飲食店開業者インタビュー VOL.38「別亭 BETTEI」鈴木大揮さん
現場ならではの楽しさや充実感を味わいたい
「西荻窪」駅南口から続く商店街「にしおぎ南銀座会」に、2021年11月25日オープンした「別亭 BETTEI」。32歳で独立、開業した鈴木大揮さんがオーナーを務める海鮮料理を得意とするお店です。元ミュージシャンで、接客業の楽しさにやりがいを見出して飲食業界に転身した鈴木さんの柔軟な思考や行動力が、コロナ禍という逆境をも好転させているように感じられます。これからの時代にふさわしい店づくりのヒントも見つかりそうです。
―コロナ禍という状況下で、いつ頃から独立を考えていたのですか?
(鈴木さん)25歳までと決めてバンド活動をしていました。26歳で新たな仕事を始めるなら接客業がいいと思ったんです。バンド活動と並行して9年間コンビニでアルバイトをしていたのがその原点で、コンビニもある種のカウンター商売だと感じていて。直接お客さまとやりとりできるのが楽しかったんですよね。もちろん料理にも興味がありました。それで、浜松町と青山一丁目で海鮮系の居酒屋を展開する会社に就職して、ゼロから板前修業を始めました。
具体的に独立を考えるようになったのは2020年頃、ちょうど新型コロナウイルスの問題が広がり始めた頃です。現場で働きたかったのですが、マネジメントやグルメサイトなどネット関連の対応業務の割合が増えてきた時期で。それなら、これを機に独立するのも選択肢の一つだなって思ったんです。
―物件探しは順調でしたか?
(鈴木さん)独立を決意して、2021年の3月頃からネットで物件探しを始めました。
レスタンダードさんのほかにも飲食系のサイトにひと通り登録して、毎日チェックしていました。最初は住んでいる街の近くがいいと思って高円寺を中心に探しましたが、僕が希望するような5〜9坪くらいの小さな物件はほとんどなくて。この物件に出会ったのは偶然目にとまったという感じですね。
13坪と想定より広かったですし、聞くところによるとここ数年で3回お店が変わっているとか。やはり何かしら理由があるわけです。けれどその時には会社を辞めていたので、いつまでも物件探しをしているわけにもいきません。始めてみないとわからないこともあるし、13坪という広さは伸びしろと捉えて「とりあえずやってみよう!」と思って。
―この物件は居抜きだったとうかがいました。物件探しで重視されたことは?
(鈴木さん)居抜きにこだわったのはお金の問題が大きいです。初めての店ということで資金が潤沢にあるわけではないですから。使えるものは使って、初期コストは抑えたいと考えていました。やりたいメニューは決まっていたので、そのオペレーションから導線をイメージして厨房をチェックしていました。例えば、魚焼きグリルは絶対に入れたかったので「どこに置けるかな」とか。動きやすさが重要だと思っていました。
―営業風景をイメージしながら物件をチェックする視点は重要そうですね。独立開業ということで、融資も大きなタスクの一つだと思いますが、大変ではなかったですか?
(鈴木さん)僕は日本政策金融公庫から融資を受けました。前職で、幸か不幸かマネジメントに携わり、書類作成などデスクワークを経験したことが強みになりました。夢を語るだけではもちろんダメで、しっかりと根拠を示しながら売上見込みを提示しなければならないんですよね。営業が始まれば毎日考えることではないんですが、時間をかけてしっかりと計画を練り、準備することが大切ですね。実際に、僕の友人で融資が通らなかった人がいるので……。
―融資が受けられないと物件を借りることもできないわけですし、絶対につまづきたくないポイントですね。内装工事など、店づくりでこだわったポイントを教えてください。
(鈴木さん)家族連れや年配の方も入りやすい店にしたかったので、和のテイストで明るい雰囲気を意識しました。カウンターの天板は白木に張替えて、壁は塗り直してもらいました。そこに提灯をさげて、居酒屋っぽいカジュアルさを出しています。コロナ禍ということもありますが、ベビーカーでも奥まで入りやすいように、席の間のスペースは広めにとっています。
―西荻窪は地域や横の繋がりが強いエリアだと聞きます。地域とどのようにかかわり、PR活動はどのようにされていますか?
(鈴木さん)そうですね。うちも商店会に参加していますし、地域活動には積極的に参加しようと思っています! 新参者もウエルカムな空気で、皆さんに可愛がってもらっています。実際に商店会の会長さんが、店に食べに来てくれたり、お客さまを紹介してくださることもあります。
情報発信にはInstagram(@bettei_nishiogi )を使っています。集客に直結するので、いい写真をあげるようにしています。すでにフォロワーが600人を超えているので、いい緊張感があります。手を抜くようなことがあれば一瞬で伝わってしまうので、慣れてきた頃こそ気持ちを引き締めて、誠実でありたいと思っています。
―お店のInstagramの写真を見ていたら「これ食べたい!」「行ってみたい!」となりました。
(鈴木さん)ありがとうございます。Instagramは写真撮影から投稿まで僕がやっています。コストをかけずに、自分で責任を持って運用できる点ではいいツールだと思いますね。「広告料よりイクラの量」じゃないですか、その分、お客さまに還元したいですし。有料媒体は、食べログとうちの店専用のアプリを使っています。来店してくださったお客さまにQRコードでご案内すると、インストールしてくださる方が多くて。このアプリは、自由度が高くて、使い勝手もいいんですよ。
―開業されて3ヶ月ほど経過したところですが、独立されて思うことを教えてください。
(鈴木さん)今は正直なところ苦労のほうが多いです。けれど、コロナ禍を経験したことで、飲食業はなくならないと感じましたし、自分の責任のもとで店のことを考えるのはやっぱり楽しい。飲食業は休みが少ない、労働時間が長い、社会的な地位は低いなどマイナスなイメージを持たれることが多い。けれど、これからは変わっていく時代だと思っています。例えば「あのお店は繁盛していて忙しいけれど、実はマスターは週休2日なんだよ」とか。そういう選択肢をもって店を運営していきたいです。
<おすすめ料理>
鮮魚といくらの海鮮丼 1,100円 ※ランチ
いくらとズワイガニの蟹味噌リゾット 1,000円
これから独立する方へ アドバイス 3箇条
- 其の1. お客さまが入った店のイメージをしっかりと持つこと(お客さま目線でチェックを)
- 其の2. 開店時は理想の70%と心得、100%に向けて改善改良を続けるべし
- 其の3. 誠実でいること。手を抜けばすぐにバレる
お店ができるまで
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店舗情報
店主経歴25歳のときバンド活動に終止符をうち、接客への興味から飲食業界へ。 |
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