ダクトは飲食店に必要?ダクトの種類や維持管理する上での注意点などを解説
「飲食店に必要なダクトにはどのようなものがあるのか」「厨房排気ダクト以外にダクトはあるのか」「出店する飲食店の業態に最適なダクトの種類はこれで良いのか」「そのダクトを新規で設置するのか、それとも飲食店の居抜き物件を活用して費用を抑えるのか」「居抜き物件の場合、注意しなければならないポイントは何なのか」「ダクトがらみのトラブルにはどのようなものがあるのか」などなどダクトについての疑問点・不明点は思いのほか多く、飲食店出店者にとっては重要な関心ごとだと思います。そこで、本記事では、ダクトの必要性、種類、機能から維持管理における注意点などダクトに関連するテーマを網羅的に解説していくことで飲食店出店者の疑問を解消していきたいと思います。
目次
◆ダクトの機能と必要性
飲食店の厨房で調理を行うと匂い、煙、熱が発生したりします。これをそのまま放置すると店内に匂い、煙、熱が充満してしまい飲食店の営業どころではなくなってしまいます。顧客が店内で快適に飲食をしたり、従業員が効率よく働けたりするためには飲食店の店内の環境を常に良い状態に保たなければなりません。そのためには店内で発生する匂い、煙、熱などを店外に排出し、常にきれいな空気と入れ替えなくてはなりません。ここで重要な役割を果たすのがダクトになります。
◆飲食店で使われている主なダクトの種類
飲食店におけるダクトにはいくつかの種類があり、その目的も異なります。ここでは、それぞれの特徴について説明していきます。
◇空調ダクト
店内の空気を排出して、外から空気を取り込むことで、店内の湿度と温度を調整し、快適な環境を維持する役割を果たすのが空調ダクトと言われる設備になります。空調ダクトが機能していないと、店内に結露が発生したり、店内の温度が高温になったりしてしまいます。
◇排気・換気ダクト
排気・換気ダクトは、店内の汚れた空気を、店外に排出する役割を果たします。一般的な換気扇と役割は近いです。換気ダクトは空気の流れを往復(空気を排出させたり取り入れたり)させますが、排気ダクトは空気を排出させることのみの機能という違いがあります。これらは、人が利用する建物には法律で設置することが義務付けられています。
◇厨房排気ダクト
厨房排気ダクトは、調理する際に発生する油を含んだ煙、匂い、湯気等を排出する役割を果たします。厨房排気ダクトにはグリスフィルターと呼ばれるフィルターが設置され油脂を除去します。ただし、全ての油脂が除去できるわけではなく、ある程度はダクト内に残ってしまうので定期的な清掃が求められます。なお、厨房排気ダクトに関係することについて、本記事で詳しく説明していきます。
〇各設備の役割
厨房排気ダクトの各設備とそれぞれの役割を説明します。
・天蓋ダクトフード
調理時の油、煙、湯気などを受け止める囲いです。排気設備へと誘導する役割があります。出店する飲食店の業態や調理内容によって最適なサイズを選ぶ必要があります。
・オイルパン
グリスフィルターを油が通過する際、約80%の油が除去されます。その除去された油分がケーシングの下部に溜まり、ホースを伝ってこのオイルパンに溜まる仕組みになっています。店舗側が簡単にメンテナンスできる仕様となっています。
・グリスフィルター
グリスフィルターは、調理時の油、煙、湯気などのうち油のみをキャッチし除去するためのフィルターです。一般的には、ステンレス製のものが多いですが、セラミック製の高性能フィルターなどもあります。
・フィルターケース
フィルターケースは、Vバンクやフィルター受けと呼ばれることもあります。グリスフィルターを取り付けるためには、フィルターケースにセットする必要があります。
・防火ダンパー(シャッター)
防火ダンパーは、グリスフィルターケース内にあり、火災が発生し、排気ダクトが防火区画をまたぐ場合に温度ヒューズが設定温度で切れてシャッターが閉じる装置です。 ダクト内部に火が回らないための措置として強制的に開口部を閉鎖させます。防火ダンパーの種類として防火ダンパー(FD)、煙感知器連動型ダンパー(SFD)、消火ガス圧連動ダンパー(PFD)があります。
・温度ヒューズ
温度ヒューズは、防火ダンパーのシャッター部分に付いています。温度ヒューズには設定温度というものがあり、通常は72℃が設置されますが、排気温度が72℃を超えるような場合には120℃を設置することもあります。
・ダクト
ダクトは、通り路であり、天蓋ダクトフード部分から取り込んだものを排気口より排気するための設備となります。その種類には、角ダクト、スパイラルダクト、フレキシブルダクトなどがあります。
・チャンパーボックス
チャンパーボックスは、ダクト径より広い面でつくった五面体や六面体の箱形状のダクトを指し、合流地点や分岐地点に設置することで気流を安定させ空気の流れる音などの騒音を抑えることができます。
・送風機(排気ファン)
送風機は、天蓋フード部分より吸い込んだ空気を排気口へと送り出す送風の役割を果たしています。送風機は様々な種類があり出店する飲食店の業態や厨房設備の規模などによって最適なものを選択する必要があります。
・Vベルト
Vベルトは、ファンベルトの一種で断面がV字型になっている輪状のベルトのことを言います。Vベルトが回転することでファンが稼働するので排気ファンを動かす原動力と言えます。
・ウェザーカバー
ウェザーカバーは、外からの雨水や風の侵入を抑えて効率的に排気するための屋外カバーです。一般的に先端部に防鳥ネットを設置します。使用していくと、だんだん油汚れで網目が目詰まりするので定期的に清掃をしなければなりません。
・防鳥ネット(網)
防鳥ネットは、その名のとおりハト、カラス、スズメなどの鳥の侵入を防ぐためのものです。防虫ネットとの違いは網目の大きさや強度にあります。防鳥ネットの方が網目は大きく強度に優れています。
◇排煙ダクト
火災発生時に必要となるのが排煙ダクトです。火災によって発生する有害な煙を店外へ排出する役割を果たします。これがあることによって人がスムーズに店外へ避難することができるようになります。排煙ダクトは日常的に使用することはないのですが、火災という非常事態に備えて設置したほうがよいでしょう。
上記の4つの種類のダクトの目的・機能を理解し、適切に設置をしてください。
◆排気の肝となる送風機(排気ファン)について
飲食店で発生する匂い、煙、熱などを店外へ排出するためにダクトにおいて重要な役割を果たすのが送風機です。この送風機は、モーターを回転させて空気に運動エネルギーを与え、飲食店で発生する匂い、煙、熱などを店外に送り出す仕組み(装置)となっています。送風機は主に遠心式送風機、軸流式送風機、横流式送風機/斜流式送風機に分けられています。
◇遠心式送風機
遠心式送風機とは、ファンの軸方向から空気が入り、直角に空気を送る(遠心力で空気を送る)送風機のことを言い、シロッコファン、ターボファン、リミットロードファンがその代表的なものになります。
〇シロッコファン
シロッコファンとは、水車のように羽は狭く複数付けられており、その羽を回転させて空気を送り出す送風機のことを言います。多翼送風機とも呼ばれ、飲食店の厨房でよく使われています。
〇ターボファン
ターボファンとは、シロッコファン同様に羽を回転させて空気を送り出すのですが、羽根車の形が異なります。羽の幅は広く、枚数もシロッコファンに比べると圧倒的に少ないです。エネルギー性能はシロッコファンに勝ることもありますが、反面、音が大きくなってしまう欠点があります。
〇リミットロードファン
リミットロードファンとは、シロッコファンとターボファンの中間的な送風機となります。吸込口にガイドベーンが設置されており、風圧や風量が変化しても、軸動力が一定の値を超えないように設計されています。
◇軸流式送風機
軸流式送風機とは、風方向が中央から入り、中央に出る(まっすぐに空気を送り出す)タイプの送風機のことを言います。軸流式送風機は、プロペラ送風機とも呼ばれています。小型で軽量のため、スペースがあまりなくても設置することができますが、風圧が他の送風機と比べて低く、また油汚れなどで送風機としての機能が低下することもあるため、焼き肉店や焼き鳥店などの匂い・煙の強い重飲食の業態には適していません。
◇横流式送風機/斜流式送風機
斜流式送風機とは、ファンの軸方向から空気が入り、斜めに空気を送り出す送風機のことを言います。遠心式送風機と軸流式送風機の中間的な構造となっています。騒音が少なくコンパクトな特徴があり、ダクトの中継用のファンとして使われています。
横流式送風機とは、ファンの軸を巻き込むようにして空気を送り出す送風機のことを言い、クロスフローファンやラインフローファンとも言われます。横方向や縦方向に空気を送り出すことに適しており、家庭用のエアコンにも使用されたりします。
◆設置方法について
ここでは、ダクトの設置方法について説明します。設置方法には主に以下の3パターンがあります。
1.建物の壁面にダクトを通してそこで排気を行う方法(直出し)
ダクトの長さを最小限にすることができるので、費用面で屋上出しと比較すると安価です。ただし、立地によっては近隣等からクレームが発生する可能性があります。カフェやバーなどの匂いや煙の少ない飲食店の業態に適しています。
2.建物の屋上までダクトを伸ばし排気を行う方法(屋上出し)
ダクトを屋上まで建物の外壁に這わせる形で伸ばすため、ダクトが長くなり工事は大がかりになります。費用は数百万かかるケースも少なくありません。匂いや煙も屋上にて排出するため、近隣等に配慮したダクトとなります。焼き鳥店、焼き肉店などいわゆる重飲食と言われる飲食店の業態に適しています。
3.天井に換気扇を設置して排気を行う方法
トイレによく利用される排気方法で穴を空けられる天井であればどこでも設置可能です。ただし、厨房排気ダクトには適していません。
◆設置費用の目安と費用と抑えるためのポイント
ダクトの工事にかかる費用は、店舗の広さ、出店する飲食店の業態や設置の方法(直出しか屋上出しかなど)によって大きく異なります。特に、屋上出しは、ダクトを屋上まで伸ばすための作業として足場を組まなければならないため、高額になりやすいです。その他、ダクトを伸ばす距離が長いほど費用は増加します。例えば、3階建てより5階建ての方が費用はかかります。1階層伸ばすごとに約20万円追加されると言われています。ダクトの工事にかかる費用を抑えるためには大まかに以下の2つのポイントがあります。
◇同様の業態の居抜き物件を活用して出店する。
費用を抑えるためにまず検討すべきは、飲食店の居抜き物件を活用することです。居抜き物件とは、簡単に説明すると、前借主が設置した内装、設備などが残された状態で新たな借主がそれらを引き継ぎ営業することができる物件のことを言います。当然、建物設備でなければダクトも引き継ぐことができます。なので、居抜き物件で出店すれば新たにダクトを設置する必要はありません。ダクト掃除費用のみで抑えることができれば工事費用を大幅に抑えることができます。ただし、ここで注意しなければならないことがあります。それは、自身が出店する飲食店の業態と同様の居抜き物件を活用するということです。ダクトが設置されているから安心と思い、契約後、ふたを開けたらダクトの容量やパワーが不足していて、結果、工事をやり直さなくてはならない事態に陥ることも想定されます。なお、飲食店の居抜き物件における注意点については、後述しますので、そちらを確認してください。
◇複数の業者から見積もりをとる。
ダクトの工事費用を抑えるための有効な手段として複数の業者から見積もりをとって内容や価格などを比較することが上げられます。特にダクトの工事は、それを得意とする業者とそうではない業者が明確に分かれやすいです。そのため、業者によって価格差が生じやすい工事となるので必ず複数の業者から見積もりをとるようにしてください。
◆飲食店の居抜き物件における注意点
居抜き物件に設置されているダクトをそのまま問題なく使用できるかというとそうではありません。ダクトが設置された経緯、維持管理の状態、経年劣化の具合などによって様々なリスクが考えられます。
◇火災、延焼のリスク
厨房排気ダクトは油脂やほこりなどが溜まりやすく、それを放置していると、火災の発生につながる可能性があるので注意が必要です。特に焼き鳥店、焼肉店、中華料理店など油が多く出る飲食店の業態の居抜き物件の場合は顕著で他の業態と比較してリスクが高いと言えます。東京消防庁予防部予防課によると、東京消防庁管内の火災件数は、家庭でのそれを含めて全体として減少傾向にあるなかで、飲食店からの火災件数は増加傾向にあるとのことです。その中でも特に気を付けたいのが「ダクト火災」です。ダクト火災とは、厨房排気ダクト内に蓄積された油脂やほこりなどの汚れのかたまりに、調理の火などが引火してダクト内で火災が発生することです。
〇防火ダンパー(シャッター)が機能するか。
厨房排気ダクト内に防火ダンパーが設置されているか、設置されているのであればそれが機能するのかどうかは事前に確認する必要があります。居抜き物件の場合、例えば、防火ダンパーのシャッター部分に付いている温度ヒューズが経年劣化により動作しなくなっている可能性があります。そうなっていた場合、火災時にシャッターが閉じず延焼してしまい被害が拡大することが想定されます。
◇吸排気のバランスは問題ないか。
店舗の出入口扉が重く開閉しにくい、店内の温度調整がうまくいかない、店内に虫が侵入してきてしまう、といった現象は、吸排気系に問題が生じている可能性があります。これは、排気ダクトから吐き出す風量と同等の給気を入れる必要があるにもかかわらず、給排気部やダクトの設計施工ミスがあった場合や長期間の使用でモーターやファンが劣化(能力低下)してしまい吸排気のバランスが崩れてしまっていることがケースとして考えられます。これまで営業してきた実績がある居抜き物件だから大丈夫だと言って、たかをくくらないように事前に吸排気系の検査を行ってください。居抜き物件については、今後、問題なく営業ができることが保証されているわけではありません。
◇容量が足りているか。
厨房排気ダクトの容量やパワーについて自身が出店したい飲食店の業態とは異なる居抜き物件の場合は注意が必要です。例えば、極端ですが、カフェの居抜き物件に焼き鳥店を出店しようとしてもダクトの容量やパワーが足りないため、吸い込みが弱く、結果、ダクト工事をやり直さなければならないことになってしまいます。事前に物件契約前の内見時に容量やパワーが足りているかどうか確認をしてください。
◇越境していないか。
ダクトの多くはテナント側所有の造作物となります。そのため、越境をしていた場合、隣地所有者や行政等から越境部分の是正を求められる可能性があります。この場合の責任や費用はテナント側が負うことになります。これは排気ダクトに限ったことではないのですが、居抜き物件を借り受ける際は、事前に造作物等の越境状態を確認しておく必要があることを頭に入れておいてください。
参考:「居抜き物件」とは?
◆厨房排気ダクトの維持(防火)管理
排気口のまわりに油脂やほこり等の汚れが付着している、排気ダクトの吸い込みが悪くなった、などの現象が起こったら、それは、換気ダクト全体が油脂やほこり等によって汚れていると思ってよいでしょう。厨房排気ダクトの中に溜まった油脂やほこり等に火がつくとそれが延焼ルートとなってしまい火災が拡大するおそれがあります。被害を未然に防止するためにも厨房排気ダクトの適切な維持(防火)管理が必要です。具体的には、定期的な点検と清掃が該当します。点検の頻度(あくまで目安として)は、天蓋やグリス除去装置など外側から確認できる箇所は日常的に、厨房排気ダクトの中の部分など外側からではなかなか確認が難しい箇所は概ね1年ごとに点検することが望ましいです。点検すべき箇所としては、天蓋、グリス除去装置、防火ダンパー(火炎伝送防止装置)、排気ダクトそれ自体、排気ファン・たわみ継手、自動消火装置となります。その後、点検結果にもとづいて、店舗の実態に応じた清掃をしてください。
◇厨房排気ダクトの清掃は法的義務?東京都の火災防止条例
厨房排気ダクトなどの維持管理不足から火災となる事例が多いため、東京都では以下のとおり火災防止条例にて、維持管理基準が規定されています。なお、炉については、厨房設備に準用されるので文言を読み替えてください。
・第3条第3項
一 炉及びその附属設備の周囲は、常に整理及び清掃に努めるとともに、燃料その他の可燃物をみだりに放置しないこと。
二 炉及びその附属設備は、必要な点検及び整備を行い、火災予防上有効に保持すること。
・第3条の2第1項
五 グリス除去装置等は、清掃を行い、火災予防上支障のないよう維持管理すること。
上記から厨房排気ダクトの清掃は法的義務であることがわかります。必ず順守するようにしてください。その他の都道府県においても火災防止条例が制定されていますので適宜確認をしてください。
出典:火災予防条例|東京都例規集データベース
参考:飲食店の厨房設備等に係る火災予防対策ガイドライン|東京消防庁
関連記事:飲食店の火災は増加傾向 消化器設置の助成金を利用しよう
◆近隣等とのトラブルと対応策
飲食店において調理に伴う匂いや煙の対策として厨房排気ダクトを設置することは必要不可欠です。しかし、ただ設置さえすればよいというものではなく、排気される匂いや煙が近隣に配慮されたものでなければなりません。ここでは、飲食店につきものであるダクトおよび排気のトラブルとその解決策について説明していきます。
◇匂いや煙等のトラブル
飲食店は、周囲が建物で囲まれている中で営業していることが多いかと思います。このような環境では、排気ダクトから排出される匂いや煙が拡散され(濃い状態のまま薄まり)にくくなり、結果、近隣等とのトラブルに発展してしまったりします。排気の中でも特に煙は視覚的に見えるので比較的遠くから見えていても心理的な影響でクレームとなってしまうことがあります。
・匂いのトラブル
匂いのトラブルの対応については、排気能力の高いダクトに変更する工事や風向きや周辺の環境に適応した排気を排出するために排気口の位置を変更する工事などを行うことになります。排気口の位置を変更する場合は、住宅がない方向に排気口を移動することや建物の屋上までダクトを伸ばすことを行います。その他、匂いの対策として、脱臭機を設置する方法も効果的です。
・煙のトラブル
煙のトラブルの対応については、匂いのトラブル同様に排気口の位置変更を行う工事の他、電気集塵機を設置する方法もあります。電気集塵機は、強力な静電気で煙など微細な粒子を捕集する装置のことを言います。この電気集塵機ですが、煙を90%以上除去することができます。さらに脱臭機と併せて設置することで近隣等とのトラブルの発生可能性をより低減させることができます。
・排気口付近の建物壁面などに付着した油等の汚れによるトラブル
排気口から油等が飛び散って建物壁面など(隣接する建物の壁面を含む)に付着し黒くなっているのを見たことがあるかと思います。これについてもトラブルに発展したりするので壁面に付着している汚れを除去することは当然のこと、今後、それらを発生させないためにも排気口にパン受けを付けて配慮するなどの対策は必要です。
◇騒音によるトラブル
厨房排気ダクトは、匂いや煙などの排気トラブルだけではありません。厨房排気ダクトそれ自体の騒音によるトラブルもあります。一体、厨房排気ダクトから発生する騒音は、何が原因なのでしょうか。その原因は大きく以下のように分けられます。
・厨房排気ダクト自体が破損している。
騒音が大きな振動音の場合、厨房排気ダクト自体(特に送風機)が破損している可能性があります。このケースでは、騒音以外にも風量に問題が発生していることもあるので、早急に対応してください。
・送風機の軸受が経年劣化している。
騒音が一定のリズムで発生している場合、送風機の軸受(送風機の軸を支える箇所)が経年劣化により正常に動作していない可能性があります。
・Vベルト(ファンベルト)が摩耗している。
騒音が鳴き声のようなキュルキュル音の場合、送風機をまわすためのVベルトが摩耗している可能性が考えられます。このVベルトを交換することで改善できるかもしれません。
その他、ダクト騒音についての対策として、サイレンサー(消音器)の設置、ダクトのまわりに騒音が外に漏れないようにするために防音パネルを設置する方法も考えられます。サイレンサーは、反射板や吸音材を使用して騒音による空気の振動を吸収したり、はね返したりすることができます。店内にて顧客からクレームが発生した際は吸気口用のサイレンサーを、近隣からクレームが発生した際は換気口にサイレンサーを取り付けるなど問題の発生個所に応じて設置するようにしてください。
◇環境省による飲食店のための臭気対策マニュアル
臭いのトラブルに対しては、環境省が飲食店のための臭気対策マニュアルを作成しています。その中で臭気対策のすすめ方として以下を上げています。
【ステップ1】匂いを元から断つ工夫をする。
発生する匂いが大きく軽減される可能性がある作業工程の見直しや使う器材、材料の変更、日々のこまめな清掃の実施をする。
【ステップ2】 匂いをできるだけ薄める工夫をする。
匂いが気にならなくなる程薄めるため、高いところから匂いを含む空気を排出する工夫をする。
【ステップ3】 脱臭装置で匂いを取り除く。
においが減らない場合には、脱臭装置を設置する。
参考:飲食業の方のための『臭気対策マニュアル』|環境省
◆おわりに
飲食店を営業していく上で店内の環境を良い状態に保つためにはそれぞれのダクトの種類や機能などについて理解しておかなければなりません。また、ダクトは、単に設置すればよいというわけではなく、適切な選定と維持管理が必要となります。特に厨房排気ダクトは、火災の原因となるなどリスクが潜んでいるので注意が必要です。是非、本記事を参考にして対処してみてください。
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文 飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
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