外国人が日本国内で飲食店開業するために必要な経営管理ビザとは何か?
外国人が日本国内で働くためには就労ができる在留資格(就労ビザ)を持っていることが条件になります。この就労ビザにはいくつかの種類があり、取得することで、それぞれのビザで指定された範囲内で、外国人が日本国内で就労することができるようになります。ここでは外国人が日本国内で飲食店を開業する際に必要となる就労ビザの1つである経営管理ビザについて取り上げ、どのような手続き・流れで経営管理ビザを取得すればよいのか、そして、取得するためのポイント・注意点は何かなどについて詳しく解説をしていきます。
目次
◆経営管理ビザとは何か?
経営管理ビザとは、外国人が日本国内で事業を経営する際に必要となる在留資格のことです。以前は、投資経営ビザと呼ばれていましたが、2015年の法改正により経営管理ビザとなり、投資をすれば取得できるビザではなくなりました。この経営管理ビザは申請をしたからといって必ず許可がおりるものではありません。登記されているだけで事業活動の実態がない会社、いわゆるペーパーカンパニーを設立して在留資格の取得を目的とする外国人がいるため、多くの在留資格の中でも取得の難易度が高いものとなっています。
◆対象となる飲食店の業態
日本国内で適法となっている事業であれば、中華料理店、タイ料理店、ネパール料理店、ベトナム料理店など開業する飲食店の業態を問わず幅広く経営管理ビザの申請対象となります。例外として、ワゴンを使ったキッチンカーなどの移動式店舗や露店(街商)については、飲食店であっても固定店舗で営業する形態ではないので、経営管理ビザの要件である事業所には該当しません。
◆対象外となる外国人
特別永住者、永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の在留資格を取得していれば、日本国内での活動に制限がないので、改めて飲食店開業するために経営管理ビザを取得する必要はありません。
※永住者とは?
在留資格の1つで外国人が在留期間を制限されることなく、滞在国に永住できる権利のことをいいます。
※定住者とは?
在留資格の1つで法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して滞在国に居住することが認められた者のことをいいます。例として、第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人などが該当します。
◆経営管理ビザの取得要件
経営管理ビザを取得するためには以下の要件を満たす必要があります。
◇事業所の確保
事業を営むための独立した事業所が日本国内に在ること。
◇一定以上の事業規模
申請にかかる事業規模が次のいずれかに該当していなければなりません。
ア 日本国内に居住する常勤職員が2名以上であること。
イ 資本金の額または出資の総額が500万円以上であること。
ウ 上記のアまたはイに準ずる規模であると認められること。
※アの常勤職員については、日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者以外の方はなることができません。
◇事業内容の実現可能性、安定性、継続性が見込まれること。
事業内容の実現可能性、安定性、継続性を証明していかなくてはなりません。具体的にどのような事業を行うのか、そして、その事業の収支の見込はどの程度なのかなどを説明した事業計画書などを入国管理局に提出する必要があります。なお、事業計画書の作成方法については以下を参考にしてみてください。
〇関連記事: 飲食店の事業計画書の書き方 テンプレートの入手方法や作成のポイントなども解説
◇実際に経営をすること。
実質的に会社を経営しなければならないので会社の経営権などの権限がないと認められません。
◇一定の実務経験と報酬額
・経営または管理について3年以上の実務経験を有していること。なお、この実務経験は、大学院において、経営または管理についての科目を履修した期間も含まれます。
・日本人と同等以上の報酬額を受けとること。
※管理者として出資金なしで経営管理ビザを取得するときは上記が必要となりますが起業する場合はどちらも不要となります。
◆経営管理ビザの取得までの流れ、申請に必要な書類および審査期間
◇取得までの流れ
経営管理ビザの取得をして飲食店を経営するまでの基本的な流れは以下になります。
1.会社の設立
・定款を作成して公証役場で認証を行います。
・資本金を振り込みます。
・法務局にて会社設立登記をします。事業の目的に飲食店経営が必要となります。
2.税務署への各種届出
・会社設立届
・給与支払事務所等の開設届など
3.物件の賃貸借契約の締結
飲食店を経営する場所を確保します。
4.飲食店営業許可申請
店舗の内装工事が完了した後、店舗の所在地を管轄する保健所に飲食店営業許可申請をします。
5.入国管理局にて申請
飲食店営業許可がおりてから入国管理局に対して経営管理ビザの申請をします。
6.入国管理局による審査
審査中に追加の資料が求められることがあります。審査期間については後述します。
7.経営管理ビザの取得
飲食店の経営者としての活動をすることができます。
◇申請に必要な書類
経営管理ビザを申請するのに必要となる書類は以下のとおりとなります。
・在留資格認定証明書交付申請書
・顔写真(縦4cm×横3cm)
・返信用封筒(定形封筒に宛先を明記して簡易書留用404円分の切手を貼付)
・旅券(パスポート)の写し
・学歴を証する書類
・実務経験を証する書類
・日本語試験合格証の写し
・事業計画書の写し
・会社の登記事項証明書の写し
・会社概要(会社のパンフレットやHPの会社概要を印刷したもの)
・賃貸借契約書の写し
・決算書の写し
※事業を開始する場合は必要ありません。
・給与支払事務所の開設届の写し
・従業員の雇用契約書
・飲食店営業許可証の写し
・飲食店のすべてのメニューの写し
◇審査期間はどのくらいかかるのか。
経営管理ビザの審査期間は、入国管理局に申請が受理されてからおおむね1ヶ月~3ヶ月程度かかります。ただし、審査期間中に追加書類の提出が求められた場合や入国管理局が繁忙期に突入した場合には3ヶ月以上審査に時間がかかることもあります。
◆経営管理ビザの在留期間
経営管理ビザの在留期間は、5年、3年、1年、6ヶ月、4ヶ月また3ヶ月となっています。できれば3年や5年の長期の在留期間を取得したいところですが、この期間は、入国管理局が事業の規模、安定性、継続性などについて総合的に審査を行い決まることとなります。新規の会社で事業を開始する場合は、実務上、3年や5年での在留期間となることはほとんどなく、1年の経営管理ビザになることが多いようです。
◆経営管理ビザと技能ビザの違い
経営管理ビザと技能ビザの違いは以下のとおりとなります。技能ビザでは飲食店を経営することはできないので注意してください。
在留資格 | 日本国内において行うことができる活動 | 該当例 |
経営管理ビザ | 日本国内において事業の経営を行い、または当該事業の管理に従事する活動 | 企業等の経営者・管理者 |
就労ビザ | 日本国内の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動 | 外国料理の調理師 |
〇参考:出入国在留管理庁|在留資格一覧表
◆飲食店営業許可との関係は?
経営管理ビザを取得したら飲食店をすぐに営業できるのかといったらそうではありません。飲食店を営業する場合は、日本人同様に食品衛生法にもとづき、経営管理ビザ取得前に事前に必ず店舗の所在地を管轄する保健所に対して申請をし、保健所の施設検査を受けて、飲食店営業許可を取得しなければなりません。また、この飲食店営業許可を取得するためには、食品衛生責任者を立てる必要があります。食品衛生責任者は講習を受けることでなることができますが、日本語が理解できなければなりません。
飲食店営業許可および食品衛生責任者についての詳細は以下を確認してください。
〇関連記事: 飲食店の営業許可を取得する方法 申請の流れや必要書類・注意点も解説
〇関連記事: 食品衛生責任者の資格を取るには?費用や試験、申し込み方法について解説します
◆経営管理ビザについての注意点
◇経営者が飲食店の現場で働けるか?従業員の雇用の必要性
経営管理ビザを取得して、主な活動として飲食店を経営しながら、経営活動の一環で従たる活動として飲食店の現場に立って調理やホールなどの業務を行うことはできます。飲食店の経営をメインで行っていれば特に問題ないということです。ただし、ここで注意が必要なのは経営管理ビザを取得した経営者が調理人と同じような立場で仕事をすることはダメで当該行為は不法就労にあたってしまいます。よって、飲食店経営を目的として経営管理ビザを取得する場合は、その目的が調理をすることではないので実際に調理をする従業員を雇用することになります。
◇技能ビザから経営管理ビザへの変更
技能ビザを取得して飲食店の現場で長年にわたり調理業務をしてきた調理人が独立開業をして自らの飲食店を経営することになった場合には、技能ビザから経営管理ビザへ在留資格を変更しなければなりません。
◇経営管理ビザ申請のリスク
経営管理ビザを申請する前に資本金の額が500万円以上の会社を設立しておくことや開業する飲食店の物件の賃貸借契約を締結しておく必要があるなど先行して多くの費用の支出をしなければなりません。もし、経営管理ビザが不許可となってしまった場合、投資が無駄となってしまう可能性があります。また、入国管理局の審査が長引いてしまった場合は、事業開始までの賃料や生活コストがかさんでしまいます。こういったリスクを回避するためにも経営管理ビザ取得の可能性や手続きの詳細などについて、事前に専門家に相談するようにしてください。
◆個人事業主と経営管理ビザ
経営管理ビザを取得する場合、会社を設立するケースが多いのですが、会社の設立はお金や手間がかかるため、個人事業主として経営管理ビザを取得したいと考える方も多いかと思います。結論、個人事業主として経営管理ビザを取得することは、入管法で禁止しておらず、可能です。ただし、会社同様に事業規模が1つの要件となっており、その証明が難しいです。資本金の額が500万円以上または経営・管理に従事する者以外の日本国内に居住する常勤職員2名以上に準ずる規模であることをもって、事業規模を証明しなければなりません。
◆不法就労について
外国人が日本国内で経営管理ビザを取得せずに飲食店経営をした場合、不法就労に該当することになります。不法就労に問われ、国外へ強制退去になった場合は、一定期間日本に入国することができなくなる可能性があります。日本国内で飲食店を経営する場合は、必ず経営管理ビザを取得するようにしてください。
〇参考:不法就労とはどのような場合をいいますか。|東京労働局
〇参考:出入国管理及び難民認定法 – e-Gov法令検索
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