個人事業主として飲食店を開業したい!開業方法や申請手続き・必要な資格を含めて解説
個人事業主として飲食店を開業したいと考えているものの、開業方法や申請手続きなどの知識がなく、不安を感じている人もいるでしょう。この記事では、飲食店の開業方法や申請手続きなどとともに、開業前に知っておきたい基本的な知識を解説します。 飲食店の開業を目指している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
◆飲食店の開業時は個人事業主の方がよい?
初めて飲食店を開業するにあたり、個人事業主と法人のどちらで開業すべきか悩む人も少なくありません。開業したばかりのうちは、売上が伸び悩んで安定しにくい可能性や、資金面の課題などがあるためです。
個人事業主と法人のどちらを選ぶかによって、税金の額や税務署に対する手続きなども異なります。日本の所得税は所得に応じて税率が決められているため、所得によっては個人事業主と法人で、負担すべき税額に大きな差が出てしまう可能性もあります。
以下では、飲食店の開業における個人事業主と法人の違いについて解説します。それぞれの特徴についても触れるため、参考にしてください。
◇個人事業主の場合
個人事業主になるために必要な手続きは、税務署に開業届を提出するだけです。手続きが比較的容易で、法人よりも準備から開業までの時間をあまり要しません。開業にあたって融資を希望する場合も、比較的スムーズに申請が可能です。また、個人事業主は所得が低いと税額も少なくなります。個人事業主は、1人または家族などで小規模の飲食店を開業するケースにおすすめです。
◇法人の場合
法人として飲食店を開業するには、さまざまな手続きが必要です。複数の公的機関から書類を集めて提出しなければなりません。開業までに設立費用や時間がかかるため、早めに準備を始める必要があります。また、法人を運営するには、複雑な会計や税金の申告などの対応も必須です。共同契約者同士で開業する場合は、個人事業主ではなく法人を選ぶとよいでしょう。
◆個人事業主として飲食店開業をするメリット
個人事業主として飲食店を開業すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下でくわしく解説します。
◇起業の手続きが簡単にできる
個人事業主として飲食店を開業する場合、税務署に開業届を提出するだけで手続きが完了します。開業届は、最寄りの税務署や国税庁のホームページからダウンロード可能です。ビジネスの初心者でも、自分で簡単に手続きを行えます。
また、確定申告も自分で対応すれば、余計な費用はかかりません。経理が手間に感じるなら、コストはかかりますが、税理士に依頼して簡単に済ませる方法もあります。手続きの手軽さを考慮すれば、法人ではなく個人事業主として開業したほうが、スムーズにいく可能性が高いでしょう。
◇低所得のうちは税金の負担が少ない
所得が低いうちは、個人事業主のほうが税金の負担が少なく済みます。飲食店を開業したばかりのうちは、売上が安定しにくいため、支出もなるべく減らしたいところです。個人事業主の所得税の税率は、低所得なら法人よりも低くなります。収入があっても経費の負担が多く、赤字だった場合、所得税はかかりません。低所得のうちは、まずは法人ではなく個人事業主として開業したほうが、余計な税金を負担するリスクを軽減できます。
◇新規店舗にかかる個人住民税の均等割りが安い
個人住民税は、標準税率と均等割りによって計算されます。均等割りは、法人よりも個人事業主のほうが割安です。たとえば、令和3年の東京都の個人住民税の均等割りは、年5,000円(都道府県分1,500円、市区町村分3,500円)でした。一方、資本金1,000万円以下の法人の均等割りは、 年70,000円(都道府県分20,000円、市区町村分50,000円)にものぼります。店舗を増やせば個人住民税も増えるため、負担がより大きくなります。
◆飲食店を開業するまでの流れ
ここでは、飲食店を開業するまでの流れについて解説します。
◇開業資金を調達する
飲食店を開業するには、物件、内装工事、テーブル・椅子などの備品、運用などさまざまな用途に費用がかかります。飲食店の開業資金の目安は、1,000~1,500万円程度です。規模にもよりますが、見込み年商の50%程度は必要だといわれています。用意する店舗の条件によっても、必要な開業資金の額は変化するでしょう。
開業資金は、貯金をはじめとする自己資金を利用する場合もあります。自己資金だけで足りず、借り入れで資金調達するパターンも珍しくありません。借入先としては、日本政策金融公庫が一般的です。日本政策金融公庫は、飲食店を開業する際の融資も積極的に行っています。融資を受けるためには、事業計画書を作成して面接に臨むことが不可欠です。
◇開業に役立つ資格をとる
飲食店を開業するには、少なくとも食品衛生責任者と防災管理者の資格が必要です。勘違いされがちですが、調理師免許は必須ではなく、取得しなくても飲食店を開業できます。ここでは、この飲食店を開業するうえで必ず必要となる、食品衛生責任者と防災管理者の資格について解説します。
・食品衛生責任者
食品衛生責任者とは、飲食店の衛生管理に関する責任者です。飲食店の各店舗に必ず1人置くことが、義務とされています。資格を取得するには、各都道府県の食品衛生協会の講習を受け、選択式のテストに合格しなければなりません。
・防火管理者
防火管理者は、店舗の防火管理に関する責任者です。 飲食店の場合、従業員も含めて30人以上収容できる店舗については、防火管理者が必ず必要となっています。防火管理者になるには、開業する店舗の地域を管轄している消防署で、講習を受ける必要があります。費用は6,000~8,000円程度です。
◇開業に必要な書類を提出する
飲食店を開業するには税務署への開業届の提出に加え、保健所、消防署、警察署などへの届出も必要です。以下では、開業届、飲食店営業許可申請、防火管理者選任届、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書、風俗営業許可申請の提出について解説します。
・開業届
すでに触れているとおり、開業届の提出先は税務署です。確定申告について青色申告を予定しているなら、開業届とともに「所得税の青色申告承認申請書」を提出しましょう。書類は、国税庁のホームページからダウンロードできます。
・飲食店営業許可申請
飲食店営業許可申請は、保健所に対して行います。飲食店で提供する料理の内容によって営業許可が異なるため、注意が必要です。飲食店営業許可申請は、店舗が完成する10日前に行いましょう。
・防火管理者選任届
店舗の収容人数が30人以上の場合、防火管理者選任届を消防署に提出しましょう。店舗の延べ面積が300平方メートル未満なら「乙種防火管理者」、それ以上なら「甲種防火管理者」となります。
・深夜酒類提供飲食店営業開始届出書・風俗営業許可申請
店舗で深夜12時以降にお酒を提供するなら、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書の提出が必要です。さらに、来店客に接待行為をする場合は、風俗営業許可申請も求められます。書類の提出先は警察署です。
◆個人事業主として開業後の法人化も可能
個人事業主で開業した場合、後から法人化する方法もあります。利益が多く出るようになれば、個人事業主よりも法人のほうが税金を安く抑えることが可能です。飲食店を他者との運営に切り替えたり、家族に給与を支払ったりするなど、体制を変更するタイミングで法人化を検討しましょう。
ただし、個人事業主が法人化する際は、最初から法人として開業するケースよりも、手続きや準備が複雑です。そのため、専門家への相談をおすすめします。
◆まとめ
飲食店を開業する場合、まずは個人事業主を選択するとさまざまなメリットがあります。事業が軌道に乗ってきたところで法人化を検討すれば、税金の負担も最小限に抑えられます。個人事業主と法人のどちらを選ぶにせよ、飲食店を開業するにはさまざまな準備が必要です。できるだけ早めに計画し、準備を開始することをおすすめします。
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