ニュース・特集

12月から増える建物火災 思わぬ出火元になる「表面フラッシュ」など注意点を紹介

画像

これから冬にかけて、火災が発生しやすくなる季節を迎える。
 
今月11日にも、築地場外市場のビルで未明に火災が発生し、通りに面した店の一部が燃えるという出来事があった。この火災では幸いにも人的被害はなかったものの、通報が遅かったり空気が乾燥していたり、という状況であればどのような被害が出ていたかはわからない。
 
また、鍋物を提供する店舗も増えていることだろう。冬の火災対策について、ここで改めて確認したい。
 

建物火災は12月から急増

令和元年版の消防白書によると、建物火災の月別の発生件数は下のように推移している(図1)。
 

図1 建物火災の月別発生件数
(出所: 「令和元年版消防白書」総務省消防庁)
 
建物火災は12月から急増し、その傾向は3月まで続いていることがわかる。空気の乾燥で小さな火元でも大きく広がりやすい季節となるこれからの時期には一層注意が必要だ。
 

飲食店が冬場に注意すべきこと

まず冬場に注意することのひとつとして、鍋物を提供する際に使用するカセットこんろ用のガスボンベだ。以下のような火災発生の事例がある。
 
・飲食店の厨房で、調理のためガスこんろを使用していたところ、こんろのそばにカセットボンベが置かれていたためにガスこんろの熱を受けてボンベが破裂し、ボンベ内のガスに引火して雑品を焼いた*1。
 
また、このような事例もある。
 
・神戸市内のラーメン店の厨房で、20代の男性従業員がカセットボンベに残ったガスを抜こうと、穴開け作業をしていたところ引火した*2。
 
カセットボンベは、正しい方法で処理しなければ、ガス抜きの最中に近くのものに引火するおそれがある。正しい処理方法は以下のようになっている(図2)。
 

図2 カセットボンベの処理方法
(出所: 「カセットボンベの処理方法」岩谷産業」)
 
慣れないアルバイトに作業を任せる場合はこの方法を徹底したい。そしてカセットコンロに関しては、使用期限についても注意する必要がある。
 
*1 「カセットコンロとカセットボンベ」大阪市
*2 「カセットボンベ、穴開けは危険です ルール変えた神戸市」朝日新聞デジタル
 

衣服を一気に燃やす「表面フラッシュ」

また、このような現象も注目されている。こんろに火をつけた瞬間に、着ている衣服に火が燃え移り、一気に広がる「表面フラッシュ」と呼ばれる着衣着火だ(図3)。
 

(出所: 「ガスこんろ『7.着衣着火』」製品評価技術基盤機構)
 
この「表面フラッシュ」による着衣着火は、寒い時期により注意が必要だ。寒い時期には静電気が起きやすく、衣類の表面が毛羽立ちやすくなる。そのため、いっそう衣服に着火し燃え広がりやすいやすいという傾向があるためだ。
 
調理中はマフラーなどは外し、裾や袖が広がっている服を着ている場合は炎に接しないように注意すること、あるいは防火のエプロンやアームカバーを着用することで防火につながる。
 
なお、表面フラッシュが起きた際には、まず慌てないことである。動き回るとさらに火が大きくなるため、まず立ち止まり、服を脱げる場合は脱ぐ。そしてシンクで水をかけるなどして消火を試みる。脱げない場合は、水や消火器の利用も有効だ。
 

気象庁の「火災気象通報」にも注目しよう

また、気象庁は、気象の状況が火災の予防上危険と認められるときには、都道府県知事に対して「火災起床通報」を発令している。湿度や風速などが通報基準を超えた時に発令されるもので、これが市区町村長が「火災警報」を発令する基礎になっているのでチェックしておきたい。
 
冬場の大規模火災としては、2016年12月に新潟県糸魚川市で発生した「糸魚川市大規模火災」がある。この日は新潟地方気象台が強風注意報を発表するなど、常日頃と比較して注意が必要な気象条件だった。そして強風により、火元及び延焼先から大量の火の粉や燃えさしが広く飛散し、風下側の木造建築物への飛び火によって、同時多発的に延焼が拡大した。
 
このように冬の火災は、気象条件によって大規模な被害をもたらす可能性がある。今一度現在の火災防止策をチェックし、アルバイトらにも徹底しておきたい。
 

 

「ニュース・特集」の関連記事

関連タグ

「開業ノウハウ」記事の一覧