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「兄と弟」という優れた飲食業の異能が生み出すヒットコンセプトと急成長の秘訣

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第八十八弾

 
いま、大阪と福岡を拠点として。「餃子のかっちゃん」という居酒屋が勢いを増して店舗展開している。にぎにぎしく派手なデザインの店頭では「ハイボール99円」「生ビール299円」といったドリンクの低価格を訴求していて、若い世代をターゲットとしていることがよく分かる。経営は株式会社double(本社/大阪市北区、代表/松井勝也)。社名の由来は、同社の経営トップが、松井勝也氏(32歳)と、利也氏(30歳)の兄弟であることから。この二人の能力の組み合わせが、急成長の源泉となっているようだ。
 
同社が立ち上がったのは、コロナが始まった2020年7月のこと。「餃子のかっちゃん」は現在約70店舗、ほかの多業態路線は約50店舗となっている(2026年8月末)。この急成長の原動力とは、どのようなものだろうか。
 
「餃子のかっちゃん」事業の端緒となったお初天神通り商店街の店舗。お店の存在感が際立っている【「餃子のかっちゃん」事業の端緒となったお初天神通り商店街の店舗。お店の存在感が際立っている】
 

起業して、いきなりコロナに遭いながら急速展開

double代表の松井勝也氏は、1994年2月生まれ、大阪府出身。中学校卒業後の2013年に㈱秀インターワン(その後、㈱ダイナミクス。いまはない)に入社。2017年、別の居酒屋企業の統括副店長に就任。2020年7月に起業して、大阪・梅田に肉バルを出店。同月に弟の利也氏と共に㈱doubleを設立して、飲食業を展開していった。
 
doubleを立ち上げたとき、勝也氏は26歳、利也氏は24歳である。この若さで起業するとは無謀ではないかと思われるかもしれないが、二人には実力と人望が備わっていた。二人は前職でナンバーツーとナンバースリーの地位にあり、若いスタッフから信頼を厚く得ていた。そこで、二人が起業するというときに、前職のスタッフの約20人が参集したという。
 
同社が立ち上がったときにコロナになった。しかし、同社は「ゼロ」からスタートしたばかりで、失うものは何もない。周りには空いている物件がたくさん存在して、「いま、突っ込むことができる」(勝也氏)と判断。そこで、居抜きで次々と開業していった。
 
そのような中で勝也氏は、「自分たちが成長するために、何をすればいいのかと。本来の当たり前のことを着実にやり続けてきた。これがとても重要でした」と、スタートダッシュした当時を振り返る。
 
当時の勢いを象徴するのは、2021年9月、大阪・梅田のお初天神通り商店街にオープンした「餃子のかっちゃん」の1号店である。同商店街の角地にあり、1フロア18坪で4層(地上3階、地下1階)のビル1棟。壁面には低価格をはじめ、「喫煙可能」「個室あり」といった、ありとあらゆるニーズに応えるアピールを行っている。
 
東京・赤羽にある「肉汁とっつぁん」の店内。東京エリアでの展開は、弟の松井利也氏が手掛けている【東京・赤羽にある「肉汁とっつぁん」の店内。東京エリアでの展開は、弟の松井利也氏が手掛けている】
 
餃子の店をつくろうと考えた背景について、こう語る。
「『餃子』は国民食で、いろんな客層から好まれると考えたから。商品は主に。浜松の業者様につくっていただいています。冷凍で各店舗に供給することが出来ますから、これからフランチャイズによって展開エリアを広域に想定することが出来ます。原価率はいろいろなメニューがミックスして32%あたりです」
 

二つの軸足によって、同一エリアを多角的に開拓

doubleの店舗は、路面でも、空中階でもさまざまパターンで出店している。立ち上げた当初は、主に居抜き物件に出店してきた。空中階の店舗も多く、「必然的にグルメサイト、SNS、MEOにもしっかりと取り組んでいて、これらが得意だと自負をしています」(勝也氏)という。
 
同社の拠点は、大阪と福岡となっている。それはなぜか。
「それはまず、前職からのご縁があります。また、兄弟が同じところで一緒に事業に取り組んでいると、何かと不都合なことが生じるのでは、と考えました。そこで、兄の私が『大阪にいよう』と。では、大阪と同じようなマーケットを想定すると『福岡』となります。そして、弟がそれを見るということになりました」
 
「また、私は一つのブランド、『餃子のかっちゃん』に集中していますが、弟は業態をたくさん開発するのが得意です。そんなことで弟はJR博多駅前に10店舗ほど展開しています。僕は単一を推していき、弟は面で市場を押さえるタイプ」
 
そこでdoubleという会社について、周りの人の中に、「餃子のかっちゃん、すごいね」という人もれば、「いろんなブランドを持っているんですね」という人もいるという。「餃子のかっちゃん」の客単価は2400円であるが、弟の利也氏の店舗は3000円であったり、4000円を超える業態もある。
 
大阪・なんばにある「とり酒場」。串焼きに特化した専門店で、利也氏が展開している【大阪・なんばにある「とり酒場」。串焼きに特化した専門店で、利也氏が展開している】
 
つまり、doubleという会社は二つの能力、二つの軸足が一つになって事業を行っているということが言える。同社の出店スピードが速いのも、二つが一つになった「二倍速だから」と言っても過言ではないだろう。
 
「また、『餃子のかっちゃん』はチェーン店ですが、立地に合わせて「おすすめ」のメニューを変えてもいいと考えています。大阪の梅田を例に挙げると、東梅田やお初天神は若者が多いですが、大阪駅前第2ビルとなればサラリーマンが多い。ということで、ここでメニューを少し変えたり、またさまざまな業態を入れることで、一番大きなマーケットを取りに行きたい。いろいろなお客様に、いろいろな角度から店舗をつくって入りやすい状態をつくります」(勝也氏)
 
「とり酒場」の店頭に置かれたメニュー表。ヒットコンセプトが凝集されているイメージ【「とり酒場」の店頭に置かれたメニュー表。ヒットコンセプトが凝集されているイメージ】
 

グループ会社を数多くつくり、社員を経営者に登用

さて、今日の同社が急成長している原動力を支えている人材は、どのように募集・採用を行なっているのだろうか。松井代表は、こう語る。
 
「『餃子のかっちゃん』で言えば、ほとんどがリファラルやアルバイトからの社員登用です。このような仕組みになっているのも、出店が続いているから。一般的に『店長』というと20代後半あたりを想定しますが、わが社では入社して2年くらいで、20代前半で店長になることが出来ます。このようなことも魅力につながっています」
 
「店長のモチベーションを高める仕組みとしては、まず売上目標です。わが社で導入しているモバイルオーダーでは、お客様満足度から、会社が求めていることが数字化されていて、これらを歩合に充てています」
 
「そして、仕込み作業を効率化することによって、店長が一人で作業に没頭することがないように。こうして、店長が部下やチームと接する時間を多く取れるようにしています。アルバイトにも、このような店長をしっかりと応援するマインドを培うようにしています」
 
このように、現場で働く人々の人間力を高める仕組みが整っていることで、成長力が備わっていくのであろう。
 
「餃子のかっちゃん」のメニューの一例。食事性が豊かであることも同ブランドの特徴【「餃子のかっちゃん」のメニューの一例。食事性が豊かであることも同ブランドの特徴】
 
「さらにdoubleのほかに、私も弟もそれぞれグループ会社を率いています。このような形で会社をたくさんつくっている理由は、役職をたくさんつくって、ここに人材を充ていきたいから。店長が、ここの幹部になって経営を覚えてもらいたい」
 
「会社のこれからということを考えて、今後6年以内に『餃子のかっちゃん』を200店舗、『年商300億円』を目標にしています。これは、私がいま32歳、弟が30歳ということで、お互い30代のうちに、この眼に見える目標を達成しようと。そして40代を迎えて、次にどのようなことに取り組もうか考えようと。いまの状態で、膨大な目標を描いたところで夢物語に終わってしまいます。海外にも興味がありますが、まずはこの目標を達成していきます」
 
doubleが急成長を遂げている背景を見ていくと、飲食業の新しい成長法則が感じられる。
 
double代表の松井勝也氏。単一ブランドのチェーン展開を得意としている【double代表の松井勝也氏。単一ブランドのチェーン展開を得意としている】
 

 
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
 

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