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「串カツ田中HD」が「ユニシアHD」に社名変更して描く成長戦略とは

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第八十三弾

 
㈱串カツ田中ホールディングスが、この3月1日、社名を㈱ユニシアホールディングスに変更した。社名を変更するということは、新しいミッションを打ち立てたことを意味する。
 
串カツ田中HDの2025年11月期決算は、210憶9100万円(対前期比25.1%増)、経常利益12億3600万円(同46.1%増)、同期末の店舗数は、総店舗数が357、うち「串カツ田中」が344となっている。同期における同ブランドの出店数は、直営14、FC5(退店は、直営8/FC5)。これについては、「不採算店舗を撤退し、経営資源を成長分野へ集中させることで、将来への企業価値向上を目指す」としている。これらから、次のステージに飛躍する展望を読み取ることが出来る。
 
同社の解説によると、新社名にある「ユニシア」の「ユニ」とは「一つの」という意味。「シア」とは「海」のイメージ。世界には4つの海があって、いろいろなものが溶け込んでいる。そこで、「ここから世界に行こう!」というメッセージを込めている。
 

創業者が「代表」に復帰して動いたこと

貫氏は、1971年1月生まれ、大阪府出身。1998年1月個人事業として大阪にバーをオープン。2004年3月東京・港区に京料理店をオープンした。リーマンショックを経験した後に、2008年12月東急電鉄世田谷線沿線の住宅地の中に「串カツ田中」1号店である世田谷店をオープンした。
 
2011年12月よりFC展開を開始。15年8月商号を「株式会社串カツ田中」に変更。同年12月100店舗(FC店含む)達成。16年9月東証マザーズ市場に上場。18年7月に200店舗達成(同)。19年6月、東京証券取引所市場第一部に指定変えを行った。
 
2022年6月同社のCFOとして貫氏がスカウトした坂本壽男氏が、代表取締役社長に就任した。貫氏は代表権のない社長に就任した。

さて、2024年9月、貫氏は代表に復活。貫啓二代表取締役会長と坂本壽男代表取締役社長の二人代表となった。貫氏は、代表に復帰する1年前あたりから、「未来に対する漠然とした不安」を感じていた、という。それは「『串カツ田中』だけだと、いつか終わりがやって来る」ということ。そこで「代表に戻ろう!」と貫氏は決意した。
 
貫氏は、このように動いた。
まず、インバウンドを獲得するために、2023年8月「天のめし」ブランドを京都・祇園に立ち上げた。この構想は「日本でインバウンドがやって来る店をつくって、アウトバウンドにつなげるということ。
 
2023年8月、京都・祇園にオープンした「天のめし」の「OMAKASEコース」4400円(税込)【2023年8月、京都・祇園にオープンした「天のめし」の「OMAKASEコース」4400円(税込)】
 
「天のめし」を含めたインバウンド向けブランドは、いま京都に6店舗展開している。最初にオープンした祇園の店は、32席で最高月商2800円を売ったことがある。
そして2026年1月、LAに「天のめしの「とんかつ」をオープンした。「インバウンドからアウトバウンドにつなげていく」という構想は、着々と進んでいる。
 

「脱・串カツ田中宣言」が意図していること

メインの業態「串カツ田中」では、2025年4月より「無限ニンニクホルモン串」をメニュー化した。この商品の意義は、「1本55円の低価格串で、誰もが注文する新名物としてつくった」ということで、昨年末『日経MJ』の「2025年ヒット商品番付」にも選出された。
 
この商品は、昨年12月末に販売を終了し、累計1400万本を売った。この1月から新シリーズをはじめて、1月末には累計1500万本に達した。それまで2700円だった客単価は102%に増え、来客数は118%になった。
 
1本55円の低価格商品を開発して既存店の業績を120%に保ばし「定番」となる【1本55円の低価格商品を開発して既存店の業績を120%に保ばし「定番」となる】
 
そして、2025年9月に「脱・串カツ田中」を宣言。さらに、ファミリーレストランの「ピソラ」を子会社化することも発表した。これについて、貫氏はこう語る。
 
「これは、『串カツ田中』を捨てる、ということではなく、『当社が進む道』ということ。当社は今後1000店舗体制に向けて、事業領域を拡大して、さらにグローバルに出ていくことを目標にしています。そのためには『串カツ田中』を変革していく。ピソラの完全子会社化もそのため」
 
旧串カツ田中HDは、この㈱ピソラ(当時60店舗)を2025年12月に約95億円で完全子会社化した(63店舗、うちFC12 店舗/26年1月末)。そして、坂本氏が退任し、貫氏が代表取締役会長兼社長に就任した。
 
左がピソラ代表取締役社長の鬼界友則氏、右がユニシアHD代表取締役会長兼社長の貫啓二氏【左がピソラ代表取締役社長の鬼界友則氏、右がユニシアHD代表取締役会長兼社長の貫啓二氏】
 
「ピソラ」とは、同社代表取締役社長の鬼界友則氏が、当時勤務をしていた外食企業で2004年に開発した業態である。 また、貫氏の古くからの友人である廣瀨周栄氏が、この業態の魅力にいち早く気づき、加盟店として同ブランドを展開していた。2019年9月、㈱ピソラをスタートさせるというタイミングで廣瀨氏がピソラに100%出資した。
それが、コロナになって大変な経験をした。その後、2021年から再び出店するようになった。すると、著しく速い勢いで業績を伸ばし、店舗を増やしていった。
 
「ピソラ」の客単価は2500円~3000円で、コンセプトは「リゾート気分で本格イタリアンを」【「ピソラ」の客単価は2500円~3000円で、コンセプトは「リゾート気分で本格イタリアンを」】
 
このような「ピソラのすごさ」について、貫氏は廣瀬氏から常々伺っていたという。そして、「いろんなところからM&Aの話がきている」と。そこで貫氏は「じゃあ、僕にチャレンジさせてください」と、お願いした次第である。
 
「ピソラ」のコンセプトは「リゾート気分で本格イタリアンを」というもの。客単価は2500円から3000円。店内仕込み、店内調理にこだわり、クオリティの高い料理、サービスを提供している、
 
「客席」は、すべて半個室の構成でプライベート感を演出している【「客席」は、すべて半個室の構成でプライベート感を演出している】
 

食を通じて「一つ上の暮らし」を提案する

さて、「串カツ田中」は客単価2700円の居酒屋である。前述の通り「ピソラ」は、いわば「串カツ田中」とは真逆な業態と言っていい。では、貫氏にとって「ピソラ」とはどのような存在なのだろうか。貫氏はこう語る。
 
「『ピソラ』がやっていることは、『串カツ田中』とまったく異なります。そこで『ピソラ』によって、『串カツ田中』の世界観が広がるのです。よく僕は『ピソラ』を支配したいとまったく思わないし、ロードサイドで伸び伸びと成長していただきたい。いま、メガフランチャイジーが加盟店として参入するようになっています」
 
一方、旧串カツ田中HDでも、2024年8月に1号店を開業した「天のめし」に続いて、食事メインの新業態を開発している。それは「厚とん」(2025年5月オープン)と、「ザ・メンチ」(26年2月オープン)である。
 
「厚とん」は、銘柄豚肉を厚切りで食していただく「ワンランク上のとんかつ店」【「厚とん」は、銘柄豚肉を厚切りで食していただく「ワンランク上のとんかつ店」】
 
「厚とん」は2種類の銘柄豚をそろえて、特製のオリジナルブレンドの油で揚げて、厚切りで提供。客単価は2700円。「ザ・メンチ」は、和牛100%のメンチカツで、スタッフがお客様に順繰りに3個提供。それを。塩、ポン酢、デミグラスソースなどで、食味を楽しむ。ご飯、キャベツ、スープが食べ放題で1800円(税別)の一本のみ。
 
これらを開発した狙いについて、貫氏はこう語る。
「僕らは大衆的なアルコール業態をやってきて、「非アルコール系のブランドが欲しいな」と考えていました。そこで、僕らが『ちゃんといいもの』と判断した食事を、適正な価格で提供する。そこで僕らは、『一つ上の暮らし』ということを提案していこうと。ピソラの子会社化も、この考え方に基づいています」
 
1980円(税込)一本で、メンチカツを3個提供して、さまざまな味付けで食していただく【1980円(税込)一本で、メンチカツを3個提供して、さまざまな味付けで食していただく】
 
筆者は貫氏に。「日本のマーケットは、これから人口減少でシュリンクしていく。それについてどのように考えているか」と尋ねた。貫氏はこう答えてくれた。
 
「自動車メーカーもアルコールのメーカーも、日本のマーケットに依存していなくて、グローバル戦略をどんどん進めている。それは、単に売上を拡大するということではなく、事業をスケールしていくためのこと」
 
ユニシアHDのタグライン(ブランドの核となる言葉)とは、「世界へ挑む、日本の力。ユニシア」ということ。これからの動向が楽しみな外食企業である。
 

 
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
 

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