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「マーケティング」「発信」「コミュニティ」の力で躍進するDazyの新時代の集客力

YouTubeの『はやたつDARUMAチャンネル』を視聴したことがあるだろうか。これは、飲食企業、株式会社Dazy(本社/東京都千代田区)という会社の代表、林龍男(たつお)氏が主人公となって発信しているものだ。
この番組は、「若手の」飲食業経営者、「若手の」飲食業を志す人にとっては、この上なく参考になる。更新は頻繁に行われていて、この名前を検索すると、過去の動画がずらりと出てくる。上で、わざわざ「若手の」と付けたが、この番組を理解できる感性には、「若手の」ということが必要になると、筆者は思っている。
自社のデータを詳細に公開し、YouTubeの中で総括
これらのタイトルをざっくりと紹介すると、こうなっている。
・7月売上報告:飲食店経営簡単じゃない 中途半端な覚悟ならやられる
・「ひまり商店」大学生アルバイトに密着 繁盛店のアルバイトは半年でどこまで成長するのか?
・居抜き物件 ここだけ気をつけろ
・従業員の待遇をあげたい まずは 店長の給料を40万円以上にします
・食料品の消費税 2027年8%→1% 飲食店がするべき対策を徹底解剖
実に、いま注目したい話題の的を射ている。この番組を継続して視聴することで、相当なノウハウを身に付けることができるのではないか。
【代表の森龍男氏は、YouTubeで自身の飲食店経営についての考え方を頻繁に発信している】
ここで公開される内容は実にリアルである。ちなみに、上記タイトルの一番上、「7月売上報告」の中では、同社の主軸となる店舗、東京・新橋「ひまり商店」の7月度のデータを赤裸々に公開している。ずばり、こうだ。
売上1958万円、原価581万円(29.7%)、人件費456.2万円(23.3%)、家賃123万円(6.3%)、水道光熱費60万円(3.1%)、通信費0.8万円(0.4%)、備品・消耗品30.2万円(1.5%)、販売促進費50.5万円(2.6%)、支払い手数料54.8万円(2.8%)、損害保険料1.4万円(0.1%)、減価償却費80万円(4.1%)、その他の経費の合計342.3万円、経費総額1502.5万円、利益456.4万円、FLR59.3 %。
YouTubeでは、林氏がこれらの数字を省略することなく述べて、これらの総括を行っている。「この月にどんなことを行ったか」「それが数字にどのように表れているか」、これらを踏まえて、どのようなことに取り組もうと考えているのか。その一つ一つを歯切れよく語っている。
「インフルエンサーマーケティング」のノウハウ蓄積
Dazyは、2021年10月、東京・神田に居酒屋「だるま酒場」をオープンしたことに始まる。2026年9月末現在は8店舗を擁している。同社代表、林龍男氏の経歴はざっとこうだ。
林氏は1994年3月生まれ、群馬県出身。東京での学生時代に飲食業のアルバイトを重ねて「飲食業愛」を深めた。大学卒業後、専門商社に就職。その3年後「世界一の居酒屋繁盛店」で働こうと、検索してヒットしたドバイの「ZUMA」に転職した。しかしながら、コロナが直撃したことで帰国を余儀なくされる。
そこで、日本で飲食店を開業することを志し、そのための軍資金を貯め、クラウドファンディング等も駆使して、2021年10月東京・神田に「だるま酒場」を開店した。林氏の故郷である群馬・高崎の「達磨」の「七転び八起き」の世界観をベースにして、林氏が奮闘していた当時は、18坪で月商450万円から500万円を売っていた、という。
【創業店舗の「だるま酒場」(いまは、ない)は、クラウトファンディング等を駆使してオープンした】
そして翌2022年10月、溜池山王に2号店の「海老牡蠣酒場だるま」をオープン。ここから「インフルエンサーマーケティング」に取り組むようになった。林氏はこう語る。
「この店は16.5坪、客単価5500円。翌年の2023年1月、税抜きで月商2990万円、2月250万円、3月370万円と売っていました。この辺りから『インフルエンサーマーケティング』に気付くようになりました。これを手掛けたことで6月418万円となり、300万円後半の売上が安定するようになって、9月450万円、10月480万円、11月520万円、12月635万円となっていきました」
【SNSで「映えるメニュー」を次々と公開して、「行ってみたい飲食店」と定評を得ている】
「最初は、あるインフルエンサーの方が当店にいらして、当店のことをアップしてくださったことですね。ここで、この影響力を実感しました。インフルエンサー選びは、彼らの動画の構成などを見て、影響力がありそうな方にダイレクトメールを送って1対1で交渉しました」
このような形で林氏は、インフルエンサーのそれぞれの動画の構成を検証していった。こうして新しいお店を出すたびに、インフルエンサーについてのノウハウが充実していった。
「安売りをしない外食」で、経験値の高い顧客に愛される
この9月末現在、Dazyの店舗数は8店舗である。中でも、東京・新橋の「ひまり商店」が繁盛店として知られるようになった。同店は2025年8月にオープン、45坪77席で月商2000万円前後を売り上げている。同店が繁盛しているポイントは、ずばり、クオリティの高いおつまみと、豊富な銘柄日本酒の品揃え。さらにフレンドリーでかつ丁寧な接客がリピーターを獲得している。
【東京・新橋の「ひまり商店」は、Dazyの居酒屋の象徴的な業態となっている】
メニューは、お酒にあうつまみが50品ほど、食材の取り入れ方、盛り合わせが良く映える。単品の価格は、500円から800円といったレンジで、客単価は5000円弱。オープン当初の月商は1700万円であったが、鍋が出る冬から今年の3月までは2000万円を売っていた。
ドリンクは日本酒にフォーカスをしている。注目されるのは「飲み放題」。「プレミアム飲み放題、3300円」を設けていて、飲み放題の中に銘柄日本酒を20種類以上入れている。日本酒愛好者にとっては、とても楽しい飲み放題である。こういう形で銘柄日本酒の消費量が増えることから、酒販店とも良好な関係性が出来上がっていく。客層は30代から50代が主流で、働く女性の二人連れが目立つ。
「ひまり商店」は2号店を2025年12月マロニエゲート銀座にオープン。今年の8月17日、丸の内永楽ビルディング地下の「イーヨ‼」にも出店した。また、定食業態の「出汁林」を今年の3月、渋谷東急プラザに出店した。こちらは客単価1500円あたり。このような形で、出店する業態は偏ることなく、さまざまな形で展開していくという。
【「ひまり商店」では、銘柄日本酒の品揃えが豊富で、来店目的の大きな要因となっている】
飲食業経営者の新しい世代のコミュニティが存在
冒頭で述べたYouTubeでは、林氏がMCとなって行う、同世代の経営者との対談も興味深い。登場する経営者のほとんどは30代で、彼らが経営する飲食店はとても斬新な試みを行っていて繁盛店ぞろいである。
この対談で登場する経営者は、主に「HND」(HEISEI NEXT DREAMERS/平成生まれで5店舗以上飲食店を展開している経営者の集まり)に属するメンバーとのこと。林氏はこう語る。
「HNDのポリシーは、子どもたちが『飲食業に行きたい』と言ったら、『飲食業はいい世界だね』と言える世界をつくること。そこで私たちは、競争するのではなく、『ノウハウをしっかりと共有する』というスタンスで、業界にインパクトを与えられる存在になろうと。例えば、コロナのような事態が発生したときに、どのようにまとまって政治的な行動をとるか、とか」
これらには、「共に学んで、共によりよい飲食業をつくっていく」というマインドが存在している。このような考え方は、例えば、「労働時間をどのように減らしていくか」「従業員の給料をどのように上げていくか」、はたまた「やりがいベース」の指標にもつながっていくことであろう。この対談のシリーズを見ていて、筆者は「新しい世代のコミュニティ」を感じた。
さて、『はやたつDARUMAチャンネル』では、「2027年に5店舗出店する」と明言している。林氏の考え方は、飲食業界への愛情に溢れ、この夢をどのようにして実現していくか、熱く、ロジカルに発信している。このような志に、多くの若者が共感していくことであろう。
【代表の林氏は、マーケティングと発信力という、集客力のノウハウを高めている】
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
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