飲食店には保険の加入が必要?想定されるトラブルや保険の種類・選び方を解説
飲食店経営において保険の加入は必須事項といえます。保険の種類は多数あるため、自店舗の経営形態や業態に合わせて選ぶことが大切です。この記事では、はじめての飲食店開業を目指す人に向けて、飲食店の保険加入の必要性や保険の種類、保険加入前に知っておきたい事項などを解説します。参考にしてください。
目次
◆飲食店の経営には保険の加入が必要
飲食店の経営では、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。したがって万が一に備えて、保険への加入が必要です。保険に加入していれば、トラブルが発生したときも損失を補償で賄うことができます。
保険の種類はたくさんあるため、店舗に合う保険を選ぶことが大切です。そのためには、どのような種類の保険があって、自分の店舗にはどんなリスクがあり、どれくらいの補償を考えるべきなのか、ということを知っておく必要があるでしょう。
◆飲食店の経営において想定されるリスク・トラブル
飲食店の経営に伴うトラブル・リスクはさまざまです。ここでは飲食店経営において想定されるリスクやトラブルを解説します。
◇休業リスク
休業リスクは、休業して売上が上げられなくなるリスクです。休業リスクのうち最も多いのが、自分自身や家族の体調不良による休業です。自分が何らかの病気に罹患することはもちろん、家族や親が体調を崩して手が必要になった場合も、店を休業しなければいけない可能性があります。
状況によっては店で食中毒のようなトラブルが起こり、やむなく休業となることもあります。飲食店は休業してしまうと、収入が入ってこないばかりか、食材の廃棄など損失が出ることも考えられるでしょう。
◇損害リスク
損害リスクとは、火災や水害などによる店舗への損害、あるいはお客様に損害を与えてしまうリスクです。例えば店内の設備トラブルです。調理器具によって火災が起こってしまったり、水漏れによって下の階に損害を与えてしまったりなどの事象は、いつ起こるかわかりません。とりわけ飲食店では、排水管の詰まりによる水漏れはよくあることです。設備や什器が破損してしまうと、元の状態に戻すためにはかなりのお金がかかってしまいます。
◇賠償リスク
賠償リスクは、お客さまに賠償責任を負うリスクです。賠償リスクの代表的なものは食中毒のリスクで、飲食店を経営している以上、注意をしていても起こらないと断言はできません。食中毒の結果、お客さまが入院してしまえば、店側には賠償責任が問われます。
他には、スタッフが熱い食べものをお客様にこぼしてしまい、やけどを負わせてしまったような場合も、賠償責任につながります。しかし保険に加入していれば、素早くお客様に賠償金を支払うことができ、信頼回復が早いでしょう。
◆飲食店の保険の種類
飲食店の保険には、いくつかの種類があります。ここでは飲食店の保険の種類について、それぞれ解説します。
◇店舗休業保険
店舗休業保険は、災害などにより休業した場合、粗利益を補償してくれる保険です。店舗休業保険に加入していれば、万が一休業することになったとしても、従業員の給料などを補償することが可能です。ただし保険金の上限額が決められていることもあるため、前もってどのくらいの補填ができるか確認しておきましょう。
また、補償の対象は予想外のアクシデントに限定されます。重大な過失に伴う休業による損害は補償されないことが多いです。例えば、窃盗による休業は多くの場合補償の対象ですが、万引きによる休業は補償されません。
◇火災保険・地震保険
火を使う飲食店では、常に火災のリスクがあるため、火災保険への加入が必須です。火災保険は、地震保険とセットになっていることがよくあります。火災に対する補償だけでなく、災害時に備えて地震、水害にも対応できる保険を選ぶと損害を最小限に抑えることができます。また台風の場合は、風災、水災、落雷などに対応できる火災保険であれば万が一のときも損害を補償してもらえます。加入時に補償内容をよく確認すると良いでしょう。
◇生産物賠償責任保険(PL保険)
生産物賠償責任保険は、通称「PL保険」とも呼ばれています。店舗で作ったものによるお客様への被害を補償する保険です。飲食店にとって、代表的なものはやはり、食中毒への対応でしょう。治療費、入院費や通院費、慰謝料や損害賠償などを支払わなくてはならなくなる可能性があります。万が一のことが起こったとき、生産物賠償責任保険に入っていればもろもろの賠償金はもちろんのこと弁護士費用を補償してもらえるケースもあります。
◇施設賠償責任保険
施設賠償責任保険は、店舗の利用によりお客様に損害を与えた場合の保険です。
例えば運んでいる飲食物をお客様の服にこぼしてしまい、クリーニング代が発生したような場合に補償が適用されます。ほかにも食器が割れてケガをさせてしまった場合や、店の中の飾りなどが落下してお客様と接触し、ケガをさせてしまった場合なども対象です。どのようなことが起こるかわからないのが店舗経営です。万一に備えておくのがおすすめです。
◇借家人賠償責任保険
借家人賠償責任保険は、店舗を借りているオーナーに対する賠償責任を補償する保険です。
テナントとして店舗を借りていて、万が一、店舗で火災が起こった場合などはテナントのオーナーに対して賠償責任が発生します。飲食店は火災の可能性と常に隣り合わせです。もし火災をおこしたときに、借家人賠償責任保険に加入していなければ、すべてを自分の資産から補償しなくてはなりません。テナントで店舗経営をしている場合、積極的に検討すべき保険といえます。
◇労働保険
労働保険は、飲食店の従業員やアルバイト向けの保険です。労働中の事故などが対象で、加入しておけば仕事中や通勤中に事故や事件が起きた際、従業員に対する補償をすることができます。
労働保険には労災保険と雇用保険の2種類があり、労災保険は一人でも従業員を雇用する場合に、雇用主である飲食店の店主に加入義務が課せられます。一方、雇用保険については1週間に20時間以上、かつ31日以上継続して雇用する従業員に対して適用されます。
◆飲食店の保険を選ぶ際のポイント
飲食店の保険選びでは、気を付けるべき重要なポイントもあります。飲食店の保険を選ぶ際のポイントを解説します。
◇保険料と補償内容のバランスを見る
保険会社によって保険料や補償内容が異なります。補償内容がよいほど保険料が高くなるため、自店舗に合う保険選びが重要になってくるといえます。具体的には、店舗の経営内容や提供する飲食物の種類、調理方法、規模、従業員の人数などが検討材料になるでしょう。複数の保険会社で補償内容と保険料を比較してから決めるべき問題です。
◇特約も確認する
保険選びをするときは、特約も一緒に確認しましょう。特約とは、オプションのことです。特約を加えれば補償内容を充実させられます。ただし、特約を追加するほど掛け金は高額になるものです。したがって自分の店に必要なものだけを選ぶ必要があります。これも複数の保険会社を比較し、どの補償が自店にとって必要なのかをよく検討しましょう。
◇おすすめされた保険だけでなく他社も比較する
店舗を借りる場合、不動産から保険をおすすめされることがあります。これはあくまでも、不動産屋側がコネクションを持っているなど、何らかの理由でおすすめしている保険です。必ずしも掛け金や補償内容が自店舗に合っているとは限りません。加入する前に他社と比較することがおすすめです。ただし大家や管理会社指定の保険加入が必須の場合もあるため、あらかじめ確認を行うなど注意しましょう。
◆飲食店の保険に加入する前に知っておくべき注意点
飲食店を経営するにあたり、保険加入には注意点もあります。飲食店の保険に加入する際に知っておくべき注意点を解説します。
◇故意や重大な過失は保険の補償対象外になる
保険に加入すると、飲食店経営に関わる大部分が補償の対象となります。ただし、故意や重大な過失は補償対象外です。
重大な過失とは、例えば、誤って冷蔵庫の電源を切ってしまったために食材が傷み、営業ができなくなったような場合です。他にもさまざまなケースがありますが、過失のないよう経営者が意識するだけでなく従業員教育も行うことが肝心です。
◇免責金額や支払限度額を確認する
免責金額とは、事故に対して保険加入者が負担する一定の金額のことを指します。また支払限度額とは、保険会社から補償される際に支払われる限度額のことです。
免責金額が多い保険や支払限度額が低い保険は、毎月の保険料が安くなる傾向です。ただし毎月の保険料を安くすることを最優先すると、トラブル発生時に保険ではまかないきれない可能性もあります。自己負担が必要になるケースもあるため、補償を手厚くするメリットも考えるべきでしょう。
◆まとめ
飲食店の新規出店に際しては、保険の問題を含め、さまざまな準備が必要です。保険を検討する際も、飲食店経営の知識やノウハウを知っていれば店舗に最適な保険を選択できます。
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