開業レポ

飲食店開業者インタビュー VOL.32「ニンカフェ」 長谷川寧子さん/北京でオープンさせた喫茶店を東京・三鷹の地に

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今回ご紹介する、カフェオーナーの長谷川寧子さんは、バイタリティ溢れる異色の経歴の持ち主。三鷹駅から徒歩10分ほどの場所に「ニンカフェ」をオープンしたのは、2021年1月26日のこと。しかしながら、初の独立というよりは、中国・北京からの移転オープンというほうが自然かもしれません。サイフォンで入れる日本古来の喫茶店文化への思いを伺いました。
 
―「ニンカフェ」の誕生は、中国・北京だと伺いました。お店のオープン経緯について教えてください。
(長谷川さん)はい、実はもともと私は流通企業の社員として2011年に中国・北京に駐在したのが、中国とのご縁でした。当時は中国語も話せないまま、海を渡ったという感じです。いわゆる人事異動に伴う、赴任ですね。駐在にて業務を行う中で、徐々にコーヒーショップを開きたいなという夢が具体的な目標になってきました。目標ができると、結構動いてしまうタイプで、会社を退社して一時帰国し、2016年にコーヒースクールへ半年通い、カフェでの勤務なども経て再度中国へ渡りました。そしてオープンするのであれば、日本らしい喫茶店をとの夢があったので、サイフォンで淹れるコーヒーをメインにカウンター10席のお店を2018年にオープンしたのです。
 

 
―すごいですね、その行動力!中国でオープンするということに不安はなかったのでしょうか。
(長谷川さん)中国で知り合った夫(日本人)の応援もありましたし、中国で飲食店を経営している日本人の友人たちの支えもあったので、特に不安もありませんでしたね。オープンの時期はちょうど、北京の若者の間でコーヒーがはやり始めてきた頃でした。もちろん、スターバックスのようなカフェが主流でしたけど。しかし、有難いことに「寧珈琲(ニンカフェ)」は、駐在の日本人の方や、来日したときに喫茶店を訪れたという中国人の方にも好評でした。
 
―そんな北京でもカフェを2020年5月にクローズしての、日本出店。コロナ禍でしたが、その影響も?
(長谷川さん)コロナ真っただ中ですが、その影響というわけではなく、駐在員だった夫の任期が終了し帰国になるというタイミングだったということが理由です。
 
―なるほど、そういう理由で。それにしても帰国後1年以内にすぐにオープンというのもすごいですね。
(長谷川さん)2020年の6月に帰国して、自宅を決めた後は、9月ごろから自転車で近隣の物件探しを始めていました。一旦、腰をおろしてしまうと、落ち着いてしまうかなと思いまして。
 

 
―今回の物件との出会いはいつ頃ですか?
(長谷川さん)この物件に出会ったのは、10月頃ですね。もともと18年続いたうなぎ屋さんということでした。駅からは少し歩きますが、近くに郵便局や市役所もあり、大通り沿いでありながら、ゆったりとした空気が流れていることも気に入りました。実はちゃんと内見をしたのはこの物件だけなんです。
 
―すごい、運命の物件ですね。
(長谷川さん)喫茶店というと、軽飲食のイメージがありますが、大きめの焙煎機を店内に置く関係で、重飲食の物件を選ばなければいけなかったので、条件に合うという点ではとてもよかったです。駅までの通り道なので、オープン前も皆さんが「いつオープン?」「何ができるの?」と声をかけていただける環境だったというのもとても良かったと感じています。
 
―店舗イメージは、北京のカフェと同じスタイルですか?
(長谷川さん)はい、サイフォンで一杯ずつ入れさせていただくスタイルは変わりません。年配の方は、懐かしいと言って足を運んでくださいますし、若い方には新鮮に映るようですね。とにかく、まずは近隣のお客様に愛されることを目標にしています。お店の内装に関しては、北京の「ニンカフェ」の設計士さんにお願いしました。今回は、カウンター席からテーブル席になったので、空間としてはゆとりが生まれたと思います。予想よりも予算オーバーではありましたが(苦笑)。うなぎ屋さんの水槽が入っていた場所がちょうど小窓のようになって、テイクアウトのお渡し時に活躍したりしていますね。
 

 
―メニューに小倉トーストなど、名古屋の喫茶店文化の色が見えるのですが。
(長谷川さん)そうなんです。実は社会人一年目での赴任先が名古屋で。名古屋の喫茶店文化が私の中の原点になったと思います。ここで出しているメニューは、すべて北京でも出していたんですよ。
 
―中国・雲南省のコーヒー豆というものがあるんですね。珍しいです。
(長谷川さん)雲南省は中国産コーヒー豆の95%を生産しています。しかしながら、中国人は南米のコーヒー豆が好きなので、あまり国産豆に目を向ける方はいません。私は、中国との縁もありますし、日本人にとって雲南省のコーヒー豆というものが珍しいのでは?と思い、メニューにインしています。
 

 
―店名はご自身の名前から付けられたとか。
(長谷川さん) はい、寧子(Yasuko)の「寧」をとって「寧珈琲」、これを中国語の発音では「ニン カ フェイ」といいます。日本では、発音がしやすい「ニンカフェ」にいたしました。
うなぎ屋さんの名残の外観も相まって、忍者カフェ的なイメージを持たれているかたも
いたとか(笑)ですが、簡単に覚えてもらいやすいかなと思っています。
 
―今のタイミングで独立をしたことへの思いなどを最後にお伺いしたいです。
(長谷川さん)そうですね、コロナ禍ということではありましたが、私としては思った以上に地域の方に認知をされてうれしい限りです。苦境の中でも、タイミングというものを逃すことなく動いてよかったと思っています。海の向こうからも応援メッセージが来ます。
コロナが落ち着いたら、中国で出会った友人たちも来てくれるというポジティブなイメージを持ちながら日々おいしい珈琲をお客様にお届けできたら幸せです。
 

 

<おすすめ料理>

ニンカフェ オリジナルブレンド
*オリジナルブレンド1種、シングルオリジン6種、カフェインレス1種
喫茶店のクラシックプリン

これから独立する方へ アドバイス 3箇条

  • 其の1. 地域・商圏のリサーチをしっかりすることをおすすめ
  • 其の2. 居抜き物件でも造作によりかなりコストがかかります
  • 其の3. スタートするときの勢いはとても大切です

 

お店ができるまで

  • 2020年10月中旬内見
  • 2020年11月物件契約
  • 2020年12月1日内装工事開始
  • 2021年1月26日開業

 

店舗情報

  • 店名ニンカフェ
  • 業態自家焙煎喫茶店
  • 住所東京都武蔵野市中町3-3-1
  • 交通JR中央線「三鷹」駅から徒歩10分
  • TEL080-9827-5941
  • 営業時間 10時~18時 定休日:日曜日・月曜日
  • オープン日 2021年1月26日

ニンカフェ 外観

店主経歴

東京出身、大学時代のデンマーク留学にてカフェ文化に触れる。
社会人になり、コーヒーを飲み始め、奥深さにひかれていく。
北京駐在時に喫茶店オープンを決意し、一時帰国。
コーヒーアカデミーに通い、焙煎から学ぶ。
2018年北京に「寧珈琲」をオープン。2020年5月に帰国に伴いクローズ。
2021年1月、武蔵野市三鷹に「ニンカフェ」オープン。

 

取材・文 青山友美  食専門のPR企画&編集・ライターとして活動中

 

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