飲食店開業成功者インタビュー VOL.4「ふれんち御膳Mono-bis」オーナーシェフ 石井 剛さん
2010年に表参道にフレンチレストラン「Monolith(モノリス)」をオープンした、石井剛さん。まさに王道フレンチの世界を渡り歩き辿りついた独立店舗が11年を迎えたタイミングで、新しい業態への挑戦を決意したのです。情勢はまさに、コロナ禍。しかし、その状況が、石井さんの希望を叶えることになるとは、運命というのは不思議だと考えさせられます。2021年8月3日にオープンした「ふれんち御膳Mono-bis」は、カウンター席でカジュアルにお箸で楽しむふれんち御膳がコンセプト。しかも、朝食からディナーまで、時間制にするという、スピーディな運営スタイル。お店のオープンまでの経緯とコンセプトへの想いを伺いました。
―お店の情報をWEBで見たのですが、本店のイメージとはまったく異なるコンセプトですね。いつ頃から、このスタイルを構想されていたのでしょうか。
(石井さん)次にオープンするなら、「カウンター中心のこじんまりしたお店がいいな」というのは、ずっと前から漠然と考えていました。そんな中、今回のコロナで、いつもは空かないような物件が、どんどん出てき始めたんです。そうなると、「チャンスがきた!」という気持ちになりまして。より、具体的にイメージを固め始めたんです。感染対策もしっかりしつつ、店内滞在時間も長くならないように、そしてお一人でも食事を楽しめるスタイルにしようと。
―なるほど、ずっと構想していたものが、一気にまとまっていったんですね。
(石井さん)そうなんです。時代の変化も急速に進んでいると感じていたので、とにかく、今までにない新しい業態でのチャレンジをしたかったです。そして、なんといっても本店と近いということもあり、食材共有などもできることから、ターゲットをがらりと変えてのコンセプトにたどり着いたのです。
―驚くことに、朝食は8時30分からスタートなんですね。
(石井さん)はい、緊急事態宣言をなんども経験している中で、夜の会食が圧倒的に減ってきた現実を受け、朝時間へのシフトを図りました。朝食は8時30分からと、10時からの2部制です。メニューは、オムレツ御膳とハンバーガー御膳などをラインナップに取り入れて。「え?石井さんが、ハンバーガー?」なんて声も頂きましたが、むしろ大好きなんですよ。楽しみながら、メニュー開発に取り組みました。
―ランチ・ディナーの御膳メニューは、メニュー内容を拝見する限り、ワインが進みそうです。
(石井さん)ありがとうございます。ランチ・ディナーのメニューは同じで、ランチは2部制、ディナーは3部制としています。「山形豚厚切り低温生姜焼」にはバターを加えていたり、「ぶいやべーす御膳」では、ライスをスープに入れていただきリゾットで召し上がっていただくことをおすすめするなど、フレンチ要素はきっちりと抑えています。
―そもそものこちらの物件との出会いと、決めた理由をお伺いできますか。
(石井さん)実は、このビルが建ったときから、この場所を狙っていたんです。カウンターでお店をやるにはちょうど良い広さで、本店からも近いしと。でも、韓国のキンパのお店だったり、タピオカ店だったりとコロコロ変わりながらも、物件案内がでることもなく、すぐに次が埋まってしまうという状況で。ずーっと変遷を見守っておりました。そんな中、新しい展開をしようと今年の2月くらいから近所の物件を探し始めた矢先、この物件が「空き物件」になったんです。絶対、コロナでなかったら空くことは無かったんじゃないですかね。すぐにエントリーをして、条件面も問題がなかったので4月末~5月初旬に契約をしました。
―すごい!願っていると、思いはかなうものですね。
(石井さん)ほんとうにそうなんです。コロナをピンチと考えず、チャンスととらえて動き始めたことが運を引き寄せたかもしれません。その当時にはもうやりたいお店のイメージも仕上がってきていたので、一旦スケルトンにしました。床の防水や、グリストラップの作り直しなど、初期メンテナンスには力をいれましたね。ここは、とても重要なポイントだと思っています。少し、金額は掛かりますが、お店として大事なベースの部分はきちんと投資をすることが大切です。
―オープンキッチンで、カウンター6席に、テーブル席が1卓というコンパクトなお店は落ち着きますね。
(石井さん)そういっていただけると嬉しいですね。すでに、お一人様で何度もご来店をいただく方もいらっしゃいます。1時間半というタームが決まっている分、シンプルに食と向き合い、サクッとお帰りになるスタイルの方が多いですね。本店は、16席でゆったりとコースを2、3時間かけて楽しんでいただくお店ですので、まさに使い分けをしていただけていると思っています。
―ここ数カ月で来店されたお客様層についてお伺いできますか?
(石井さん)男女比率は半々ですね。年代は、本店よりも若く20-30代の方の来店が多くみられます。こういったカジュアルなラインでフレンチデビューをしていただけるととても嬉しいですね。どうしても、フレンチというと、敷居が高い感じを受けてしまいますので、ここからフレンチに親しんでいただけるとなによりです。
―とてもプライスを抑えられているように思いますが、これは本店があるからこそでしょうか。
(石井さん)まさに、そうなんです。本店と一緒に仕入れをすることで、価格交渉もできますし、ステーキ肉からでる端の部分をミンチにして上質なハンバーグを作ることもできます。原価調整ができているのは、業態の異なる2店舗の強みといってもいいと思います。
―この時代にあったお店のコンセプトですし、とてもバランスが良いように思います。
(石井さん)ただ、私は「人と同じことをしたくないな」と思って、コンセプトを考えたんです。フレンチレストランのシェフが次にカジュアル店をオープンというと、ビストロというスタイルに落ち着くことが多いんですね。でも、もはや東京にはビストロが溢れています。このタイミングでビストロをやっても、埋もれてしまうに違いない、しかも、今回のようなパンデミック後にすぐに元のような会食が戻ってくるかもわかりません。お酒に頼らないお店作りということも念頭においてコンセプトメイクをいたしました。
―さすがですね。今後独立を考えている方にメッセージをいただけますでしょうか。
(石井さん)今は、まさに時代の転換期です。もし、独立を考えているのであればチャンスだと思います。今まで出なかった物件もでてきていますし、融資もおりやすいでしょう。ただし、しっかりと出店エリアを調査して見極めて、ターゲットも明確にし、料理コンセプトを決めてください。
―ますます、これからが楽しみです。今後の目標をお伺いできますか?
(石井さん)現場を守ってくれているのは、私のスタッフたちです。このお店は、オープンキッチンでカウンターからすべてが見えるスタイル。とても緊張感もある反面、目の前で反応が見えるので嬉しいこともあるでしょう。チームとして成長できることがまずは目標ですね。
<おすすめ料理>
<朝食>「モノビス・バーガー御膳」
*スープ、ポテト、ヨーグルト、ドリンク1杯のセット
自家製バンズに炭火で焼き上がたスモーキーなパティと、ベーコン、チーズ、トマト、レタスなどと一緒に特製BBQソースが味を引き立てる。
<ランチ・ディナー>「鮭ミ・キュイ塩焼き、いぶりがっこラヴィゴットソース御膳」のメインメニュー
鮭(サーモン)は脂の多すぎないバランスの良いタスマニア・サーモンを使用。
これから独立する方へ アドバイス 3箇条
- 其の1. 出店場所はこだわること!
- 其の2. 初期投資はしっかりとおこなう
- 其の3. 妥協せず納得する店づくりを
お店ができるまで
|
店舗情報
店主経歴1973年6月2日東京生まれ |
- 開業レポ最新記事はこちらから
「開業レポ」の関連記事
関連タグ