セントラルキッチンのメリットとデメリットとは?導入の基本的な流れについても解説

飲食店において、売上を高めるためにも作業の効率化は重要な課題です。作業を効率化させる方法はいくつかありますが、代表的な存在としてセントラルキッチンが挙げられます。本記事では、セントラルキッチンの基本的な仕組みをはじめ、メリットやデメリットについて解説します。また、実際のセントラルキッチンの導入事例も一緒に取り上げるため、興味を持った人はぜひ最後までご覧ください。
目次
◆セントラルキッチンとは
そもそもセントラルキッチンとは、調理や加工など、料理の主な工程をすべて引き受けている施設のことです。料理や食品を提供する事業で導入されており、集中調理施設、給食センターなどとも呼ばれています。1970年に開催された大阪万博のアメリカゾーンでセントラルキッチンが採用されたことで、日本でも注目を集めるようになりました。
◆セントラルキッチンの仕組み
セントラルキッチンは、基本的に以下の流れで食品を扱います。
・食材の受け入れ:食材を受け入れたタイミングで検品も実施する
・仕込み:下ごしらえや加工が行われる
・調理:大量の食材を一気に調理する
・冷却と保存:適切な温度で食品を管理し、安全を確保する
・配送:配送時は冷凍、冷蔵車両を用いる
調理や加工をどこまで行うかは、店舗や施設によってさまざまです。
◆セントラルキッチンのメリット
セントラルキッチンを導入すると、店舗や施設にどのようなメリットがもたらされるのか、以下で解説します。
◇業務の効率化
セントラルキッチンのメリットのひとつが、業務の効率化です。セントラルキッチンを導入することで、調理工程のプロセスが標準化されます。そのため、全体の業務効率を向上し、ミスや無駄を減らす効果が期待されます。
◇品質の一貫性
品質の一貫性を保ちやすくなる点も、セントラルキッチンのメリットです。セントラルキッチンでは、調理や加工のマニュアルを用意することで、従業員のスキル不足による品質の低下を防げます。品質が安定すれば、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
◇コストの削減
セントラルキッチンは、設備や人員を一か所に集約するため、人件費をはじめとするコスト削減効果が期待できます。また、材料を一度に大量に発注するおかげで、食材の単価を抑えることも可能です。
◇食品安全の強化
食品の安全を強化できる点も、セントラルキッチンのメリットです。セントラルキッチンは、調理や加工を行う場所が限られています。そのため、衛生管理がしやすくなり、食中毒や異物の混入などのリスクを軽減できます。
◇事業拡大の余裕が生まれる
セントラルキッチンの導入によって、店舗拡大をする余裕が生まれます。新規店舗を追加するにあたって、人員や設備を新しく用意するためには資金が必要です。セントラルキッチンなら、コストを抑えつつ業務効率を高められるため、事業拡大を進めやすくなります。
◆セントラルキッチンのデメリット
セントラルキッチンは、メリットだけでなくデメリットも存在します。具体的なデメリットの一覧は、以下のとおりです。
◇初期費用がかかる
セントラルキッチンを導入するにあたって、初期費用の問題を解決しなければなりません。セントラルキッチンは、設備導入費用や人件費などに多額の費用が必要です。そのため、企業の経済状況によっては導入そのものができない場合があります。
◇運営管理が複雑
セントラルキッチンのデメリットとして、運営管理の複雑さも挙げられます。万が一品質管理や物流の調整に問題が生じた場合、全体の業務がストップしかねません。なお、運営の複雑さはマニュアルの用意や管理システムの導入などによって、ある程度改善が可能です。
◇鮮度の保持
食品の鮮度を維持しにくい点も、セントラルキッチンのデメリットです。セントラルキッチンは、料理が完成してから提供するまでどうしてもラグが発生します。そのため、食品の鮮度を優先したい場合は採用を見送った方がよいかもしれません。
◇スタッフが育たない
セントラルキッチンのデメリットとして、スタッフが育ちにくい点も挙げられます。セントラルキッチンは各工程が効率化されており、自分で考えて行動する場面は多くありません。そのため、スタッフが経験やスキルを十分に伸ばせない可能性があります。
◇利用者の声を反映しにくい
利用者の声を反映しにくい点も、セントラルキッチンのデメリットの1つです。調理場と飲食スペースを切り離す関係上、ユーザーの要望が届きにくくなります。その結果、ニーズを把握できずに顧客満足度が低下する可能性があります。
◆セントラルキッチンの調理方法
以下では、セントラルキッチンにおける主な調理方法と、それぞれの特徴について解説します。
◇クックチル
クックチルとは、調理した食品を30分以内に冷却し、そこからさらに90分以内に急速冷却する調理方法です。メリットとして、食品を冷却することで保存期間を延ばせる、菌の繁殖を抑えられるなどが挙げられます。なお、冷却した食品を保管する場所の確保や、メニューのマンネリ化などの課題も一定数存在します。
◇クックフリーズ
クックフリーズとは、調理した食料を30分以内に凍結し、最終的にマイナス18度まで急速冷凍する調理法です。クックチルドよりも保存期間が長い点がメリットで、使用されている食材によっては最大8週間まで保存できます。ただし、冷凍による食材の組織破壊が発生しやすく、素材本来の味や食感を損ねる可能性があります。
◇真空調理法
真空調理法とは、下処理が済んだ食材を調味料と一緒に真空包装してから袋のまま加熱し、急速冷却、または冷凍する調理法です。メリットとして、真空パックのなかで食材の調理や調味が行われるため、素材本来の風味や栄養素を逃さない点が挙げられます。一方で、一部の料理に対応していない、コストがかかりやすいなどのデメリットもあります。
◇クックサーブ
クックサーブとは、加熱調理後すぐに料理を提供する、従来から行われている調理法です。調理の流れがシンプルでわかりやすく、調理する個人の発想や技術でオリジナリティを出しやすい点がクックサーブの強みです。なお、提供する料理の品数や人数が増えると、比例して作業量も多くなってしまう点が課題として挙げられます。
◆セントラルキッチンの導入方法
セントラルキッチンを実際に導入するにあたって、どのような手順で進めればよいか以下で解説します。
◇物件の取得
まずは、取得する物件の選定と設計を行います。セントラルキッチンは、すべての物件に導入できるものではありません。立地条件、とくに物流に問題がある物件はセントラルキッチンとの相性が悪いです。費用を抑えたい場合は、スケルトンよりも居抜き物件がおすすめです。また、掃除をしても劣化しにくい耐水性の高い内装を採用している物件も向いています。
◇必要経費の洗い出し
セントラルキッチンを導入するにあたって、必要経費の洗い出しも行いましょう。この工程を怠ると、余計な経費がかかる、適切な予算の分配が行えないなどの問題につながり、経営に悪影響が出かねません。また、セントラルキッチンの必要経費は立ち上げのタイミングだけでなく、定期的に見直すようにしましょう。
◇現状とコストの比較
現状とセントラルキッチンの導入によって発生する、コストの比較も行いましょう。セントラルキッチンを導入した企業にありがちな失敗として、投資額の回収を早めるために、無理に店舗数を増やすことが挙げられます。両者のコストの比較をすれば、利点や課題が明確になるため、最適な意思決定を行えるようになるでしょう。
◆セントラルキッチンの導入事例
最後に、セントラルキッチンがどのように活躍しているのか、具体的な導入事例と一緒に解説します。
◇ファストフード店
セントラルキッチンは、とある有名ファストフード店でも採用されています。全国1200以上の店舗で調理を行い、商品を提供することで安心、安全な商品の提供を実現しています。
◇病院や学校の給食
病院や学校給食を提供するにあたって、セントラルキッチンが採用されているケースもあります。セントラルキッチンの食品は安全性が高く、かつ品質も一定のため、病人や子どもに提供するのに最適といえるでしょう。
◇大手ラーメンチェーン店
大手ラーメンチェーン店でも、セントラルキッチンは採用されています。この店舗の場合、材料からスープをセントラルキッチンで調理し、冷凍してから各店舗に運搬する方式です。かつてのセントラルキッチンは、味がイマイチというイメージが一般的でした。しかし、技術革新によって、味の一貫性の実現に成功しています。
◆まとめ
以上、セントラルキッチンの基本的な仕組みをはじめ、メリットやデメリットなどについて取り上げてきました。セントラルキッチンには業務の効率化をはじめ、品質の均一化や食品の安全の確保など、さまざまなメリットが存在します。しかし、セントラルキッチンを導入できる物件は限られており、導入を見送らざるを得ないケースも珍しくありません。
居抜き物件掲載トップクラス居抜き市場は、飲食店の出退店に関して熟知している不動産業者です。開業のノウハウをはじめ、飲食店経営に役立つ幅広い情報を発信しており、セントラルキッチンを採用できる物件の情報も得やすいでしょう。興味を持った方は、ぜひ一度公式サイトをチェックしてください。
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