NEW 開業ノウハウ
飲食店営業許可証の必要書類と取得の流れ|記入のコツや更新方法などを解説

飲食店開業は、保健所から営業許可証を取得する必要があります。許可申請には多くの書類が必要で、準備不足により申請が遅れるケースも少なくありません。この記事では、飲食店営業許可の必要書類を網羅的に解説し、申請書の記入方法から施設図面の作成まで、開業準備をスムーズに進めるための情報をまとめます。
目次
◆飲食店営業許可の申請で必要な書類一覧
飲食店開業には営業許可が必要で、申請時には多くの書類準備が求められます。
◇全業態共通で必要な基本書類
営業許可には、業態を問わず全ての飲食店で共通して以下の書類が必要です。

◇法人・個人で異なる提出書類
飲食店の営業許可には、事業形態により以下のとおり必要書類が異なります。

個人で営業許可と同時に開業の申請をする場合は、開業に関する書類の準備も必要です。また、営業許可には直接必要ではありませんが、法人・個人に関わらず飲食店の開業にはほかにも必要な書類が多数あります。
開業に必要な書類については、以下の記事も参考にしてください。
○関連記事:飲食店の開業で必要な届出・手続きとは 開業届や保健所・消防署・警察署への各届出も解説| RESTA[レスタ]
◇物件・設備条件で追加が必要な書類
ビルの共用貯水槽の水や井戸水を使用する場合は、「水質検査成績書」の提出が別途必要です。賃貸物件での営業の場合は、営業場所の使用許可証や承諾書の提出を求められることも少なくありません。菓子製造業のように特殊な設備を導入する場合は、追加の許可申請や設備仕様書が必要となります。
これらの書類は立地や設備により必要性が決まるため、事前相談で保健所に確認することが重要です。
◆営業許可申請書の入手方法と記入の流れ
申請書は管轄保健所から入手し、段階的に記入を進め、店舗完成の10日ほど前までには提出します。
◇1. 申請書入手と提出先記入
飲食店営業許可申請書は、管轄保健所の窓口で入手するか、各自治体のホームページからダウンロードします。申請書の様式は保健所によって異なるため、必ず店舗所在地を管轄する保健所の様式を使用します。申請書左上の提出先欄には管轄保健所名を正確に記載し、例えば新宿区の店舗であれば「東京都新宿区保健所長殿」と記入します。
◇2. 申請者・届出者基本情報の記入
申請者の住所・氏名・生年月日を記載します。個人の場合は住民票、法人の場合は登記事項証明書に記載されたとおりに記入することが重要です。法人の場合は、会社名、代表者名、法人番号を記載します。
◇3. 営業施設情報と店舗詳細の記入
店舗の屋号、住所、電話番号を記載します。店舗住所は賃貸借契約書に記載されたとおりに記入し、ビル名や部屋番号も省略しません。屋号は営業許可証に記載されますが、後日変更も可能です。主として取り扱う食品や業態について明確でない場合は、空欄でも問題ありません。
◇4. 営業の種類と許可区分の選択
申請する営業許可の種類を正確に選択します。一般的な飲食店は「飲食店営業」を選択しますが、テイクアウト専門店や製造を伴う業態では異なる許可が必要な場合があります。複数の業態を扱う場合は、それぞれに対応する許可申請が必要です。不明な点は空欄にして提出時に相談しましょう。
◇5. 食品衛生責任者情報の記入
食品衛生責任者は1店舗につき1人必要です。食品衛生責任者の講習未受講の場合は、受講予定者の氏名でも可能です。受講済みの場合は受講先と受講年月日を記載し、「都道府県知事等の講習会」を選択します。調理師や栄養士などの有資格者は該当する資格欄を選択し肢、免許番号などを記入します。
◇6. 欠格事由の確認とチェック
申請者が営業許可を受けられない欠格事由に該当するか確認します。過去の食品衛生法違反による処分歴や、営業許可取り消しから2年以内などが該当します。該当する場合はチェックを入れ、該当しない場合は空欄です。虚偽申告は法的問題となるため、正確に申告しましょう。
◇7. 担当者連絡先と添付書類の記載
保健所との連絡窓口となる担当者の氏名と電話番号を記載します。申請者本人でも代理人でも構いません。添付書類欄では、該当する書類名にチェックします。添付書類は漏れなく記載し、不備を防ぎます。
◆食品衛生責任者関連の提出書類
食品衛生責任者の設置は、飲食店の営業許可において必須条件です。
◇資格の種類と有効な証明書類
食品衛生責任者になるには、複数の方法があります。まず、調理師、栄養士、製菓衛生師などの国家資格保有者は自動的に食品衛生責任者となり、各免許証のコピーが証明書類となります。資格がない場合は、都道府県が実施する食品衛生責任者養成講習会を受講します。受講後に交付される食品衛生責任者手帳が証明書類です。
◇資格未取得時の誓約書提出について
食品衛生責任者の講習未受講や資格未取得の場合、営業開始までに取得する旨の誓約書を提出します。誓約書には受講予定日や受講先を明記し、確実に資格取得する意思を示します。ただし、営業開始時には必ず食品衛生責任者が配置されている必要があるため、誓約書提出後は速やかに講習を受講しましょう。
◇食品衛生責任者の変更・更新時に必要な手続き書類
食品衛生責任者の変更時は、保健所への届出が必要です。変更届出書に新しい責任者の氏名、資格、取得年月日を記載し、資格証明書のコピーを添付します。食品衛生責任者の住所変更や氏名変更時も同様の手続きが必要です。変更から10日以内の届出が義務づけられています。
◆施設・設備に関する図面・資料作成
営業許可申請に必要な、施設の詳細な図面・資料について解説します。
◇営業設備の大要の書き方
営業設備の大要は、店舗内設備の概要をリスト化した書類で、保健所から用紙を入手します。記載内容は、厨房面積、客席面積、トイレの構造、壁や床の材質、給排水設備、冷蔵・冷凍設備、調理設備などです。面積は平方メートル単位で正確に測定し、材質は具体的な素材名を記入します。設備の配置や数量も明記し、保健所の施設基準を満たしていることを示します。
◇店内平面図作成の必須要素と注意点
店内平面図では、厨房、客席、トイレ、手洗い場、冷蔵庫、調理台、シンクなどの配置を正確に示します。縮尺を統一し、入口から厨房までの動線を明確にします。
厨房と客席の区分、手洗い設備の位置、ゴミ置き場の配置など、衛生管理上重要な要素を漏れなく記載します。手書きの場合はボールペンと定規を使用しましょう。内装業者作成の図面を活用することも可能です。
◇立地条件書類(地図・水質検査成績書等)
店舗周辺地図は、最寄り駅や目印となる建物を含めて作成し、店舗の正確な位置を示します。手書きまたは地図をコピーして店舗位置に印をつける方法でも構いません。貯水槽や井戸水使用時は水質検査成績書が必要で、ビル管理会社から取得できます。検査項目は一般細菌、大腸菌、塩化物イオンなど法定項目を満たし、有効期限内の成績書を添付します。
◆法人・個人事業主別の特有書類
事業形態によって異なる必要書類について、解説します。
◇法人の場合:登記事項証明書と定款の準備
法人は、法務局で登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取得します。証明書の「目的」欄に飲食店経営に関する記載があることを確認します。「飲食店の経営」「食料品の製造販売」など具体的な文言が望ましく、あいまいな表現では許可が下りない場合があります。併せて定款にも事業目的が同様に明記されている必要があり、必要に応じて定款変更登記を行います。
◇個人事業主の場合:開業・廃業等届出書と身分証明書
個人事業主は、基本的に追加書類は不要ですが、税務署への開業・廃業等届出書の提出が必要です。開業届は事業開始から1か月以内の提出が義務づけられており、営業許可申請と並行して準備することが効率的です。また、深夜酒類提供飲食店を営業する場合には、許可申請時に身分証明書の提示を求められる場合があります。
◆申請前の最終確認事項
飲食店営業許可の申請前に確認しておくべき、そのほかのポイントを解説します。
◇営業許可証取得にかかる費用
営業許可申請には手数料が必要で、一般的に1万6,000円から1万9,000円程度です。東京都新宿区では1万8,300円となっています。手数料は自治体により異なるため、事前に管轄保健所で確認が必要です。支払いは申請時に現金で行うことが多いですが、キャッシュレス決済に対応している保健所もあります。
※参考:営業許可業種と申請手数料一覧:新宿区
◇保健所へ書類提出・許可申請の流れ
申請書類を準備したら保健所窓口で提出し、施設検査の日程を調整します。施設検査は申請から数日後に実施され、保健所職員が店舗を訪問して基準適合性を確認します。検査合格後、営業許可証が交付されるまでは数週間から1か月程度です。開業予定日から逆算して、余裕をもった申請スケジュールを組みましょう。
◇飲食店営業許可における留意点
営業許可には有効期限があり、営業許可期限満了日以降も継続して営業を行う場合は、事前に更新手続きが必要です。無許可で営業すると食品衛生法や風営法違反となり、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。
◆まとめ
飲食店営業許可の申請には多くの必要書類があり、事前準備が重要です。基本書類として、営業許可申請書、営業設備の大要、店内平面図、周辺地図、食品衛生責任者資格証明書を準備します。費用確認と書類提出の流れを把握するなど、計画的な準備により、スムーズな開業を実現できます。
レスタンダード株式会社は、居抜き物件掲載トップクラスの居抜き市場(いちば)を運営している店舗専門の不動産業者です。飲食店の出退店に関して熟知しており、開業ノウハウなど飲食店経営に役立つ幅広い情報を発信しているため、ぜひ活用してください。
- 居抜き市場会員登録はこちらから
飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
「開業ノウハウ」の関連記事
関連タグ