、単月での品目数を更新する可能性もあるという。鳥インフルエンザによる卵の高騰もいつ収束するか見通しは立たず、飲食店にとっては大きなダメージが続きそうだ。
 
また、人件費もさらに上昇する見通しだ。中小企業研究所によると、2023年度、2024年度は3%程度の賃金引き上げが見込まれている*1。全国加重平均で時給1000円超えへの対策が必要だ。実際、政府も1000円以上となることを目指している。人件費の上昇も、当面続くことになる。
 
*1 「今後の最低賃金の引上げ予測」中小企業研究所
 

「コロナ借換保証」始まる

こうした中で、中小企業庁が「民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)」を今年に入って開始している。
 
中小企業庁は民間ゼロゼロ融資の返済開始時期は2023年7月以降に集中すると見込んでいる。そこで、民間ゼロゼロ融資からの借換に加え、他の保証付融資からの借換を希望する場合は、借入時の信用保証料を大幅に引き下げるというものだ。具体的には、保証料の限度額は1億円、保証料の事業者負担は0.2%などが設定されている。
 

(出所: 「民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。」中小企業庁)
 
返済負担の軽減だけでなく、新たな資金需要にも対応する考えだ。この制度を利用するには、一定の要件を満たす必要があり、売上または利益率が5%以上減少したことなどが要件になる。取り扱いは2024年4月31日までを予定している。詳しくは、中小企業庁のホームページを参考にしたい。
 

利益率改善のため、経営指針の見直しを

返済に苦しむ事業主にとっては、中小企業庁のこの新しい制度は救いになるだろう。
 
しかし、注意しなければならないのは、保証料が軽減されるというメリットはあっても、負債そのものが減るわけではないという点だ。これもまた一時的な措置にすぎず、負債を膨らませてしまうという「副作用」も存在する。
 
いずれにせよ、収益や利益率を上げる方法を模索し、基礎体力を強化する以外の生き残り手段はないと考えるべきだろう。食料品や人件費の値上がりは避けられない。むしろ今後さらに進んでいくし、雇用調整助成金の特例制度も今年3月末に終了してしまう。厚生労働省は今後については検討中としているが、省令の改正などが必要であるため、過度な期待は持たない方が良いだろう。
 
まったく新しい時代が訪れたと捉え、利益率などを見直し「儲かる」体質を作っていかなければならないのが現実だ。
 

 

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