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青森での「飲食業No.1」レベルになった、地雷也グループ小林代表33歳の経営哲学

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第八十四弾

 
筆者の生まれ故郷は「青森市」である。高校まで青森市で過ごし、進学で東京に出てきて、東京で就職し、いまに至っている。
 
筆者は、2018年8月に、青森市内で居酒屋を4店舗展開している「地雷也グループ」(株式会社W&W)の代表、小林達哉さんと知己を得た。小林さんは青森市生まれで、このとき26歳。聞くと、居酒屋を起業したのは17歳のときで、仙台であったという。それが東日本大震災(2011年3月11日)に店が使えなくなり、心が折れで青森市内に戻る。そして、家族のバックアップで、青森市本町に居酒屋を開業した。その後、仕切り直しで2011年10月に現在の「地雷也グループ」の原点となる「石と肴 地雷也」をオープンした。このとき19歳。
 
筆者は2018年10月、小林さんに取材をした。当時、地雷也グループの4店舗は、青森市本町にドミナント展開をしていて、いずれのお店も客単価5000円前後。原価率を45%掛けたお値打ちメニューで繁盛店揃いであった。2018年9月期(3店舗)の年商は2億5000万円であった。
 
その後、筆者は小林さんの動向をfacebookで把握するようになった。コロナ禍で苦戦したこと。デリバリーでチャレンジしたこと、等々。小林さんは、果敢にチャレンジを展開していた。
 
地雷也グループ代表の小林さんは33歳。17歳で起業。19歳で青森市内に居酒屋を開業して以来、14年間で青森市内No.1レベルの飲食業を築き上げた【地雷也グループ代表の小林さんは33歳。17歳で起業。19歳で青森市内に居酒屋を開業して以来、14年間で青森市内No.1レベルの飲食業を築き上げた】
 

目抜き通りへの出店と「アパート賃貸業」

小林さんのfacebookの内容に、近年変化がみられるようになった。
その筆頭は、2024年9月に、青森市本町の隣町である新町に新規出店をしたこと。青森市の「新町」とは、青森駅に近い繁華街で、その中央を通る「新町通り」は目抜き通りである。
 
しかしながら、それは「昭和」の時代のこと。郊外に大型ショッピングモールができて、新町通りは次第に「シャッター通り」となっていった。
 
とは言え、「新町通りにお店を構える」ということは、経営者にとっては大舞台に立つことだ。
 
facebookでは、さらに2025年9月新町通りに出店したという(本町にあったお店の一つが移転オープン)。「小林さんは、さぞ意気軒高であろう」と思った。
 
さらに、小林さんは「アパート賃貸業」を広げたという。このことを、小林さんがfacebookで語る際には、慎重に取り組んでいる雰囲気が文脈から伝わってきた。
 
「新町出店と、アパート賃貸業」
このワードに筆者は興味を抱き、小林さんのメッセンジャーで取材を申し込んだ。すると「OK」の返事をいただいた。
 
2024年9月、地雷也グループが初めて「新町通り」に出店した「炭×肴 じらいや」【2024年9月、地雷也グループが初めて「新町通り」に出店した「炭×肴 じらいや」】
 

「シャッター通り」が明るくなっていった

この取材で、筆者が青森市内に降り立ったのは12月1日の夜。青森駅前のホテルに荷物を置いて、早速、地雷也グループが2店舗出店した新町通りを散策した。新町通りをまっすぐ東の方向へ。100mほどのところに「鮨と地酒 地雷也」、さらに500mのところに「炭×肴 じらいや」があった。
 
両店とも、店頭にねぶた人形が飾られあり、観光客への訴求とブランディングを感じた。「新町通りはシャッター通りになった」と前述したが、地雷也グループの2つの店舗が誕生したことで、シャッターが上がり、明るさが戻ってきたようだ。
 
そして翌日12月2日の13時から、筆者は小林さんにインタビューをした。
まず、2024年9月、25年9月と、ワンツーで新町通りに出店した経緯について尋ねた。
 
2025年9月、「新町通り」に2つ目の店舗「鮨と地酒 地雷也」をオープン(移転)【2025年9月、「新町通り」に2つ目の店舗「鮨と地酒 地雷也」をオープン(移転)】
 
地雷也グループは、飲食店街の本町で14年前に起業し、ここで基盤をつくってきた。 新町は本町の隣で、駅寄りに位置していることから、小林さんは「いつかこのエリア に出店してみたいと考えていた」という。 新町通りの物件は、地雷也グループの取引先であるメーカーから紹介されたという。
 
「新町通りはシャッター通り」と前述したが、コロナがあけてから状況は一変。インバウンドと県外からの観光客が急速に増えて、このエリアを回遊する人が増えたという。
 
同社の2つのお店は、工事をしている段階からして、地元の人たちから「また地雷也ができるんだね」と、期待されたという。さらに、外観にねぶた⼈形を備えることで、観光のお客が足を止めて、そのままお店を利用するパターンも見られるようになったという。
 

インバウンド2割、県外客5割、地元客3割

「新町通りにインバンドが増えた」と前述したが、地雷也グループの客層の構成はインバウンドが2割、県外のお客が5割、 地元のお客が3割という。
 
特にインバウンドのお客は 「街を回遊しながら、気になるお店にふらりと入る」といった傾向があり、予約なしで来店するケースがほとんど。そのため、満席時にはお断りせざるを得ないこともあったことから。地雷也グループでは外国⼈のお客専⽤の予約フォームを新たにつくったという。
 
店内の客席は個室で構成され、メニューが書かれた黒板・白板が置かれている。メニューは各店舗ともにほとんど同じ構成で、140品目ほどラインアップしている【店内の客席は個室で構成され、メニューが書かれた黒板・白板が置かれている。メニューは各店舗ともにほとんど同じ構成で、140品目ほどラインアップしている】
 
インバウンドが急増した背景には、まず、⻘森空港で台湾との定期便が復活したこと。そして、⻘森湾には⼤型豪華客船が停泊 する埠頭があり、クルーズ旅行で訪れる外国⼈観光客が増えたこと。コロナがあけて、これらが重なって⼀気に押し寄せるようになった。
 
地雷也グループの料理は、「産地に近い」ということで、新鮮な魚介類を、素材を活かした形で提供している。これらで約140品をラインアップし、5店舗のメニューはほぼ同一のものを提供している。これらで、客単価は5000円から5500円あたり。小林さんは「東京であれば8000円、9000円あたり感覚ではないでしょうか」と語る。そこで県外のお客から、「この価格でこの内容は安い」と大層喜ばれているという。こうして、全国的に地雷也グループの知名度は、年々高まっているようだ。
 
客層の動向について、平⽇はインバウンドや県外の観光客が中⼼で、3割ほどの地元のお客は⾦曜⽇から週末にかけて増え、会社の飲み会など法⼈利⽤が多い傾向にある。
 
「炭×肴 じらいや」では、店内入口近くに、原始焼きをショーアップしている【「炭×肴 じらいや」では、店内入口近くに、原始焼きをショーアップしている】
 

経営者は、自分自身の生産性を持つべき

そして、「地雷也グループが、アパート賃貸業に取り組んでいるのはなぜか?」と尋ねた。
小林さんはこのように語った。
 
「弊社は、アパート経営のほかに株式投資にも取り組んでいます。これは従業員の⽣活を守り、事業を安定して継続していくための重要な柱と考えています」
 
「アパート経営を始めた背景には、コロナ禍による⻑期の⾃粛要請がありました。飲⾷部⾨の 売上が⼤きく落ち込んだ中でも、ここの安定した収益が従業員の給与を確保する支えとなりました。この経験から、飲⾷部⾨と不動産事業を並⾏して運営する体制が、会社としての強さにつながると実感しました。 この⼆本の柱によって、 従業員の⽣活基盤の安定 、会社のキャッシュフローの平準化 、景気変動に左右されにくい経営体制、 といった効果が生まれています」
 
「弊社では飲⾷部⾨の利益はできる限り従業員へ還元しています。そこで、経営者である私は、不動産事業と株式投資による収益を、⾃⾝の役員報酬や出張旅費、社会保険料といった経費に充てています。その結果、飲⾷部⾨の利益だけで運営していた頃と比べて、従業員の賃上げ、賞与、福利厚⽣などへの還元をより厚く実施できるようになりました。さらに、不動産や株式投資から生まれる利益は、事業の将来的な成⻑に向けた⼤切な財源でもあります」
 
「経営者が独⽴した収⼊源を持ち、⾃⾝の経費を⾃ら賄うことで、従業員にとって『⾃分たちが稼いだ利益で 経営者が生活しているのではないか』という不満や摩擦を生むことなく、安⼼して働ける環境づくりにもつながります。こうした透明性の高い体制は、社内の信頼関係を築くうえでも重要だと考えています。この体制を基盤としてより良い企業づくりに努めます」
 
筆者は、小林さんに「優れた経営者」を感じ取った。
小林さんは、現在33歳。地雷也グループは直営5店舗の体制で、今期の年商は7億円を想定している。この規模は、青森市内の飲食業の中で「地域ナンバーワン」のレベルである。ローカルで奮戦し、成長している小林さんの事業展開に、筆者はこれからも注目していきたい。
 
各店舗のフロアスタッフのほとんどが20代で、店内は活気にあふれている【各店舗のフロアスタッフのほとんどが20代で、店内は活気にあふれている】
 

 
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
 

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