注目新店舗インタビューvol.17「RiTO」コロナ禍を期に「帰ってくる街」で次なるステージへ
2021年11月6日、目白駅から徒歩2分ほどの好立地にオープンした日本酒×和食×自然派ワインを提案する「RiTO(リト)」。東中野で地酒と創作和食を提供する「SHINOA(シノア)」の主人・髙瀬慎太郎さんが手掛ける2つめのお店です。オープンから1ヶ月ほど経過した今、新天地でのお店づくりについて、コロナ禍で飲食店を経営する心構えなどを伺いました。
―新店オープンを決めた経緯から教えてください。
(髙瀬さん)2015年に始めた1店舗目が、お蔭さまで安定して営業できています。大きな窓がある2階の店舗で換気の心配がないためか、コロナ禍でもお客さまが大幅に減ることはありませんでした。良いお客さまに恵まれたと思います。そろそろ次のステップに進みたいと思い、実はコロナ禍以前に具体的に進めていた時期もありました。
―そうなんですね、それはどれくらい進んでいたのですか?
(髙瀬さん)中野坂上に良い物件が見つかったのですが、大手のウォーターサーバーの会社に負けてしまって(笑) ご縁がなかったと諦めました。その後、新型コロナウイルスの感染が広がり、時短営業や休業要請があったことを考えると、あの時負けたのは逆に運が良かったのかも知れません。東中野の店を開ける時にも感じたのですが、ご縁があればトントン拍子で進むものだと思うのです。
―コロナ禍での物件探しはいかがでしたか? どのように物件探しをされましたか?
(髙瀬さん)コロナ禍の影響で、普段は出ないような良い物件が見つかるはずだと思っていましたが、なかなか見つかりませんでした。特に私が希望する駅近で10坪くらいの小さい店は人気。私たちの目に止まる前に大手の牛丼チェーンなどで決まってしまうなんて話もあるほどなので……。居抜き市場は7、8年前から登録して、ず〜〜〜っと見ていました(笑) やはり良い物件が多い印象がありますね。
―目白で物件を探された理由を教えてください。土地勘のあるエリアだったのですか?
(髙瀬さん)まったく知らない土地でした。2店舗目は東中野より高級感のある店をやろうと考えていました。コロナ禍で外食の機会が減り、たまの外食くらい「おいしいものを食べたい」「ちょっと高級でも良いものを食べたい」というニーズがあると思ったのです。それで最初は、代々木上原や神楽坂の物件を何件か見ました。その一方で、1店舗目の東中野と並行して営業するなら、私の目が届く環境にしておくべきという思いもありました。それで、東中野から自転車で15分くらいの目白で本格的に物件を探しました。
―この物件を選んだ決め手は?
(髙瀬さん)駅に近く10坪ほどの物件と希望に沿っていたことが第一にあります。加えて、コロナ禍を経験してテレワークが浸透したことで、銀座に代表されるような一等地が将来的に一等地ではなくなる気がしています。そう考えると「行く街」より「帰ってくる街」でやっていくほうが面白いのかなと。
―まさに理想的な物件ですよね。ここは居抜きでしたか?
(髙瀬さん)そうです。前はスペインバルだったそうで、コロナ禍でオープンして1年ほどで閉められたそうです。バルをするならそのまま営業できるほど綺麗な状態でしたが、私は和食店ということもあり、お金をかけてでも、やりたい雰囲気にしたいと思って改装しました。キッチンは食洗機とフライヤーを足した程度で、その部分のコストは抑えられたと思います。1店舗目があったからこそ、お金のかけどころ、抑えるところの判断ができるようになったのは経験値と言えるかもしれませんね。
―デザイナーさんも入られているのですか?
(髙瀬さん)知り合いに駆け出しの一級建築士さんがいて、協力してくださることになりました。経験が浅いということでしたが、シックで和モダンな雰囲気にしたい私のイメージや要望をしっかりと汲んでくれる方で、相談しながらつくってもらいました。外観はさり気なく店内の様子が見えるように、店内はカウンターメインの空間にこだわっています。既存のカウンターの形はそのままで、調理している手元を見ていただけるように調整してもらいました。実家が割烹料理屋で、小さい頃から父の店のカウンターで常連さんの隣に座って甘海老を食べたり……。そんな環境だったので、お客さまとの出会いを大切にして、自分自身でおもてなししたいという思いが強いです。
―営業を始められて1ヶ月ほど経ちますが、目白の印象はどうですか?
(髙瀬さん)ビッグターミナルと違い、目白駅は目的を持ってない人が降りる駅ではないので、このエリアで働く人や住んでいる方が利用する地域密着型。お客さまは素敵な方が多いですね。もともと高級住宅地と言われるエリアですし、品のあるお客さまが多い。「こういうお店を待っていた」と言ってくださるお客さまもいて、ありがたいですね。
―直接、お客さまとやり取りされると反応がダイレクトで緊張感がありそうですね。
(髙瀬さん)そうですね。どの店も最初は夢があるし、コンセプトを考えると思うのです。けれど、それがその地域でどう愛されるかはやってみないとわからない。マーケティングとかどんなに準備をしても、始めてみないとわからないことがあると思うのです。お客さまの反応からご希望を察したり、実際に声としていただく要望に柔軟に対応することも飲食のプロとしてあるべき姿だと私は思っています。そのため、今はオープン当初はなかった軽めのコースを用意したり、オープン時間を17時に早めたり。臨機応変な対応を心がけています。
―集客のために取り組まれていることはありますか?
(髙瀬さん)今は、お客さまお一人おひとりに満足していただきたいので、しばらくは集客のための情報発信をする予定はないです。急に忙しくなって対応しきれないと困るので……。目白は帰ってくる街ですが、いずれ「この店を目的に人が来る」、そんな店にしたいですね。
<おすすめ料理>
前菜6種盛り合わせ ※コース料理(5,000円〜)より
A5ランク山形牛イチボ 3,000円
店舗概要
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取材・文 近藤由美 ライター、手作り味噌マイスター
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