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学生アルバイトの採用〜定着術|個人店の飲食店が知っておくべき5つのポイント

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飲食店における人手不足は、深刻な社会問題です。特に非正社員の不足が顕著で、帝国データバンクの調査によると、飲食店における非正社員の人手不足は60.7%と一時期よりは緩和しているものの、全業種の中で最も高い水準となっています。
 
このような人手不足が続く飲食業界において、学生アルバイトは非常に貴重な労働力です。とりわけ個人経営や小規模事業者の飲食店では、限られた人員で日々の業務をまわしているため、学生スタッフの存在はお店の運営を左右するほど大きなものです。しかし、学生アルバイトの採用活動は「応募はあっても定着しない」「すぐに辞めてしまう」「学業との両立でシフトが組みにくい」といった課題も少なくありません。
 
そこで本記事では、タイミーなどの単発系サービスを利用せずに、継続的に働いてもらうことを目的とした、学生アルバイトの募集〜採用する際に注意すべきポイントを5つに絞ってご紹介します。
 

◆1. 学生アルバイトのライフスタイルを理解する

学生アルバイトは、学業・サークル活動・就職活動など、多忙な日常をやりくりしながら働いています。飲食店側が「いつでもシフトに入れる人を…」といったような一方的な条件を提示すると、応募をためらわれる可能性が高くなります。
 
まずは、週何日か、どの時間帯で働けるか、特に試験期間などシフトに入れない時期や、逆に沢山働きたい長期休暇(春休み・夏休みなど)について、事前にスケジュールを共有してもらいましょう。こうした情報を踏まえたうえで、柔軟で理解のある勤務体制を整えることが大切です。
 
採用活動のスタートは、学生にとって「学業と両立しやすく、働きやすい店」であること。この視点が、良い人材との出会いにつながります。
 

◆2. 募集時の情報・条件開示は細かく、正確に

求人時に曖昧な表現や誇張があると、採用後に「思っていたのと違う」というミスマッチが生じ、早期離職につながります。特に個人経営の飲食店では、大手チェーンと異なり業務が分業化されていないため、仕事内容が幅広くなる傾向があります。
 
そのため、職種の詳細はもちろん、時給・勤務時間・まかないの有無・服装規定・交通費の支給など、諸条件を明確に記載しましょう。さらに、「アットホームな職場」「やりがいのある仕事」など抽象的な表現ではなく、「30代のオーナー夫婦で経営しているカフェ」「ホール接客業務以外にも、簡単な料理の盛り付け作業有り」「イタリアンシェフが作る野菜たっぷりのまかない」など、具体的な情報を載せることで、応募者が職場で働くイメージを持ちやすくなります。信頼される求人募集には、誠実で詳細な情報が欠かせません。
 

◆3. 面接では人柄や責任感を見極める

学生アルバイトの中には、「とりあえず働いてから続けるか決めよう」「友達と一緒に働きたいから」「居酒屋よりカフェの仕事はラクそうだから」という軽い動機で応募する人も少なくありません。そのため、面接ではスキルや経験以上に、「どれだけ真面目に働く意志があるか」「お店の方針や店主の価値観に合う人物か」など、人柄や基本的コミュニケーション力、責任感を重視することが重要です。
 
たとえば以下のような質問を通して見極めましょう。
・学校生活以外で打ち込んでいることは?
・(数ある業種から)飲食店を選んだ理由や志望動機は?
・学生生活で苦手なことや克服したいことはある?
 
こうした質問は、相手の本音や人となりを知る手がかりになります。飲食業は対人関係が多く、元気な挨拶や素直さも大きな武器になります。面接は、その第一印象を確認する貴重な機会です。
 

◆4. 業務マニュアルやトレーニングの仕組みづくり

個人店では、経験則や感覚値で教育する文化が根強く残っており、学生アルバイトにはそのスタイルが合わない場合もあります。最初の教育段階でつまずいてしまうと、その後の定着にも悪影響を及ぼします。
 
そこで有効なのが、業務マニュアルの作成です。紙資料の作成が難しいと感じる場合は、オーダーの取り方、ドリンクの作り方、レジの操作方法などをスマホで動画撮影し、共有する方法がおすすめです。動画マニュアルなら、忙しい時間帯でもタブレットなどを使って自学習が可能になります。
 
さらに、学生スタッフが質問しやすい雰囲気づくりも重要です。「わからないことがあれば、いつでも聞いていいよ!」と伝えるだけで、心理的ハードルを下げる効果があります。教育体制の整備は、離職率の低下にも直結します。
 

◆5. 定着のカギは「関係性の構築」にあり

学生アルバイトの定着には、「このお店で働くのが楽しい」「無理なく安心して働ける」と思ってもらうことが何より重要です。スキルアップ以上に、「自分を気にかけてくれている」「自分の頑張りや、成長を見守ってくれている」と感じることが、長期勤務につながります。
 
例えば、シフト希望を尊重することや、テスト期間には「頑張ってね!」と一声かけるなど、日々のちょっとしたコミュニケーションが信頼関係を深めます。学生にとってアルバイトは、初めて社会と関わる場でもあります。店主や先輩スタッフとの関係から学ぶことも多いため、「このお店で働けてよかった!」と思える勤務体験を提供することが大切です。
 
そうした職場は、自然と口コミや学生同士の紹介も広がり、次の採用活動にも良い影響を与えるでしょう。
 

◆まとめ

飲食店における学生アルバイトスタッフは、単なる労働力ではなく、お店に新しい風を吹き込む大切な存在です。個人経営の飲食店が学生アルバイトを募集・採用する際は、「無理なく働ける環境」と「信頼関係のある職場づくり」の両立を目指しましょう。
 
最近では、タイミーなどの単発バイトが増えていますが、個人店にとっては教育コストの増加や、サービスの質の不安定さといったデメリットも伴います。一方で、「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」として長期アルバイトの経験が就職活動で評価されるケースも増えており、長期アルバイトとして経験エピソードがある学生は就活市場でも再評価されつつあることも抑えておきましょう。
 
本記事で紹介した5つのポイントを参考に、学生アルバイトと良好な関係を築き、戦力として活躍してもらえる職場を目指してみてください。
 
飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 

 

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