飲食店開業者インタビュー VOL.36「ラーメン豚嵐」小原英明さん
周りの目は気にしない、自分のための独立
都営三田線「蓮根」駅から徒歩2分の場所に2021年12月19日に登場した「ラーメン豚嵐」はすでにラーメンマニアの間で話題沸騰のお店。オーナーは、電子機器の営業からラーメン店修行の道を歩んできた、小原英明さん。某有名店の修行を経ての独立です。「修行先とスタイルは似ているものの、オリジナリティを大切にしていきたい」という思いを抱く小原さんのインタビューにはパワーがみなぎっていました。
―オープンからわずか1カ月ですが(取材時)、すでに多くの方が来店してくださっていると伺いました。
(小原さん)そうなんです。有難いことに、想定よりも3倍のお客様に来店をいただいています。うちのラーメンに欠かせない豚肉が足りなくなって、お店を閉めるという日も出たほどなんです。オープンが12月19日なのですが、30日までの12日間で1400杯以上のラーメンを提供させていただきました。
―ほんとうにすごいです。このお店の開業に至るまでのお話をお聞かせください。
(小原さん)ラーメン業界に足を踏み入れる前は、電子機器の卸営業をしていたんです。32、33歳の頃ですね、まさに今思えば人生の転機なんですけど、その後の修行先になるラーメン店でラーメンを食べたときに、「あ、ここで働きたい」と思ってしまい、すぐに門をたたきました。さっそく池袋店でのアルバイトからスタート、すぐに正式登用され、新橋、歌舞伎町といくつもの街での経験を重ね、気が付けば9年たっていました。
自分も「いつかは独立」と口では言うものの、では「いつか」は「いつなのか?」という部分は曖昧で。そんな中、友人が第一波のコロナ禍の中、独立をしたんですね。そして、大成功を収めているのを目の当たりにしまして。あ、環境のせいではなく、自分で本気スイッチをいれることが独立への道なんだと実感したんです。
そこで、まずは物件探しを働きながら始めました。しかし、当然ながら拘束時間は長いですし、思うように内見活動をすることもできなかったので、半年たったころに、退職を決意しました。
―そうだったんですね。物件探しは、このエリアで探していたんでしょうか。
(小原さん)もともと板橋は地元なんです。板橋区エリア内で、ワンオペ営業できるラーメン店を出せたらいいなと思いリサーチしていました。レスタンダードの営業さんにとても親身になって探してもらったので、なんとかフィックスしたいなと思っていた矢先に、この物件の紹介を受けたんです。もともとあの「大勝軒」の居抜き物件という、自分が考えていたより、数倍よい物件でした。
製麺エリアまで確保されていましたし、TVも設置されているなど、設備は望み通りでした。細かいところでは、水のピッチャーや、コップまでそろっていました。築3年のビルということもあって、すべてが清潔で環境が良かったというのも決め手ですね。家賃は、想定よりも1.5倍ですが、何かを手放さないと何かを得ることはできませんから。
―素敵な物件とのご縁ですね。開業までの資金調達などはスムーズに進みましたか?
(小原さん)そこですね。ラーメン修行はしていたものの、経営の修行はしていなかったので、はじめはYOUTUBEなどで情報を得ようとしていたんです。でも、やはり一般的に話されているのでそれなりな範囲の情報しか得られることができなくて。結果、独立をしている友人から学びつつ、商工会議所に相談に行き具体的な事業計画書の作成アドバイスなどを受けました。足を運ぶまでは、素人には冷たいのでは?と疑心暗鬼だったのですが、皆さん、とても親切で優しく教えてくださりとても感謝しています。
―オープンに際しての販売促進は何かされたのでしょうか。
(小原さん)ラーメン業界のインフルエンサーの方へのDMなどは積極的に行いましたね。インスタ、ツイッターをはじめ、YOUTUBERの方へのアナウンスも。あとは、地元のいたばしTIMESなどにも情報発信を行いました。まず、存在を知ってもらわないことには始まらないと感じたんです。はじめは、躊躇する自分もいました。近くには、修行先の先輩のお店があったりもしますし、自分の名前を出してPRするということにも。でも、友人からの「誰のためにお店をだすの?」との一言で吹っ切れましたね。周りがどう思おうと関係ないなと。「ラーメン豚嵐」というブランドを世に出すことが、自分の仕事なんだから、恥ずかしいとか言っていられません。
実は昔バンド活動をしていた時期がありまして。その時に、「動員」がすべてだったんですね。自分たちよりも音楽演奏で劣っていても「動員」=「ファン」が多いことがその先に繋がるんだと学びました。飲食店も同じだと思うんです。
―その販売促進も、営業もすべてワンオペというのはなかなかハードですね。
(小原さん)はい、DMの効果もあり、ラッキーにもオープン前にSNSで話題にしてもらえたので、オープン直後に列をなしていただけるほどの状況を生み出ることができました。が、麺打ちをして、スープ作りをして、豚の仕込みをして、何より店内の掃除にも時間をかけたくてと、すべてやり遂げようとすると時間が足りなさ過ぎました(苦笑)それで、ワンオペ予定だったのですが、考えを変えてスタッフを迎え入れる方向にしました。
―先ほど“店内の掃除”というワードも出ましたが、とても明るい印象のお店ですね。
(小原さん)私としては「女性が一人でも気軽に入店できるラーメン店」を目指しています。女性向けに麺ハーフのメニューも準備したほど。そのためには、従来のラーメン店の持つイメージよりも清潔で明るいお店であり続けたいんです。そこで、掃除は徹底的にこだわっていますね。
―ダイナミックな「豚嵐ラーメン」は、こちらの名にふさわしい豚肉の量ですね(笑)。
(小原さん)そうですね。これでもかと「豚」をご堪能ください。無料にて野菜も、にんにく、背脂も調整していただけますので、自分好みを見つけていただければ幸いです。最近では「麺抜き」の方もいましたよ(笑)。でもスープにもこだわっているので、それはそれでうれしいですね。あと、近隣の方で70代くらいのお客様がスープを最後まで飲み干してくださったことは、本当にうれしかったです。
―最後に独立を果たされた今、感じることをお聞かせください。
(小原さん)やはり、独立というのは、想像以上に大変です。オペレーション導線も自分で決めなければいけません。厨房の流れも少し変わるだけで、タイムロスになることも。ゼロから決めるというのはこんなに体力がいるものなんだと感じました。
今は、ワンメニューでスタートしましたが、この先は体制を整えて、つけ麺や新しいメニューにも挑戦していきたいと思います。まだまだスタートラインなので、頑張るのみですが、甘くない世界で勝負をしていくんだということを心に刻んでいます。
<おすすめ料理>
豚嵐ラーメン(麺300g)800円
これから独立する方へ アドバイス 3箇条
- 其の1. 覚悟を持って本気で決断する「独立」であること
- 其の2. 過去の未払いなどはきちんと清算をしておくこと!(資金調達に影響あり)
- 其の3. 居抜き物件はどこかで理想と折り合いをつける必要がある
お店ができるまで
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店舗情報
店主経歴電子機器の卸営業を経て、アルバイトからラーメンの世界へ。 |
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