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「内装制限」とは?飲食店の内装工事に関係する建築基準法と消防法について解説

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飲食店を開業する際に行う内装工事に法律上の制限などはあるのでしょうか。出店を考えている多くの方は自由に内装工事ができるものと思っているかと思います。意外と知られていないのですが、飲食店などの特殊建築物に該当する建築物には、「内装制限」というものがあり、建築基準法と消防法の2つの法律で制限がされています。この「内装制限」を無視して、内装工事をしてしまうと、初めからやり直さなければならなくなることも考えられます。ここでは、飲食店の内装工事を行う際に注意すべき建築基準法および消防法における「内装制限」と緩和策、違反した場合の罰則、飲食店の居抜き店舗における内装の注意点など内装工事前までに知っておくべきことについて解説をしていきます。
 


 

◆「内装制限」とは?

「内装制限」とは、建物の火災の被害を最小限にして人命を守るためのものです。「内装制限」に関する法律には建築基準法消防法の2つがあり、どちらの規定も満たさなければなりません。対象となる業種は接客業務を行うもので建物の種類ごとに基準が細かく分類されています。国土交通省:建築基準法制度概要集によると建築基準法では、頻繁な出火の防止を図るとともに、初期火災の成長を遅延させ、火災が拡大しても有害な煙・ガスの発生を少なくすることで在館者の避難安全の確保を図るため、壁や天井に用いる内装材料を制限していると説明しています。建築基準法の「内装制限」は避難にフォーカスしているといってよいでしょう。一方で消防法では、火災の予防、初期消火、消火、人命救助を目的として総合的に規制をしています。
 

◆建築基準法における「内装制限」

建築基準法における「内装制限」とは、壁や天井に使用する仕上げ材を燃えにくい材料にしなければならないことです。いざ火災が起こった際に延焼が拡大して逃げ遅れることのないように壁や天井(床については制限がありません。)の仕上げ材を不燃材料、準不燃材料、難燃材料にすることが建築基準法の規定で義務付けられています。飲食店の「内装制限」に該当する可能性があるものについては建築基準法施行令第128条の3の2、第128条の4、第129条及び第112条、第128条の3等の内装制限に関する部分の要約一覧表を参考にしてください。その他、後述する都市計画法など地方自治体ごとに違いがあることがあるのであわせて確認をする必要があります。
 

◆消防法における「内装制限」

飲食店の内装工事を行う場合には、建築基準法だけでなく、消防法における「内装制限」 についても注意をしなければなりません。この消防法は、総務省消防庁が管轄しており、火災を防止するための設備や建材が決められています。消防法施行令第7条では、消防の用に供する設備は、消火設備、警報設備、避難設備であるとされています。
 
・消火設備
消火設備とは、火災が起こった際、水や消火剤を使用して消火に努める機具・設備の総称で屋内消火栓設備、屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、延焼防止設備などがあります。
・警報設備
警報設備とは、火災などが起きたことを感知して屋内外に警報を発し通報するために必要な報知・警報設備の総称で消防法の規定によって多くの建物に設置および点検が義務付けられているものになります。自動火災報知設備 、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、非常警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備などがあります。
・避難設備
避難設備とは、火災などの災害が起きた際に避難のために使われる機械器具や設備のことを言います。避難設備は大きく分けて避難器具と誘導灯・標識の2つがあります。避難器具は、階段などの避難経路で避難できない場合に用いられる避難ロープ、避難はしごなどの器具で、誘導灯・標識は、非常口の位置や避難の方向をわかりやすくするためのもので、照明がある誘導灯と照明がない誘導標識があります。
 
「内装制限」について建築基準法と消防法では異なる点があります。建築基準法では、床面からの高さが1.2メートル以上の天井や壁が「内装制限」の対象となり、内装の仕上げ材に防火材料を使用しなければならないのですが、消防法による規定では、床面からの高さが1.2メートル以下であっても防火材料を使用しなければならないとしています。つまり消防法では壁全面が「内装制限」の対象となる点に注意が必要です。その他、内装について、消防法第8条の3では、使用されるカーテンなどの防火対象物品に消防法の基準以上の防炎性能を有するものを使用しなければならないと規定しています。内装をDIYで作る場合は特に注意が必要です。
 
上記に加えて飲食店を開業する際は、消防法で義務付けられた消防設備の設置や以下に列挙している届出をしなければなりません。なお、飲食店の収容人数や広さによってこれらは変わってくることがあるので開業する飲食店の所在地を管轄する消防署に事前に相談、確認をするようにしてください。
 
・防火管理責任者選任届出書
・防火対象物使用開始届出書
・防火対象物工事等計画届出書
・消防用設備等設置届出書
・消防計画の届出
 

◆その他飲食店の内装工事で注意すべき法律など

建築基準法や消防法以外に注意しなければならないものとして都市計画法、意匠権があります。
 

◇都市計画法

都市計画法についても注意が必要です。都市計画法とは、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とすると都市計画法第1条に規定しています。要は、街づくりのルールを定めているのですが、これに基づいて景観条例(美しい町並み、良好な都市景観を形成し保全するため、地方自治体が制定している条例で地域によって内容は異なります。)が定められ景観保護のため、外観の色や看板のサイズが制限を受けることがあります。都市計画法は地方自治体のホームページで確認できるので適切に対応していく必要があります。
 

◇意匠権

意匠とは簡単に言えばデザインのことで意匠権とは意匠法という法律で規定された産業財産権の一種です。登録された意匠はこれにより保護されるため、同一または類似している意匠があった場合、その第三者の意匠を排除することが可能となります。また、この意匠法ですが、令和2年4月1日より企業のブランド価値を守るために意匠法が改正されました。近年は繁盛店の内装などを模倣するケースが後を絶たないことが背景としてあるのではないのでしょうか。保護される対象として、建築物、画像、内装が追加され飲食店にとって意匠は無視できないものとなったと考えられます。
 

◆「内装制限」に設けられている緩和策

ここまで様々な「内装制限」を説明してきましたが、すべての「内装制限」を遵守すると燃えやすい内装材を使用することが制限され、木材を活用することができないなどといったことが考えられ、理想の内装に仕上げることが困難になってしまいます。そんなとき確認をしたいのが「内装制限」の緩和条件です。ここでは代表的な3つの緩和条件について説明をしていきます。なお、緩和条件はここで説明する以外にもいくつもあるので専門の内装会社と相談して開業する飲食店に適した緩和条件を採用するようにしてください。
 

◇天井の仕上げ材を(準)不燃材料にする。

火は下から天井へと延焼をしていくので、この天井の仕上げ材を不燃材料または準不燃材料で仕上げれば壁や造作に木材を使用することが可能になります。ただし、これだけでは安全性が不十分のため、壁に使用する木材などの材料の表面に不燃性を有する壁張り下地用のパテを下塗りしなくてはならない条件があるので注意をしてください。
 

◇天井高を6メートル以上とする。

床から天井までの高さ(天井高)を6メートル以上とすると「内装制限」の対象外になります。天井高が確保されていれば、床付近については安全とみなされるため、排煙窓などの排煙設備がなくても問題ないとされています。
 

◇設備を設置して「内装制限」の対象外にする。

設備の設置で最も代表的なものが自動で消火を行うスプリンクラーです。その他、水噴霧消火設備、泡消火設備などの消火設備を設置すると「内装制限」の対象外になります。また、煙を外に排出する排煙設備を設置した場合も「内装制限」の対象外になります。
 

◆飲食店の「内装制限」にかかわる材料

「内装制限」を遵守するために欠かせない材料として不燃材料、準不燃材料、難燃材料の3つがあります。それぞれの材料には非燃焼性、非損傷性、非発煙性の特性があり、耐久時間によって分かれています。飲食店を開業する際の内装工事でこれらの3つの材料の特性を知っておくことで適切に対応することができます。
 

◇不燃材料

防火に最も強いのが不燃材料です。不燃材料は、20分加熱しても延焼しない(損傷や変形をしない)、有害な煙やガスなどが発生しないといった基準をクリアしています。不燃材料の代表的なものとして、コンクリート、モルタル、アルミニウム、12mm以上の石膏ボード、ロックウール、グラスウールがあります。
 

◇準不燃材料

準不燃材料は、10分加熱しても延焼しない(損傷や変形をしない)、有害な煙やガスなどが発生しないといった基準をクリアしています。準不燃材料の代表的なものとして、9mm以上の石膏ボード、15mm以上の木毛セメント板、6mm以上の硬質木片セメント板、セルローズファイバーがあります。
 

◇難燃材料

難燃材料は、5分加熱しても延焼しない(損傷や変形をしない)、有害な煙やガスなどが発生しないといったものになります。上記の不燃材料、準不燃材料と比較するともっとも火に弱く耐久時間が短い材料になります。難燃材料の代表的なものとして、7mm以上の石膏ボード、5.5mm以上の難燃合板があります。
 

◆「内装制限」違反の罰則

火災が発生してから熱が蓄積されると、その熱により急激に温度が上昇し、一気に燃え上がるフラッシュオーバーという現象が起こり全面火災となります。「内装制限」は、内装材への着火を遅らせることでフラッシュオーバーを抑制し、避難時間を確保するという役割を果たします。この「内装制限」の基準を守っていない飲食店は、建築基準法の規定に違反しているということになり、個人であれば懲役3年以下または罰金300万円以下、法人であれば1億円以下の罰金となる可能性があります。また、消防法に違反して営業をしていたことが発覚し、消防長等から消防法上の措置命令を受けたにもかかわらずそれに従わない場合、3年以下の懲役または300万円以下、法人であれば3000万以下の罰金が科せられる可能性があるので建築基準法および消防法の規定は必ず遵守するようにしてください。
 

◆飲食店の居抜き店舗における内装の注意点

飲食店の居抜き店舗をそのまま引き継いで営業する場合、これまで問題なく営業してきたものと考え、細かなチェックを怠りがちです。実際は、「内装制限」を全く気にせずに内装工事をしてしまった、消防の届出を怠ったまま営業をしていたなどといったことも考えられます。これは居抜き店舗の盲点なので事前に消防署に相談をする、専門の内装会社に現地調査を依頼して問題を洗い出し必要な是正をするといった対応をするようにしてください。
 

◆おわりに

いかがでしたでしょうか。ここまで飲食店における「内装制限」に関することについて解説してきました。「内装制限」を無視して内装工事をしてしまうと罰せられてしまうことも考えられます。建築基準法と消防法、それぞれ目的の異なる法律となっています。人命にかかわることにもなるので、それらを理解した上で安全基準を満たした内装にすることは非常に重要なことだと言えます。

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飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 

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