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フードサービス・ジャーナリスト 千葉哲幸 連載第七弾 「カフェ」は生産性追求業態 後編

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二つ目は、7月19日東京・池袋東口エリアにオープンした「キュープラザ池袋」2階にある「EDW」。同ビルは“都内最大“を標榜するシネマコンプレックスが核となり低層階に個性的な飲食店も集まっている。

池袋東口のランドマークとなったキュープラザ池袋

 

「EDW」を経営するのは株式会社DREAM ON(本社/愛知県一宮市、代表/赤塚元気)。同社代表取締役社長の赤塚元気氏は今年で14年目を迎える「居酒屋甲子園」という飲食業界の全国的な勉強会を盛り上げる活動の初代理事を務めた。

同社は2007年3月に開催された第2回居酒屋甲子園で優勝を果たすし、これによって全国的に注目される存在となった。筆者はその時のチーム店舗「いなせ寅“衛門」に取材で赴いて、クオリティの高さに驚いた。同店は高級和食店のディフュージョン版と言える店だが、料理人の手によるきちんとした料理が礼儀正しくも慇懃無礼ではない接客によって提供されていた。

2012年11月に東京に進出してから、同社がオープンしていく店のつくり込みは目を見張るものがあった。「従業員の元気のよさ」を基調にしつつ、常に繁盛トレンドを自社のものとしていった。それはバルであり、イタリアンであり、メキシカンであり、そして今日「カフェの会社」と称されるほどの、目標とされる店をつくるようになっている。

 

全時間帯フル稼働を支える多種多様な仕組み

筆者が今回の「EDW」で注目しているポイントは大きく三つある。
まず、カフェとしての完成度の高さ。フードメニューはチーズ8品目(580円~1280円税別、以下同)、アンティパスト6品目(480円~980円)、タパス10品目(680円~1300円)、パスタ7品目(1280円)、メイン4品目(1800円~2700円)、デザート10品目(480円~1380円)の構成だが、既存店でキラーコンテンツとなった「トリュフのオムレツ」(1300円)と「パンケーキ」(プレーンが1280円)を池袋でも導入し、これを目当てとするお客さまの行列ができるようになった。

 

EDWトリュフのオムレツ

 

トリュフのオムレツのソースは既存店の人気メニュー「牛フィレとフォアグラのロッシーニ」のものを使用してオムレツに重厚感を加えた。これが全時間帯で売れる商品となり、現在1日70食程度を販売しているという。

 

EDWベリーベリーパンケーキ

 

次に、同店には飲食店の在り方の新しい潮流を示唆する試みが散見される。まず「17時以降はサービス料を7%いただく」ということ、そして、デザートを含めたフードメニューをオーダーする際はワンドリンク制を採用している。上質のおもてなしをして、お客さまの満足度を高め、きちんと儲けることによってプライドを育むというポジティブな姿勢がある。

 

100one-HUNDRED自重で潰れない様二回り小ぶりな食パン

 

そして、来館者の往来の多い場所に併設した「100(ONE HUNDRED)BAKERY」。この「100(ONE HUNDRED)」とは、これまでのパンづくりでは小麦100対して水分は70程度しか入れることができないと言われてきたことに対して、同社では小麦100に対して水分100を入れることに成功、そこでこのパンをこのように呼んでいる。店内の窯で1回に35個程度を焼き上げ、これを1日5回に分けて提供している。価格は2斤で600円となっている。

現状、客単価は2500円で推移しているとのことだが、全時間帯がフル稼働している様子を見ていて、キラーコンテンツを重層的に携えた店の強さを感じた。

 

求人活動を有利に進め、従業員の発想力を高める

同社代表の赤塚元気氏はこう語る。
「最近商業施設のリーシングでお声かけをいただく機会が増えてきました。その理由を尋ねると『夜に売れているカフェはほとんどない。その点,ドラエモンのカフェは夜もしっかり繁盛している』とおっしゃってくださる。当社の場合、夜の商売からスタートしていて、夜が得意で、カフェの営業もできる。当社がこれまで積み上げてきていることが、今日待望される業態となっていると言えるかもしれません」

 

EDWカウンター型シェフズテーブル

 

さらに、「カフェ」というネーミングは求人活動を有利に進めるという。今回のEDWの求人では500人の応募があり、その中から30人を採用したという。

 

活き活きと働くスタッフ

 

また、この間優秀な料理人の採用を進めてきたことが新規店舗の骨格を強くしている。
「今回の店を開発するに際して『皆でこだわりたいことを一生懸命にやってみよう』と呼びかけたところ、当社の職人たちががぜんやる気を出して、それぞれに素晴らしいキラーコンテンツが出来上がった」と赤塚氏は語る。

本テーマ前編の「伊右衛門サロン」も「EDW」も「全時間帯フル稼働」の仕組みが整っている。これはリーシングサイドから求められた条件の中で収益を保つためにつくり上げたものだ。同時に目的来店の価値を高めている。このようにカフェは多種多様に強烈な魅力を創出し生産性を高められる業態となっている。

 

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

 

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