テイクアウト、デリバリー、EC、ゴーストレストラン、FCと種まきが開花する
コロナ禍にあって飛躍した話 後編
ガネーシャ(本社/富山市)の代表、本田大輝氏は焼肉店経営のプロだ。自身で焼肉店の企業を経営しているほか、依頼を受けて焼肉店のプロデュースも行っている。その経験値から初めて焼肉店経営を志す人物と一緒に焼肉店を立ち上げる場合どのように進めていくのが得策だと考えているのだろうか。本田氏はこう語る。
「それはまず、オーナー様の意向を十分にヒアリングすること。私は焼肉店経営で『どのようにすれば勝てるか』というノウハウがあり、この二つの方向性の良い『クロスポイント』を探していく。このクロスポイントとは、オーナー様がこれまで想像したことがないような世界。だけど『あ、そこに行くんだ』と納得していただけるところ」
「牛宮城」のオーナーである宮迫博之氏と本田氏のクロスポイントは見事に合致したようだ。本田氏は「当社が東京で宮迫さんの『牛宮城』で仕事をしている意義はとても大きい」は語る。そのポイントとして以下のことを挙げてくれた。
「まず、飲食のナンバーワンである東京でテーブルサービスの経験をしているということ。『牛宮城』はある意味特殊な店でちょっとしたことで炎上しやすいことからリスク管理がとても重要。アルバイトのスマホを勤務に就く前に預かったり、情報管理に対するリテラシーが高くなった。商品開発を頻繁に行うことが重要なために常にアンテナを張っている。全国で食材を探しているときに『YouTube見てます』と言ってくれて話が通りやすい。全国の生産者の方々が応援しているという印象を受けている」
【「SHOGUN BURGER」では新商品投入が活発。これは今年夏季限定の「SHOGUN赤タブチ」2200円(税込)】
イートインに「焼肉弁当」が売上オン
コロナ禍にあって、ガネーシャの本拠地である富山での営業状況はどのうであったか。筆者は本田氏がこの間弁当のテイクアウトやデリバリーに一生懸命に取り組んでいる様子をSNSで発信している様子を注目していた。本田氏はこう語る。
「元々富山の『大将軍』では『焼肉弁当』という武器を持っていた。富山には医薬品メーカーが多く、伝統的にMR(製薬企業の営業担当者)がドクターを接待する環境があり、お弁当の“価値づくり”がとても重要になっていた。そこで焼肉店の営業ができなくなってから、朝6時から店で肉を焼いて焼肉弁当をたくさんつくった」
このころ富山では行政も町の人も“飲食店応援モード”になっていて、「弁当広場」があちらこちらで開催されて、ランチタイムに弁当販売が賑わっていた。
本田氏によると、弁当に熱心に取り組んだことでテイクアウトの技術が向上し、現状富山の「大将軍」では焼肉弁当がコロナ真っ最中の時と変わらないくらい売れている。これにイートインが戻ってきているので、売上はコロナ禍前に対して120%程度になっているという。
ECにも取り組んだ。このピーク時には150万円程度を売っていた。一番売れたのはコロナ真っ最中につくった「SHOGUN PIZZA」という冷凍ピザのブランド。ピザという商品は、テイクアウト、デリバリー、ECに向いている商品であることを再認識したという。
【ゴーストレストラン「SHOGUN FRIED」のイメージ広告】
ゴーストレストランの立ち位置で「SHOGUN FRIED」というフライドチキンやフライドポテトのブランドも立ち上げた。フライドポテトが5種類、フライドチキンが2種類。ソースが7種類。合計70通りのメニューを選ぶことができるという商品構成。
ハンバーガーのFC展開を進める
「SHOGUN FRIED」は「SHOGUN BURGER」の夜の売上を強くするという発想から生まれたもの。メニューにフライドチキンや、フライドポテトを単に加えるのではなく、ブランドとして入れようという発想であった。するとデリバリー業者より「SHOGUN BURGER」「SHOGUN FRIED」のどちらからも注文が取れるようになった。
「SHOGUN BURGER」は8月からFC募集を開始して、10月沖縄・宮古島にFC店が出店。いま10社様あたりからFC加盟希望があり、この業態はこれからFCに力を入れていくという。
【今年10月沖縄・宮古島にSHOGUNブランドを販売する「SHOGUN TRUCK」をオープン】
ちなみに「SHOGUN BURGER」に加盟した人は「SHOGUN FRIED」の加盟金はゼロ。デリバリー業者によるデリバリーを営むことも可能。チキンバーガーをつくってもいい。居酒屋が加盟すると、居酒屋のメニューに「SHOGUN FRIED」を出すことができてデリバリーも可能だ。
また、「SHOGUN BURGER」が世界最大のフードスポーツの祭典とされている「ワールド・フード・チャンピオンシップ」の国内公式予選「ジャパン・バーガー・チャンピオンシップ」に出場したところ優勝(7月29日~31日開催)。これによって「SHOGUN BURGER」既存店の売上が1.3倍伸びたという。
【「SHOGUN BURGER」が「ワールド・フード・チャンピオンシップ」の国内公式予選「ジャパン・バーガー・チャンピオンシップ」で優勝(7月29日~31日開催)】
「牛宮城」の話に戻ると、ガネーシャでは富山「大将軍」の実績と東京「牛宮城」の経験を踏まえて、これから焼肉店プロデュースを本格的に事業化していくという。コロナ禍は厳しい逆風であるが、同社では着実な種まきを実践していた。
【ガネーシャは今年創立35周年であることから10月に周年祭を開催している】
- 前編はこちらから千葉哲幸 連載第四十四弾(前編)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
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